テクノロジー業界でのレイオフは、仕事を自分の家族と考えることが深刻なマイナス面をもたらすことを示している。
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- テクノロジー業界でレイオフの波が広がるにつれ、「会社は家族ではない」という事実がよりはっきりと見えてきた。
- 働く人は仕事のために犠牲を払わなければと感じてしまうので、「会社は家族だ」という考え方は有害なものだと専門家は指摘している。
- ここでは新しいことを学ぶ時間を増やすことなど、その考え方を変えるヒントをいくつか紹介する。
ここ数週間にわたって、レイオフがテクノロジー業界を席巻したことで明らかになったことがある。それは「会社はあなたの家族ではない」ということだ。
グーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、マイクロソフト(Microsoft)などのテクノロジー企業などで数万人の人員が削減されている。レイオフされてしまったテックワーカーたちは、自分の役割があっけなく切り捨てられたことに驚き、傷ついたと語っている。同時に、家族のように感じていた働く仲間を失ったことを嘆くリーダーたちもいる。だが、「職場は家庭的な雰囲気であるべき」という考え方を押し付けることは、有害になる可能性があり、その考え方は、多くの労働者がレイオフ後に話している、裏切りという「腸をえぐられる」ような感覚を引き起こす可能性があると専門家はInsiderに話している。
「今回のレイオフは、冷酷だというだけでなく、人間性を奪ってしまう感じがしている」と、3年前に自分の会社を立ち上げるまでグーグルに17年間勤務したキャリアとリーダーシップのコーチ、シルヴィア・ボニラ・ジズンボ(Sylvia Bonilla Zizumbo)は話す。
「レイオフされる人にとっても打撃だが、仲間のレイオフは会社に残る人にとって、どのようなメッセージになっているのだろうか」
会社を家族と捉えてしまうとどうなるのか
同僚たちを家族として扱うことには、明らかな利点がある。それは永続的な関係を築く道を拓き、自分がコミュニティの一員であることを実感できるようになることだ。
しかし、多くの場合、ビジネスリーダーが家族の物語を推進し、彼らの行動が一致しない場合、働く人たちが「家族」のために犠牲を払うことを奨励する手段になるかもしれないと、ジャーナリストのチャーリー・ウォーツェル(Charlie Warzel)とアン・ヘレン・ピーターセン(Anne Helen Petersen)は、2021年の著書『Out of Office』で記している。
「あなたが選ばれたかどうかにかかわらず、あなたにはすでに家族がいる」と彼らは書いている。
「企業はそのような美辞麗句を並べ立て、社員との関係を感情的なものに作り変えている」
職場を家族として見ることは、「働く人の注意をそらし、自分たちの搾取に気付かせない手段として機能している」とも書いている。
「それは昇給や休暇の申請を思いとどまらせたり、同僚の行動に対する苦情を却下したり、経営の上で自分たちの不正をそらす巧妙な手段となっている。働く人の最善の努力を消してしまうものなのだ」
仕事に対する正しい向き合い方
では、代わりに仕事をどのように見ればいいのだろうか。先出のボニラ・ジズンボによると、取るべきステップは以下に挙げた4つだという。
1. 自分のアイデンティティと仕事を切り離す
「仕事でベストを尽くし、自分自身に挑戦し、素晴らしいチームプレーヤーであること」と「仕事を人生のすべて」と考えることは違う。有害な行動から抜け出すためには、どこから仕事でどこからが自分なのかを考えることが大切だと彼女は話している。
仕事は「自分らしさでも、アイデンティティでもない」と彼女は言う。
「このことを認識し、2つを切り離して考えることが本当に重要だ」
2. 自分のワークライフバランスを把握する
すべてを解決する策はない。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)のように、仕事と私生活を均等に配分しようと努力してもうまくいかない人もいる。彼はその代わり、「ワークライフインテグレーション(仕事とプライベートを統合する考え方)」を好んでいる。
多くの場合、ワークライフバランスとは、大切な人や喜びをもたらす趣味や興味を優先させることだが、それ以外にも休暇や医者の予約などを先延ばしにしないことも意味すると彼女は話している。
3. 自分に投資する
多くの人にとって今の仕事をし、さらに別の仕事をすることは考えにくい。しかし、ボニラ・ジズンボによると、学び成長し続けることは極めて大切なことだが、一方で途中で挫折することも多いという。
新しいスキルを身につけるための時間を確保することは、社員としての価値と市場価値を高めることにつながる。自分自身にいくつかの質問をすることをボニラ・ジズンボは勧めている。他にどんな分野に興味があるのか、何が気になっているのか、何を活用できるのか、自分の価値観に合うものは何なのかと。
中には副業を始めるという人もいるかもしれない。ボニラ・ジズンボは、キャリア・コーチング・ビジネスの立ち上げを決心するまでの20年間近くはIT業界で働いていた。そして、その始まりは、ご想像の通り、副業だった。
「すぐに収益化できるものである必要はない」と彼女は言う。社内のプロジェクトを手伝ったり、自分が関心のあるボランティア活動をしたりといった簡単なことでもいい。最終的には新しい興味を育み、自分自身のために何かを築き上げること。仕事の合間の時間を使って、将来的に自分を支えてくれる可能性のあるものを作り出すことが大切だ。
4. 仕事上の人間関係を大切にする
ボニラ・ジズンボは、「人脈作りも、仕事を生活の一部にしてしまうと、おろそかになってしまう可能性がある」と指摘している。
「我々は自己満足に陥っていて、今ある関係を育てたり、新しい関係を築いたりすることをあまりしてはいない」と彼女は言う。
「さらにこれらの関係は、個人的にも仕事の上でも、継続的なサポートのためにとても大切なもので、物事を見抜く力を与え、他の人々とつなげてくれ、さらに新しい機会の源となるものだ」
さらに、こうした関係は、解雇や転職の際に非常に重要になる。大規模な専門家のネットワークは、コミュニティの感覚を提供してくれて、なおかつ他の場所で新しいう役割を探すのにも役立つと彼女は話している。