まずは1年分の収支をしっかり見積もることから始めよう。
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- 1年分の支出を把握すれば、最低限必要な売り上げ額を設定することができる。
- 個人用と事業用に分けてお金を管理すると、確定申告の時に楽になる。
- 退職後の資金のための貯金は、率先して確保すること。
フリーランスで働くということは解放的なものだ。スケジュールは自分次第だし、自分に合った仕事だけ引き受ければいい。しかし、それと同時に収入の流れも完全に自分次第であり、予測の付きにくい側面もある。予定より長くかかるプロジェクトが多く、期日内に請求書を発行しても入金されるまで数週間から数カ月かかることもある。
そういったことを考えると、老後のための貯金やそのほかの経済的目標のためにお金を有効に管理するのは大変なことのように感じるだろう。結局のところ、予算組みの第一歩は、毎月いくら入ってくるかを把握することだ。会社員だと安定して給料が支払われるため、退職後の資金や医療保険に回す金額を設定しやすく、それに合わせて自分の予算を組むことも簡単だ。
フリーランサーにとって、予算を組むことは難しいかもしれないが、長期的な経済目標を達成するためには極めて重要なプロセスだ。
「フリーランサーには個人用と仕事用の2つお金の流れがあるので、資産管理には特に注意を払わなければいけない」と、パーソナルファイナンスの専門家で、女性のクライアントを中心に金融アドバイスをしているフロム・シープ・トゥ・シャーク(From Sheep to Shark)の創設者ブリー・ソダーノ氏は指摘する。
「ちゃんと管理しないと、そのどちらからもお金が漏出してしまう恐れがある」
本記事では、毎月の予算の設定方法から緊急時の資金策まで、2人の金融専門家に聞いたフリーランサー向けの予算編成と資金管理に関する最も重要な5つのポイントを紹介しよう。
1. 年間の収入と支出を把握する
「収入が不安定な場合は、定期的に届くもの、つまり請求書に注目すべきだ」と、パーソナルファイナンスのエキスパートで、金融専門のポッドキャスト「リビング・ブージー・アンド・バランスド(Living Boujee & Balanced)」の司会をしているラクエル・カーティス氏は呼びかける。
請求書をすべて精査して、月々の、あるいは四半期の、もしくは年間の支出をできる限り予測してみるといい。貯金のために確保したい金額を考慮することも忘れてはいけない。そうすることで、年1回の自動車保険の支払いのような大きな出費が発生しても、慌てることなく対処できるだろう。自分の医療保険や税金の支払いを始めたい時のように、ビジネスの支出を考慮することを忘れずに。ただし、事業経費と個人の支出とを比較できるように、それぞれの出費は別に記録すること。
そこから、事業と生活を回していくために必要な最低限の収入額を把握することができるようになる。それが分かれば、仕事が少ない時期でも必要経費を支払う猶予があることが分かる。これは、支出額を基準に必要な売り上げ額を逆算するという、予算編成の従来型のアプローチを刷新した考え方だ。
「収入から経費、貯金、支出を引いて残った額が自由に使える金額だと、大半の人がこの方法で予算を決めているが、フリーランサーにはこの方式は当てはまらない。支出額と貯金額を最初に決めてから、月々の出費を賄うのに必要な額を充分稼げる仕事を見つける。そうすることで目標収入が設定でき、賄うべき支出額という目安に応じて自分が提供するサービスの価格を設定することができる」と、カーティス氏は説明する。
2. 仕事のお金と個人のお金を分ける
個人事業主になったら、事業主らしくお金の面もきちんと管理できるようになる必要がある。スモールビジネスだからといって、ただ目的もなくお金を回しているだけではいけない。お金の出入りを実際に追跡できるように、事業用に特化した銀行口座を別途開設しよう。
「事業用の銀行口座があると、控除可能な事業経費を把握しやすくなるし、複雑な計算を避けることもできる」とソダーノ氏は勧める。さらに、確定申告の準備も少し楽になるという利点もある。
口座の種類に関しては、高利回りの普通預金口座にすれば、少なくとも多少の利息を得ることができる。事業で稼いだ金額が私用の口座で埋もれないよう明確に把握するには、すべての事業収入を事業用の口座に入れ、自分を従業員のように考えてその口座から自分自身にお金を支払う形がお勧めだ。
3. 確定申告への備えを万全に
納税の準備を怠ると、個人事業主にとって確定申告は悪夢だ。事業税の仕組みは、税金が毎回給与から天引きされる会社員とは違うということを忘れてはいけない。
つまり、確定申告の時になって慌てることがないように、自分でその作業をやっておかなければいけないということだ。カーティス氏は前述の事業用口座の1つに収入の15〜30%をとっておくことで、恐ろしい納税の季節に備えることができると言う。また、どんな項目が税額控除の対象になるかも理解しておこう。
4. 緊急時のためのバッファーを持たせる
人生には予期せぬ医療費など、予測不能でお金のかかるハプニングがつきものだ。そのためソダーノ氏は、何が起きても通常経費は賄えるように、生活防衛資金を準備しておくことを勧める。
フリーランサーの場合、1〜2カ月分の収入をバッファーとして取っておくことを彼女は推奨している。いくら残しておく必要があるかは、1カ月の必要経費を目安に決めると良い。こうすることで、最少の経費を賄えないくらい極端に仕事が少ない月があっても対応できる。
なにはともあれ、自分に見合った仕事を選ぶべきだ。ソダーノ氏とカーティス氏がフリーランスのクライアントに接していて感じる最大の問題は、彼らが自分自身を過小評価していることだという。
「価格を上げよう。時給や作業内容ではなく、自分が顧客に提供するサービスの価値に値する金額を要求するべきだ」と、ソダーノ氏は呼びかけている。
それに加えて、管理が不十分なためにプロジェクトが長引いてしまうようなことがないよう、事前に労働期間の見込みや、実働時間の制限などを明確にしておこう。フリーランサーにとって、文字通り「時は金なり」なのだから。
5. 退職後の資金を貯めることも忘れずに
会社員からフリーランサーになることの最大の変化は、企業型確定拠出年金など、退職給付金制度を失うという点だ。長期間にわたってフリーランサーでいるためには、長期的な富を構築することが重要なので、退職後のプランを立てるために積極的な措置を講じる必要がある。
ソダーノ氏は、ファイナンシャルアドバイザーに相談して、それぞれに合った退職金口座を選ぶことを推奨している。
彼らは、貯蓄可能な金額に基づいて最適な口座を薦め、それぞれに合った節税対策や、必要であれば融資の選択肢も紹介してくれる。さらに、目的とリスク許容度に基づき、投資を薦めてくれる場合もある。
従業員を抱えていなければ、個人事業主向けの個人型確定拠出年金の加入を検討してみるのも良いだろう。また、貯金を自動口座振り替えの設定にすることができれば、毎回お金を移す手間も省ける。
「退職金口座があれば、長期的な富を構築し、老後のための資金を確保することが可能になる」とカーティス氏は言う。
まとめ
フリーランサーであることの自由と不確実性は、刺激的でもあり恐怖でもあり、それは経済面にも反映される。自分の将来はまさに自分次第なので、定期的に給与が支払われる会社員の時よりも予算の確保がより重要になってくる。
「フリーランスは、普通に会社員として働くよりフレキシブルで、より多くのお金を稼ぐことができる素晴らしい働き方だ」と、ソダーノ氏は語る。「賢くお金を管理するシステムさえ構築できれば、個人事業主は実に解放的なものである」