イーロン・マスク(左)と、著名VCのマーク・アンドリーセン。
Justin Sullivan and Saul Martinez via Getty
ツイッター(Twitter)のCEOに就任して以来、イーロン・マスクはさまざまな変更を推し進めている。しかしそれがあまりにも目まぐるしいため、著名なユーザーやマスクのファン、さらには投資家からも不満の声が上がっている。
アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)の創業者で自身も億万長者であるマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)は、マスクによるツイッター買収の際、4億ドル(約520億円、1ドル=130円換算)の株式取得をして支援した。
その彼が、ここ数週間のマスクによる数々の変更、特にモバイルフィードの変更に関してマスクに直接不満をぶつけたと、同社に詳しい2人の関係者は明かす。ツイッターは現在アンドリーセンのフィードをモニターしており、これは同氏のユーザー体験を改善するためでもあると関係者は述べている。
表立って不満を口にしているのはアンドリーセンだけではない。ソーシャルメディアサイトGasの共同創業者であるニキータ・ビア(Nikita Bier)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)の副社長マイク・ソラナ(Mike Solana)もそうだ。
複数の極右の保守系ユーザーは、マスクのツイッター買収は同社のリベラルとされる論調に必要な修正だとして歓迎している。しかし保守派の政治評論家であるベン・シャピロ(Ben Shapiro)、同じく政治評論家でYouTuberでもあるティム・プール(Tim Pool)、そしてLibs of TikTokのアカウントは最近、こぞってツイッターに苦言を呈している。
アンドリーセンらからの苦情を受けて、マスクはツイッターが抱える問題について公にツイートするようになった。例えば、非公開アカウントからのツイートが拡散される、アイコンが動き続ける、投稿できない、不具合が頻発する、などだ。マスクは先週、表示名を「Mr.Tweet」に変更した後、元に戻せなくなったことまで認めている。
2月2日には「何か根本的に間違っている」と、ツイッターに関する苦情への返信の中でマスクは書き、自身のツイッターアカウントを非公開にして「テスト」を行うことにした。
これは、ツイッターでのやりとりをフォロワーグループ内に留めておくための機能が効かないという苦情が多くのユーザーから寄せられたことを受けてのものだ。このせいで、まったくエンゲージメントが得られない、あるいは一般のフィードに表示されて過度に露出してしまうという問題が起きている。
「マスクは現在の状況は悪いと分かっているが、時間が経てば改善するでしょう」と、ツイッターに詳しい関係者は語る。この人物いわく、ツイッターでは多くの社員が週80時間以上働いて改修を進めているのだという。
ツイッターは「優雅に衰退する」
ツイッターで勃発している問題の多くは、幅広く行っているテストに起因すると先の関係者は言う。マスクは、さまざまな調整を加えることによってツイッターのエンゲージメントを高めようとしている。また、広告主と共有すべきコンテンツにユーザーをどう関わらせるかについてのテストを行っている。
ツイッターでは通常、このようなテストは少人数のランダムなユーザーグループに対して行われる。しかしマスクは、ツイッターの1日の利用者数約2億5000万人のうち約10%にも相当する規模のユーザーグループに対してテストを実施するよう要求している。
事情に詳しい関係者によれば、マスクは苦情ツイートや自分で見た不具合のスクリーンショットをエンジニアにメールで送り、修正が必要な不具合について伝えているという。そのため、社員は問題の把握と解決に奔走することになり、時にはこれがさらなる問題を引き起こしている。
不具合や壊れた機能を素早く修正できない理由はおそらく、マスクが大幅なコスト削減を継続的に実施している影響だろう。マスクによる買収以前は数千人いたツイッターのエンジニアは、600人以下に減少している。オフィスの閉鎖やレイオフが継続的に行われているため、総社員数は2000人を下回ることになりそうだ。
以前Insiderが取材した同社の元幹部は、次のように語っている。
「通常はこうしたことを覆すのはそう難しいことではありません。しかし今は、実態を把握するだけでも数日から数週間はかかるでしょう」
継続的に不具合が生じていることは、ツイッターが「優雅に衰退」し始めていることの兆候だ、とある元社員は言う。問題が生じたときに修正できる人材がほとんど残っていないため、元に戻る可能性は低いとこの人物は指摘する。
別の元社員は、ツイッターはMyspace(マイスペース)のような道を歩むかもしれないと言う。Myspaceには今も数百万人のアカウントがあるものの、もはや過去に流行ったSNSという位置づけだ。
その元社員は、「終焉と衰退は別物です」と締めくくった。