マイクロソフトのサティア・ナデラCEO。
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マイクロソフト(Microsoft)が急激な変化を遂げつつある。
マイクロソフトはOpenAIおよび同社が開発するChatGPTと組むことで、検索の分野を支配してきたグーグル(Google)に挑む絶好のチャンスを手にする——マイクロソフト向けに最近作成された機密報告書にはそう書かれている。
この報告書をまとめたのは、ネット上の感情分析を行うスプリンクラー(Sprinklr)だ。Insiderはこの報告書のコピーを入手した。
スプリンクラーは2022年11月下旬から2023年1月上旬にかけて調査を実施。報道機関やツイッター(Twitter)、ユーチューブ(YouTube)、インスタグラム(Instagram)、レディット(Reddit)などのオンラインサービスからデータを取り込み、マイクロソフト、Bing(マイクロソフトの検索エンジン)、ChatGPT、グーグルに関するコメントを幅広く調査した。
その結果、ChatGPTとBingの組み合わせに対しては広く肯定的に受け止められていることが分かった。報告書には「市場は変化を歓迎して」おり、多くの人が「ChatGPTとBingの組み合わせはGoogle検索に対する『脅威』または『挑戦』」と見なしている、とも書かれている。2月7日(現地時間)には、このタッグに関連する発表が初めてなされる。
報告書には他にこんな記述もある。
「BingはChatGPTの力を借りて検索結果を改善することで、グーグルが独占する分野に挑戦することができる」
「ユーザーはこれで『公平な競争の場』になると考えている」
2月初め、マイクロソフトはOpenAIに対する新たな大型投資を発表した。またテック系メディア「インフォーメーション(The Information)」が以前報じたところでは、マイクロソフトはOfficeアプリケーションなど他の製品の一部にもOpenAIの技術を組み込む計画だという。
今回の調査結果からは、なぜマイクロソフトが、昨年11月の公開以来世界を席巻しているChatGPTを開発したOpenAIとの提携を強めているのか、その理由の一端もうかがえる。
「Bingにとって勝負の年」
スプリンクラーの調査によれば、人々はマイクロソフトがOpenAIへ投資したことに対しては特に「興奮」しており、「先進的な考え方」だとの声もあるという。また、多くの人がOffice製品にChatGPTの機能が追加されることを「待ち望んで」おり、この早い段階で提携したことに驚きを示しているという。
さらに、ChatGPTとOfficeアプリケーションの統合により「効率性と生産性が向上する」との「熱狂的」な声や、「グーグルの『検索の支配』に挑むBingに乗り換える」との声もあるという。
「マイクロソフトがAIと機械学習から成るサービスの開発に注力するなか、ChatGPTを組み込むことで同社は競争力を高めることができる」
「ネット上では、Bingにとっては勝負の年であり、『信じられないような検索機能が追加される』ことに歓喜する人もいた」(スプリンクラーの報告書より)
ChatGPTのユーザー体験が「奇妙」または「怖い」と言う意見も
ただし、すべてが肯定的な回答だったわけではない。特に、ChatGPTのファクトチェックの欠如やプライバシーに関する不確実性、教育環境での使用に関しては大きな懸念もあった。
また、ChatGPTのユーザーエクスペリエンスが「奇妙」「怖い」という意見や、AI企業に投資することの収益性に懐疑的な意見もある。
それでも、ChatGPTの「まるで人間を相手にしているかのような」反応は大きな魅力であり、現状の検索エンジンが返してくる「リンク一覧」からは改善している、と報告書には書かれている。
また、マイクロソフトならば「結果の正確性を期する検証を強化」することができること、「専門家と学生のどちらであれ、タスクをこなすうえで(ChatGPTが)どう使われるか」を考慮する必要があるとも指摘する。
しかしなんといっても、報告書の次の一節ほど、ChatGPTと組んだマイクロソフトの興奮を端的に表したものはない。それは、「BingにChatGPTを組み込むことでマイクロソフトがグーグルに勝つ方法を、笑える五行詩(リメリック)にして」と、ChatGPTに尋ねた内容だ。いわく——
「かつて Bingという 検索エンジンがあった
その検索エンジンは うまくいっておらず 苦戦していた
しかし ChatGPTを味方につけたことで
ついにその誇りを手に入れ
次の一手を求めてグーグルのもとを去った」