モール内を歩く買い物客。
Kena Betancur/Getty Images
- ベイン・アンド・カンパニーのリポートによれば、2022年の高級品市場の成長は、すべてY世代とZ世代によるものだったという。
- 2030年までに、若い世代が高級品の最大の消費者層になると見込まれている。
- Z世代とアルファ世代の消費額は、2030年までに他の世代の3倍のペースで成長すると予想されている。
Y世代(ミレニアル世代)、Z世代、アルファ世代の消費者は、こと高級品に関しては散財をおそれない。そして、この世代が高級品に費やす額は、今後も増加の一途をたどると予想されている。
ベイン・アンド・カンパニーが2023年1月に公開したリポートによれば、高級品市場の消費者基盤は、2030年までに5億人に達するという。ベインの調査は、イタリア高級品メーカーの業界団体で、280を超える高級品メーカーが加盟している「アルタガンマ財団」が提供した情報とデータにもとづいている。
同リポートによれば、世界全体で見ると、高級品の最大購入層になるのは、最も若い層の消費者だという。2030年までに、Y世代、Z世代、アルファ世代が高級品の最大購入者となり、全世界における消費額の80%以上を占めるようになると見られている。
Y世代とは、1980年から1994年頃生まれのミレニアル世代とも呼ばれる世代であり、Z世代は1995年から2009年頃生まれの人々だ。アルファ世代は、2010年以降に生まれた人々を指している。
こうした層は、最大の消費グループというだけではない。Z世代とアルファ世代の消費額は、2030年までに、他の世代の3倍のペースで成長し、高級品市場の3分の1を占めるとも予想されている。そうした成長は、この世代の「高級品に対する早熟な姿勢」を反映している、とベインのリポートは述べている。
こうした傾向の変化は、すでに目につくようになっている。Insiderは12月公開の記事で、アメリカに住む18歳から29歳の若年成人の多くは親との同居を選択しており(大恐慌時代以降では例のない水準)、そのおかげで高級品購入にあてる可処分所得ができている可能性があると指摘している。
別のInsiderの記事では、若年層の支出傾向を検証し、親と同居しながら車やブランドもののハンドバッグ、ナイトクラブに散財する20人あまりから話を聞いている。
こうした傾向は、高級品転売市場の活況につながる可能性もある。転売市場では、Y世代、Z世代、アルファ世代が、高級品を貴重な投資財産として扱っている。
例えば、ナスダックのまとめたデータによれば、シャネルのミディアム・クラシック・フラップ・バッグの販売額は、2011年には平均3900ドルだった。10年後、その価値は急騰し、平均7800ドルに達した。2011年に購入したバッグが、2021年には200%の投資利益を生む可能性があったということだ。
比較としてS&P500指数を見てみると、2011年に投資した1ドルは、2021年におよそ149%の純利益をもたらした可能性がある。つまり、一部の高級品は、単なる自分のためのファッション投資というだけでなく、利益を生む投資になる可能性を秘めているということだ。
2022年の個人向け高級品の売上成長は、アパレルがけん引
ベインのリポートによると、2022年における個人向け高級品のパフォーマンスは好調で、この分野の成長をけん引したのはアパレルだという。
Y世代、Z世代、アルファ世代において、高級アパレルの消費額が増加しているのは「ポスト・ストリートウェア」の台頭によるものだ。ポスト・ストリートウェアの要素には、ジェンダーフルイド(ジェンダー流動性)、インクルーシブネス、TPOへの無関心などが挙げられる。
ベインのリポートによれば、若い世代の消費者は、流行に注意を向けるよりも、ファッションのテクニックや、アパレルの素材や機能のほうに関心があるという。
ベインは、高級シューズの記録的成長に目をとめている。この分野におけるY世代、Z世代、アルファ世代の散財の対象は、ナイキのスニーカー「エアジョーダン1」ではなく、正式には「フスベット・サンダル(fussbett sandals)」と呼ばれる、ビルケンシュトックのような見た目のシューズだ。こうしたサンダルは一般に、ソールは軽量素材でできた厚底、ストラップやバックルで足を固定するデザインになっている。
さらにベインによれば、高級品市場は、従来のビジネスモデルから脱却し、Web3.0やメタバースなどのバーチャルショッピング体験に移行すると見込まれている。これにより、高級品にいっそうアクセスしやすくなり、Y世代、Z世代、アルファ世代の消費者への販売が活気づくと見られている。