Mike Blake/Reuters; Savanna Durr/Alyssa Powell/Insider
アマゾン(Amazon)は、現役学生または新卒者のみをソフトウェア開発者のエントリーレベルのポジションに採用している。Insiderが入手したアマゾンの社内メールで明らかになった。
この社内メールによると、アマゾンは2023年1月25日から、ソフトウェア開発エンジニアの最下層職であるSDE-1の新規採用を、新卒者と並行して、「キャンパス」採用という学士、修士、博士課程に在籍する学生に限定している。ただしこのメモによると、パートタイムやエグゼクティブ・プログラムで何年もの実務経験を積んだ者も応募可能だという。
この採用方針の変更により、大学を出てから1年以上経つ者や、上級のSDE-2職の候補者の中でSDE-1の方が適していると見られる人でも、SDE-1職での採用を検討されることはなくなった。
アマゾンがこの変更を行うのは、学生プログラムを通じて多くの候補者が確保できるからだという。しかし、メールやアマゾンの広報担当者からは、同社がなぜ、新入社員のポジションでは業界経験者よりもキャンパス採用のほうがよいと考えるのかは不明だ。
メールによると、変更は「グローバルかつアマゾン全体に及ぶ」とあり、全社的に適用されるようだ。今回の決定は、20数名の最高幹部と人事のトップリーダーからなるアマゾンのSチームによって行われた。例外については副社長以上の承認がある場合にのみ認められるという。
また、経験豊富なエンジニアは給与が高くなりがちなので、アマゾンはより若くて給与水準がそこまで高くないエンジニアを採用しようとしている可能性もある。
「当面は、学生プログラムを通じて即戦力となる人材を優先的に採用する」とメールには書かれていた。
近年、学生プログラムは同社にとって重要な候補者発掘の場となっている。しかし一部のエンジニアは、アマゾンが最近、採用のハードルを下げたと言う。Insiderが以前報じたように、同社は2022年、一部新入社員を採用する際、「バーレイザー(Bar Raiser)」と呼ばれるアマゾン独自の面接プロセス(ポジションを募集している部署ではない部署の社員が、候補者を客観的に判断するため第三者的に採用プロセスに関与する仕組み))を取りやめた。
アマゾンの広報担当者であるオーガスト・アルデボット・グリーン(August Aldebot Green)はInsiderに対し、「我々が雇用のハードルを下げたというような話は間違っています」と述べる。「我々は100万人を優に超える従業員を抱えており、従業員たちの意見を大切にしていますが、一部の社員が何かを真実だと言ったからといって、それが本当のことだとは限りません」
2023年1月にアマゾンは、同社史上最大の1万8000人の人員削減を発表した。また、事業全体が大幅に減速するなか、コスト削減のため、過去1年間に数多くのプロジェクトやチームを閉鎖した。今回の変更は、アマゾン社内でそのような大規模リストラが行われているときに行われたのだ。
また、アマゾンのエンジニアリング文化の見直しは、CEOであるアンディ・ジャシー(Andy Jassy)にとっての優先事項だ。2021年の社内スタッフ会議でジャシーは、同社における開発者の不満を認識しており、エンジニアリング文化を「現在よりも格段に良くする必要がある」と従業員に伝えたと、Insiderは以前報じている。またそうした懸念に対応するため、アマゾン社内では「Amazon Software Builder Experience」というエンジニアの待遇改善に特化した新しいチームが立ち上げられた。
それでも一部の社員は、アマゾンがかつての力強さを失いつつあると感じている。「Day1」と呼ばれるスタートアップ特有の機敏な文化が失われ、「Day2」と呼ばれる、スピードの遅い官僚的な文化が社内に浸透しつつあるという。