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- 履歴書やカバーレターを数秒で書き上げてくれるChatGPTは、求職者の間で人気が高まっている。
- ある採用担当者は、これは求職者がこれまで行ってきたことが、よりやりやすくなったというだけのことだと言う。
- しかし、技術的なスクリーニングの代わりや、面接の準備のために利用することは避けるべきだと注意を促している。
AIチャットボットのChatGPTは11月に公開されたばかりだが、多くの労働者はまだ、これが仕事に役立つツールなのか、あるいは仕事に死をもたらすものなのか、判断できずにいる。
ChatGPTは、テスラ(Tesla)イーロン・マスク(Elon Musk)CEOが共同創業者となったAI研究所、Open AIが開発した。多くの人がその使い方をソーシャルメディア上で披露しており、求職者の中にはカバーレター(履歴書に添付する送付状で、志望動機などを伝える役割を果たす)を書くのに使ったという人もいる。これは本来、書くのに時間がかかり、骨の折れる作業だ。
この使い方のせいで、優秀な人材を獲得するプロセスが混乱するのではないかと心配する雇用主や採用担当者がいるかもしれない。
しかし、必ずしもそうではないと製造業の人材紹介会社システマティック・ビジネス・コンサルティング(Systematic Business Consulting)のゼネラルマネージャー、パトリック・ローリン(Patrick Laughlin)は言う。
彼によると、ソーシャルメディア上での憶測とは裏腹に、ChatGPTを使って履歴書やカバーレターを書くことはそれほど問題ではないという。長年にわたって3000社以上の企業に協力し、さまざまな採用プロセスに立ち会ってきたローリンは、むしろChatGPTが応募者の時間を大幅に節約してくれているのだと指摘している。
「表面的なレベルでChatGPTができることに関して言えば、作業のプロセスをいくつか省略できるというのは有益だ」とローリンはInsiderに語っている。
「悪意のある使い方ができるかということで言えば、職種によってはそれができることもあるだろう」
しかし多くの分野において、時間の大幅な節約になると彼は考えている。
「特に製造業では、AIに履歴書を書くのを手伝ってもらったとしても、最終的には自分の資質や基本的な経歴を書き込む必要がある。それは、リファレンスチェック(身元照会)などを通して確認される。ちょうど編集者に見てもらうのと同じことだと思う」
彼は、多くの応募者が履歴書やカバーレターの編集サービスにお金を払っていること、それが実際に面接につながっていることを指摘している。
「結局、(チャットボットを)悪用して嘘をつくことは、履歴書に嘘を書くのと大差ないと思う。それを(採用担当者は)心配しているのだろう。だが、自分の経歴を強化したり、表現方法を変えるために使うのであれば、特に問題はないと思う。それによって、採用側も、より良い人材を獲得する可能性が高まるからだ」
だが、チャットボットで面接の準備をすることについては、レディット(Reddit)でも話題になっているように、やめた方がいいと注意を促している。
「非常に機械的で、まるで履歴書を読み上げているように聞こえてしまうからだ。第一印象はとても重要であり、人間味のある話し方ができるようにする必要がある」
ローリンは、高度に専門化された人材を対象にした採用担当者であることから、コーディングなどの技術的なスクリーニングを回避するためにChatGPTを使うことにも反対している。
「『適切な処理のためのスキルが求められているのに、この人はAIソフトウェアに頼り過ぎている』と思われるかもしれないからだ」
ChatGPTはいつも正しい答えを出すわけではなく、間違った情報を提供することもある。基本的な数学の問題でもそのようなことが起きるのだ。
ChatGPTが改善され、アメリカ政府がChatGPTの利用に関して規制を審議する可能性が出てくれば、ローリンの考え方も変わるかもしれないという。だが今のところは、求職者が仕事の機会を得るためのすばらしい方法だと考えている。
「このような機能を利用するためのクリエイティブな方法を考え出す人がいるのはすばらしいことだ」