MUJI HOUSEとURがリノベーションを手がけた3部屋が公開された。
撮影:横山耕太郎
UR都市機構(以下、UR)と良品計画の子会社・MUJI HOUSEが手掛ける賃貸リノベーション物件「MUJI×UR」が、神奈川県で初となる物件をお披露目した。
無印がリノベした賃貸物件「MUJI×UR」事業は2012年にスタート。これまでリノベーションを手がけた物件は1000室を超え、事業開始から10年が経過したものの、入居者募集が始まると希望者殺到する人気が続いている。
開放感ある大型団地
港南台かもめ団地は、都心から1時間半程度かかる。
撮影:横山耕太郎
URとMUJI HOUSEが今回リノベーションを手がけたのは、横浜市港南区港南台の「港南台かもめ団地」の3部屋。
URによると、かもめ団地は1976年から管理する、築約50年、1497戸の大規模な団地。新宿駅から約1時間15分のJR港南台駅から、徒歩約10分にある団地で、14階建や8階建の住宅棟が立ち並ぶ。
住宅棟ごとの間隔が広く、団地内には公園などの施設もある。開放感のある団地という印象を受ける。
玄関も押し入れも現代仕様に
広さ46.2平方メートルの1LDKのモデルルーム(家賃:月額9万3200円)では、玄関に入ると、真っ白な壁と、玄関のすぐ左手に位置する洗面台が目を引いた。コロナ禍で帰宅後にすぐに手を洗いたいというニーズが高まったこともあり、あえてこの位置に洗面所を配置したという。
築約50年だがエレベーターが備えられている。
撮影:横山耕太郎
玄関のすぐ左手に洗面所がある。
撮影:横山耕太郎
もともとあった押し入れのスペースの壁を取り払い、ワークスペースやウォークインクローゼットに使える「ユーティリティスペース」に改修している点もこの部屋の大きな特徴だ。
もともと押し入れがあった部分は大きくリノベーションされた。
撮影:横山耕太郎
ユーティリティスペースは、ふすまを開けることで玄関ホール、ダイニング、寝室の3方向とつながっており、「リモートワークなど自由に使える空間を作った」(MUJI HOUSE担当者)という。
ダイニングルームのふすまを開けると、ユーティリティスペースに通じている。
撮影:横山耕太郎
手前が寝室で、右部分がユーテリティスペース。ウォークインクローゼットして使え、シャツが吊るされている。
撮影:横山耕太郎
キッチンは「2列対面式」
キッチンも「団地のイメージ」とはかけ離れたデザインだ。
もともとは壁に向かって位置していたキッチンは対面式に変更。3口コンロはダイニングに面しており、一方で水回りは壁側に配置する「2列対面式キッチン」を採用している。
MUJI HOUSEの担当者は「会話をしながら調理をしてもらうことを意識した」という。
人気の対面式のキッチン。
撮影:横山耕太郎
ガスコンロと水回りを分けた設計になっている。
撮影:横山耕太郎
共同開発の「麻の畳」
リビングの床には、MUJI HOUSEとURの共同開発で生まれた「麻畳(あさだたみ)」が敷かれていた。
麻の感触を生かした商品で、他にも室内には両者による共同商品がいくつか採用されている。
ふすまには、段ボールの風合いを生かした「ダンボールふすま」が使われ、光を通す素材のふすまも一部に使われている。「無印の家具に合う色で、部屋に統一感がでる」(MUJI HOUSE担当者)という。
リビングの床には、麻の畳が敷かれている。
撮影:横山耕太郎
段ボールの素材を生かしたというふすま。
撮影:横山耕太郎
あえてのヴィンテージ感
キッチンなどはモダンな印象だが、逆にふすま枠などは、使い込まれた木材をそのまま使用している。
「コンセプトは壊しすぎず、作りすぎず。当時の素材を生かしつつ、コストをかけすぎない設計にしている」(MUJI HOUSE担当者)
木材の一部は、年月を感じる色合いになっている。
撮影:横山耕太郎
収納スペースはかなり少なめ
もともとあった押し入れをワークスペースなどにリノベーションしたことによって、必然的に収納スペースは減ってしまう。
そこでリビングの壁の上部には、木製の棚を設置している。
部屋の上部には木製の簡素な棚が設置されている。
撮影:横山耕太郎
収納が欲しい人には
もともとの間取りを生かしつつ、「無印らしくリノベーション」した2DKの2部屋も公開された。入居者の応募は4月から受け付ける。
この2部屋は、「Plan+S(storage=収納)」という収納スペースを確保したシリーズとしてリノベーションされた。
改修コストが低いため、月の家賃もやや安く、今回公開された2部屋はそれぞれ8万6800円と、8万4200円だった。
なお、URが従来通りにリノベーションして同時に入居を募集する部屋は7万9600円で、さらに値段は安くなる。
特徴はキッチンの下の空間
「Plan+S」シリーズの最大の特徴はキッチン。
内見した部屋では、ガスコンロと水回りを備えたキッチンの下の空間がすっぽりと空いていた。
「このスペースにゴミ箱を置いたり、収納に使ったりしてもいいですし、あえて開けたままにしてもいい。使う人が自由に使える余白を残しています」(MUJI HOUSE担当者)
窓のすぐ隣にキッチンがある。5号棟の1305室。
撮影:横山耕太郎
壁に着脱式の収納
内見した「Plan+S」の2部屋は、あえて押し入れをそのままの形で残しているほか、壁にも一工夫がある。
賃貸では壁に穴をあけるなど、傷つける行為が制限されることが多いため、壁面に取り外し可能な収納を設置できる構造になっている。
写真右手の壁には、壁面に収納を追加できる。
撮影:横山耕太郎
MUJI×URのWebサイトには、壁面収納の使用例の写真がある。
MUJI HOUSEのWebサイトを編集部キャプチャ
集会場までリノベーション
これまで10年にわたり賃貸リノベ事業を展開してきた「MUJI×UR」だが、新事業として打ち出しているのが、賃貸物件だけでなく団地内の集会場や商店街を含めたリノベーション事業だ。
その名も「MUJI×UR 団地丸ごとリノベーション」。
2022年5月には「団地丸ごとリノベーション」事業の初事例として、千葉市の「花見川団地」の団地内の商店街をリノベーションする取り組みを発表。
この事業の第2弾として、今回の「港南台かもめ団地」の集会場のリノベーションが発表された。
MUJI HOUSEとURが実施した説明会には、住民らが多く参加していた。
撮影:横山耕太郎
集会場の外観。現状は木が茂っている。
撮影:横山耕太郎
リノベーション後の集会場のイメージ画像。
出典:MUJI×URのプレスリリース
MUJI HOUSEとURは、半年ほど前から、団地住民を対象にした集会を実施している。
新たな集会場に求められる機能を話し合ってきたほか、無印良品の商品などを販売するマルシェなどを開催してきた。
「これまではハード面に注目してきましたが、この事業ではソフト面に注目しています。事業としては集会場をリノベーションするだけでなく、集会場の完成後も数年間は住民らと伴奏し、コミュニティ形成を支援していきます」(MUJU HOUSE・見通真次氏)