2022年は散々な結果に終わったビットコインだが、年が明けてからその価格は急騰している。
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- 2017年、ジョン・グリフィン教授はビットコインの価格が1頭の「クジラ」に下支えされているようだということに気づいた。そして今、その時と似た兆候が見えるとフォーチュンに語っている。
- 2022年末、ビットコインの価格が1万6000ドル以下になった途端に、確実に元の価格帯に戻るという奇妙な動きをグリフィンは目撃した。
- 「2017年に見られたのと同じメカニズムが、未だリアルな経済価値を生まないビットコイン市場で起きている可能性がある」
2022年は散々な結果に終わったビットコインだが、新年早々40%以上も急騰している。しかし、テキサス大学マコームズ・スクール・オブ・ビジネスの財政学教授であるジョン・グリフィン(John Griffin)は、何か怪しげなことが起きているようだとフォーチュンに語っている。
彼は同じような不正を感じ取ったことがある。2017年にビットコインの価格を動かし、取引を歪めていたのは「1頭のクジラ」、すなわち大口の仮想通貨投資家だったのではないかと研究仲間のアミン・シャムス(Amin Shams)とともに気が付いたときのことだった。
2018年、このことに関して彼らは118ページに及ぶ論文を発表し、ビットコイン市場操作の証拠について詳細に説明した。この論文は査読制度のある『Journal of Finance』に2020年6月15日付けで掲載された。
そして今、グリフィンは再びその時との類似性を見出している。
「非常に疑わしい」と彼はフォーチュンに語っている。
「2017年に見られたのと同じメカニズムが、未だにリアルな経済価値を生まないビットコイン市場で行われている可能性がある」
ビットコインとは、安定性よりもボラティリティ(変動性)が高いものだが、トークンを操作する者は彼らの資産の下限価格を定めたいと思うだろうと、グリフィンは説明する。
「非常にネガティブなセンチメントの時期に、ビットコインの価格は底堅く推移し、疑わしく感じられた」
グリフィンは、仮想通貨市場の規模とデータ量が巨大化し、決定的な証拠をつかむのが困難であるだけでなく、価格を操作しようとする者はその正体を隠せるほど巧妙であると主張した。
しかし、2018年のグリフィンらの研究によって、ビットコインの価格が一定レベルまで下がると、大量購入が発生したことが明らかになったという。
「そのようなベンチマークに達すると、はるかに多くの購入が見られた。『クジラ』が定めた下限価格は底堅く推移した。クジラとは複数ではなく1つの組織だったが、クジラがベンチマークの価格を維持すると、その価格で安全であるかのような印象を与えた。そのため、投資ファンドや小口顧客にとってビットコインは購入しても安全なものであるかのように思われ、価格がさらに上昇した」
ビットコインの下限価格操作
ビットコインの最近の動きを見ると、価格が1万6000ドル以下になった途端に、確実に元の価格帯に戻るという奇妙な現象があったとグリフィンは言う。そのような動きは、サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)の暗号資産取引所、FTXが2022年11月に破綻したときにも表れていた。
フォーチュンによると、その月の5日間で、ビットコインの価格は25%急落し、1万5900ドルになったが、その後は2023年1月11日までの間、1日を除いて毎日1万6000ドルから1万8000ドルの間で取引された。
ビットコインの価格がこれほど安定していたことは滅多にない。FTXの破綻は、仮想通貨と金融の歴史における最大級の出来事だったにもかかわらず、世界最大のトークンであるビットコインの価格の振れ幅は過去最小だった。
ビットコインは依然として「価格操作に対して非常に脆弱」だとグリフィンはフォーチュンに語っている。
「今回はまだ確実な分析ができていないが、仮に談合があったとすれば、具体的なストーリーの中に真実が浮かび上がってくるだろう」