40冊以上の小説を自費出版してきたマーク・ドーソン氏。本を売り込むのにどれだけの費用を費やしているかを明かしてくれた。
Courtesy of Mark Dawson
アマゾン(Amazon)のアマゾンの自費出版プログラム「Kindle ダイレクト・パブリッシング」やKoboなどのセルフパブリッシング・プラットフォームを利用すれば、作家は自分の読者に向けて直接本を販売することができる。
とはいえ、有名出版社のようなマーケティング予算がなければ、大衆の目を引きつけるのは難しいだろう。
マーク・ドーソン(Mark Dawson)氏は自身のサイト、セルフパブリッシング・フォーミュラ(Self Publishing Formula)で作家志望者を対象とした講座を運営している作家で、これまでに40以上の小説を執筆しており、1年で130万ドル(約1億7000万円、1ドル=130円換算)を稼いだこともある。
ドーソン氏は、本を書き上げたときは感動に打ち震えているが、それ以降は本をただの商品として考えるようにし、自分が心血を注いだものだとは見なさないようにしているという。
ドーソン氏が、作家が読者に向けて本を出版し、生計を立てるためのヒントを教えてくれた。
1. 表紙の制作はプロのデザイナーに依頼。予算がなければ既成の表紙画像を購入
読者は、書店の棚でもKindleストアでも、表紙で本を判断するものだとドーソン氏は言う。
「優秀な作家が書き、出版社から出版されている本と競争していることを忘れてはいけません」
彼は、プロのデザイナーに依頼して、表紙が競争力を持つようにすることを勧める。
ドーソンは、1冊につき約500ポンド(約8万円、1ポンド=160円換算)を使って表紙の作成を依頼する。デザイナーは通常、作家が選べるように3つの案を制作し、採用されなかった2つはそれぞれ約150ポンド(約2万4000円)で販売するという。これは、予算が限られた著者には良い選択肢だと彼は述べている。
2. 宣伝文の執筆はコピーライターに依頼。お金をかけたくなければChatGPTを利用しよう
多くの著者は、本の宣伝用の短い紹介文を書くのに苦労している。1万語の小説を書くのと、150語の宣伝文句を書くのとではスキルが異なるとドーソン氏は言う。
ドーソン氏は、地元のコピーライターに宣伝文を依頼しているという。「それほど高くはないし、投資する価値はある」という。
そこまでの予算がない場合は、作家仲間が意見やアイデアを出してくれるフォーラムに、自分で書いたコピーを投稿してみることをドーソンは提案する。どこから手をつけていいか分からなければ、OpenAIのチャットボット「ChatGPT」を使ってみるといいとドーソン氏は言う。
「ChatGPTに、例えば、故郷に帰って高校時代のボーイフレンドと恋に落ち、幸せに暮らしている女性の物語の宣伝文を書くように指示すればいいのです。そのような指示だけで、かなり良い宣伝文句ができあがるでしょう」
3. 編集と校正を依頼すること。読者は「いい加減な」文章を許してくれない
読者が電子書籍の最初のページを開いたときには、作家はすでに読者を納得させるための審判の場に立たされているとドーソン氏は言う。誤字や脱字があれば、読者はすぐに興味を失うだろう。
「伝統的に出版される本と同じように、プロフェッショナルな編集が必要です。あなただって、ずさんな成果物を生み出してしまう可能性はゼロではないのです」
また彼は、作家と編集者、デザイナー、校正者をつなぐプラットフォームである「Reedsy」を利用することも勧めている。
ドーソンが9万語の小説の編集を編集者に依頼したときには約1000ポンド(約16万円)の費用がかかり、校正者の場合はそれより若干安い費用ですんだという。
編集費をもっと安く済ませたいなら、作家仲間と編集や校正などの作業を分担するという手もあると彼は言う。
4. メーリングリストを作るために無料特典を配布する
自分の小説に関連した文章を書いたときは、読者のメールアドレスと引き換えに、それを無料で配布するといいとドーソン氏は言う。
「読者のメールアドレスがあれば、将来、読者が喜びそうな新作を書いたときに、読者にアプローチする最良の手段になります」
ドーソン氏は、最初にメーリングリストを作ったときから10年経った今でも、そのリストは新刊を宣伝するうえで最強の財産だという。過去には、12万人の読者にメールで新刊情報を伝えたところ、発売日までに1万〜1万5000冊の予約が得えられたという。
5. 広告費に投資する前に利益率について考えよう。何冊か書いてからでも遅くない
表紙、宣伝文、ストーリーができあがったら、次は広告を出す段階だと思うかもしれない。しかし、それが投資に見合うかはよく考えたたほうがいいとドーソン氏は警告する。
例えば、処女作をKindleダイレクト・パブリッシングで3.99ポンド(約640円)で売った場合、Kindleが30%の手数料を取った後の利益は1冊約2.80ポンド(約450円)だ。これでは広告に投資することはできないと彼は指摘する。
だが作品がシリーズ物で、何冊かある場合なら話は別だ。ドーソン氏の『ジョン・ミルトン(John Milton)』シリーズは21冊あり、最初の1冊を読んだ人は続編を買ってくれることが多いので、読者は平均して約10ドル(約1300円)を彼の作品に支払ってくれていると彼は推測している。
シリーズものを何冊か書けば、1冊目の本のためにアマゾンやフェイスブック(Facebook)で広告を出したとしても「まとまった利益」が手に入ると彼は付け加えた。
6. デジタルメディアで広告を出す場合は、ターゲット読者を見極める
「ロンドンのウォータールー駅には5000ポンドで広告板を設置することが可能です。しかし、それがどのような効果をもたらすかはまったく分かりません。すべてただの推測に過ぎないのです」
しかし、フェイスブックやアマゾンの広告には、性別、年齢、住所などの属性に基づいて広告が表示される人をフィルタリングする機能がある。
「ニッチな需要に届くように、フィルタを使用して対象を絞り込みましょう。最低でも、あなたが書いているような内容の本を読んでいる必要があります」
一回で成功させるのは難しい。広告への投資対効果が得られない場合は、適切な読者を見つけるまでターゲットを調整するとよいとドーソン氏は語る。
ドーソン氏の故郷であるイギリスのソールズベリーを舞台にした次回作では、その町から25マイル(約40km)以内に住む人をターゲットにして1日10ポンド(約1600円)分の広告を出しており、「とてもうまくいっている」と言う。