ニューヨークの地下鉄に乗るマスクをした人。2022年10月22日。
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- 通勤は面倒なことと思いがちだが、パンデミックは通勤が精神衛生上良いこともあると示した。
- 燃え尽き症候群を防ぐためには、仕事の後、メンタルをシフトチェンジする時間も必要だと2人の専門家は述べている。
- オフィスワーカーは通勤時間を伸ばすことが、リモートワーカーには擬似的な通勤時間を設けることが役立つ可能性があると2人は付け加えている。
最近の研究によると、苦痛であったはずの通勤が実は精神衛生上良いものだった可能性があるという。
ウェイン州立大学(Wayne State University)とラトガース大学(Rutgers University)の研究者は、通勤が脳のスイッチを切り、再充電する、いわゆるリミナルスペース(人を別の場所に移動させる目的の空間)になっていることを発見した。
The Conversationの記事で研究者たちは、燃え尽き症候群を防ぐためにこういったリミナルスペースがいかに重要かについてパンデミックが光を当てたと論じている。
「リミナルスペースの喪失は、多くの人が通勤がなくなって寂しく思っている理由を説明できると我々は考えている」と彼らは書いている。
通勤はシフトチェンジする時間
ニューヨークで地下鉄に乗るカップル。2017年1月1日。
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人は、仕事から家庭へと精神的にシフトチェンジする時間が必要だ。これには心理的な離脱と心理的な回復の2つの側面があると研究者は述べている。
2007年の研究で定義されているように、心理的な離脱は、仕事の電話やメールから離れるだけではなく、仕事に関連した話題などについても考えるのをやめることを指している。心理的な回復は、その日に使ったエネルギーを精神的にも回復させるものだ。
2014年の研究によると、これらの2つのプロセスがないと、人々は燃え尽き症候群になるリスクが高くなるという。
長時間の通勤もリラックスして過ごせる
つまり、通勤は仕事を切り離し、そこから回復するための時間を提供するものだ。未発表の研究では、研究者たちが80人の大学職員に精神的にスイッチを切ることができる状況について尋ねている。
「通勤時間が平均よりも長い日は、仕事からの心理的な離脱のレベルが高く、通勤中はよりリラックスしていると報告された」とThe Conversationで研究者は述べている。
例えば、通勤時間が長くなれば、音楽やポッドキャストを聴くことで「気持ちを切り替えて回復する時間が増えるかもしれない」と彼らは述べている。
だがそれは、通勤自体にストレスがない場合だけ機能する。「通勤がいつもよりストレスの多い日には、仕事からの心理的離脱が少なくなり、通勤中のリラックス度も低くなったと報告された」と研究者はThe Conversationで述べている。
疑似的な通勤を考えてみる
ニューヨーク、アップタウンの地下鉄で本を読む男性。2022年1月13日。
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研究者たちは、通勤を楽しむことが仕事の悪影響から身を守り、燃え尽き症候群を予防する方法になると考えている。
「通勤中に仕事から離脱し、リラックス効果を高めるためには、仕事のことを反芻することを避け、代わりに音楽やポッドキャストを聴いたり、友人に電話するなど、通勤時間を個人的に充実したものに集中するといい」と彼らは述べている。
それによると、毎日通勤のルートを変えたり、渋滞を切り抜けたり、満員電車に飛び乗ったりして、できるだけ早く家に帰ろうとするのは、逆効果になる可能性があるという。
「そのため、例えば、緊張した運転状況を避けるために、『景色の良いルート』で帰宅することに価値を見出す人もいるかもしれない」と、彼らはThe Conversationに書いている。
また、通勤時間が少ない、あるいはないリモートワーカーは、自分自身に疑似的な通勤時間を作り出すことでスイッチをオフにする方法を学ぶことができる。
「我々の研究では、精神的な回復と移行に必要なリミナルスペースを提供するため、リモートワーカーが独自の通勤形態を作ることが有益な可能性があるとを示している。例えば、仕事の始まりと終わりに15分間散歩をするなどだ」と研究者はThe Conversationで述べている。