米国におけるペットフードの価格は、昨年14%高騰した。
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- 激しいインフレーションのさなか、ふわふわの毛で覆われたペットたちの世話は以前よりお金がかかるようになった。
- 家計が苦しい中でペットの世話をする最善の方法について、Insiderは5人の専門家に話を聞いた。
- 金銭的に余裕のない飼い主に対する専門家のアドバイスは、予防的ケアを優先し、事前に計画を立て、玩具やおやつを手作りしてみることだった。
米国経済は、景気後退の兆しが見えはじめている。インフレはいまだ高止まりし、ブルームバーグ・エコノミクス(B loomberg Economics)が最近発表したモデルによると、今後1年以内に不況に陥る可能性は100%だという。
こうした厳しい経済見通しに直面したいま、お金を守るための行動を取ることが非常に重要だ。ペットについてよく考えることも、そのひとつと言えるだろう。
インフレによって、毛むくじゃらのペットの世話にかかる費用は増加している。米労働省労働統計局によると、ペットフードの価格は、2021年9月から2022年9月までの1年間で14%上がった。獣医の治療費も跳ね上がり、AP通信によると、昨年だけで10%上昇した。
7月に発表されたveterinarians.orgの調査では、飼い主はすでに危機感を抱いているという。調査に回答した飼い主の50%はいつもより安価なペットフードを購入するようになり、35%はグルーミングサービスに通う頻度を仕方なく減らしているという。
さらに心配なことは、インフレを受けてペットの歯科治療やX線といった獣医の治療を見送ったり遅らせたりした、と回答した飼い主が46%にのぼったことだ。
そこでInsiderは、家計に悪影響を与えずにペットの世話をする最善の方法について、5人の専門家に話を聞いた。
1. 必需品に集中する
資金面で難しい選択を迫られた場合、飼い主はおやつや玩具のように必ず必要なわけではないものは切り詰めて、ペット保険や質の良いペットフードのような必需品にお金をかけ続けることを考えるべきだ。
ペットに十分な栄養を与えるのを惜しんでも、節約にはならない。
「健康的な体重を保つために必要な運動や栄養を与えることで、ペットが高血圧や関節炎のような慢性疾患を発症するリスクを下げられる。そういう疾患にかかると、獣医の費用が継続的にかさんでいくことになるのだ」とイギリスのバタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム(Battersea Dogs and Cats Home)の運営センター長を務めるロブ・ヤング氏は言う。
「お金がかかる、長期にわたる厄介な問題を防ぐためには、適切な薬剤を投与することも非常に重要だ」とイギリスを拠点とする動物保護団体RSPCAの代表者であるサマンサ・ゲインズ氏は言う。
ゲインズ氏はInsiderにこう語った。「最近、『犬にパラセタモールを飲ませていいか?』というGoogle検索が急増している。飼い主がペットに自分で投薬をして、獣医の費用を節約しようとしているのではないかと懸念している」
2. フードや医薬品を比較検討する
ペットフードは高額な出費になることが多いため、安い商品を探し求める価値はあるかもしれない。ただし、ノーブランドの商品の場合は、ペットに必要なすべての栄養素が含まれていることを確認し、不安な場合は獣医や動物保護団体に確認してほしい。
自分のペットがいつも好んで食べる商品と安価なブランドの商品を混ぜ合わせて、長持ちするようにしてもよい。
医薬品も高額な出費だが、インターネットで安価に購入できることが多い。オンライン上では、多くの動物用医薬品の販売サイトを選べるため、費用を比較し、レビューをチェックしてみよう。
3. 適切なペット保険に加入する
北米ペット健康保険協会(NAPHIA)によると、米国には推定1億6000万匹のペットがいる。そのうち、保険に加入しているのはわずか2.48%だ。
専門家によると、費用を切り詰めようと保険の加入を見送るのは慎重に考えるべきだという。ペットが病気になったとき、保険に加入していないとかえって高くつくという誤算が生じる可能性があるからだ。
保険は負担が大きく、不必要な費用のように思えるかもしれないが、予期せぬ事態に直面したとき、安心と経済的な保証を得ることができる。
NAPHIA事務局長のクリステン・リンチ氏は、Insiderに次のように語った。「経済的に苦しくて、価格が上昇しているときこそ、ペットの健康と幸福のために決断を下せるように、ペット保険という信頼と安心を得ることが重要なのだ」
だが、安易に契約してはいけない。VetHelpDirectによれば、インフレによって獣医の治療費が上がるにつれてペット保険の保険料も上がる可能性があるため、これまで以上にいろいろな保険商品を検討することが重要だ。
自分が加入する保険の内容をよく確認することも必要だ。保険料の安い商品の中には、一般的な医療行為が保険の適用範囲に含まれないものもあるため、そうした追加費用を見込んでおく必要がある。
4. 予防的ケアを優先する
ペットの基本的なメンテナンスはつい怠りがちではあるものの、歯のクリーニング、定期的な寄生虫の駆除、ノミの駆除といった簡単な対策は、お金のかかる健康上の問題を防ぐためには欠かせない。
獣医の診察料が高騰しているため、飼い主がペットを治療に連れていくのをためらいがちなのは当然ではあるが、それではペットの健康が損なわれ、かえって費用がかさむことになる。
リンチ氏はInsiderにこう話した。「飼い主がペットの治療を遅らせると、『収まるのを待っている』間に症状が悪化し、深刻化し、結局法外な費用がかかり、治療が難しくなってしまうことがある」
5. 玩具やおやつを手作りしてみる
ペットに派手なものは必要ない、と専門家はInsiderに語る。安価な手作りの玩具でも、ペットは喜んでくれるのだ。
お金をかけずに、ペットに何か新しい遊び道具を与えたいのなら、古いTシャツを利用して犬用の引き綱の玩具を作ったり、トイレットペーパーを使った手作りのゲームを試してみたりしよう。
また、家庭にある安価な材料でおやつを作ることもできる。ASPCA、ベスト・フレンズ(Best Friends)、バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホームなど多くの動物保護団体が、ウェブサイトで貴重なヒントや手作りガイドを提供している。
6. 助けを求める
ひとりでなんととかしようと頑張ってはいけない。
どうしようもない場合には、地域の慈善団体に連絡を取り、具体的な指導や金銭的な援助さえ受けることができる。米国ワイオミング州に拠点を置くキャスパー・ヒューメイン・ソサイエティ(Casper Humane Society)の理事を務めるクレイグ・カミングス氏は、Insiderにこう語る。「不況の影響は誰でも受けるものだ。動物保護施設やさまざまな団体が手を差し伸べてくれるだろう」
ヒューメイン・ソサイエティには、ペットの世話をする経済的余裕のない人々を支援する全米の団体のデータベースがある。このデータベースには、割引料金で利用できる動物病院やペットフードバンク、緊急時の動物保護施設なども含まれている。
ペットを手放すという「胸が張り裂けるような」決断をせざるをえない場合には必ず支援を求めるべきだ、とASPCAで保護サービスを担当するバイス・プレジデントのクリスタ・チャドウィック氏は次のように話した。「ペットを世話することができない、あるいはもう世話をしたくない飼い主にとっては、新しい飼い主を見つけてペットを手放すのが最善の結果を生むと私たちは考えている」
「ペットを手放す決断をされた飼い主の方には、ご家族やご友人、獣医などの支援を求めることをお勧めしている。Petfinder.comにペットを掲載したり、ゲット・ユア・ペット(Get Your Pet)に足を運ぶのも良いだろう。ペットを飼うことに関心を持つ近隣の人々とつながり、新しい飼い主になってくれる人たちに会って、あなたのペットに良い家庭を見つけてあげることができるかもしれない」
いざというときには、動物保護施設が介入して、ペットの安全を保護し、世話を引き受ける場合もある。
ヤング氏はInsiderに次のように語った。「動物の世話ができなくなったときに、ペットを保護施設に連れてくるという難しいけれど責任ある決断を下した人たちを、私たちは決して批判しないだろう」