ChatGPTについて語るnote社CXOの深津貴之さん(右)とプロデューサーの徳力基彦さん(左)。
撮影:竹下郁子
対話型AI「ChatGPT」が市場を動かしている。アメリカではマイクロソフト、グーグルら大手IT企業がChatGPT関連の話題で株価を乱高下させているが、日本でも同様の動きが出てきた。
コンテンツプラットフォーム「note」を運営するnote社が、ChatGPTの技術を活用した記事作成サポートAIを発表したところ、株価が急上昇しているのだ。
サービス発表翌日から株価急騰
note社の株価の推移。8日のサービス発表後から急に上がっている。
出典:Googleファイナンス
2022年12月に東証グロース市場に上場し、年明けから400円台で推移していたnote社の株価(終値)は、2月8日は543円、9日は643円、10日は630円と大幅に上がり、一時693円の高値もつけた。8日と9日はストップ高だった。
背景として考えられるのは2月8日、ユーザーの書きたい記事のテーマに沿った構成案を提案してくれる新機能「note AIアシスタント(β)」を同社が発表したことだ。
この新機能には「ChatGPT」にも搭載されている、ChatGPTを開発したアメリカ・OpenAI社の技術「GPT-3」を採用している。
サービスはまだ一般開放されておらず、先行ユーザーを募る段階だが、期待の高さがうかがえる結果といえる。
ChatGPTに湧くアメリカ市場
ChatGPTを活用した検索エンジンについてプレゼンする、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO。
REUTERS
ChatGPTといえば、その技術を応用して検索エンジン「Bing」に磨きをかけるマイクロソフトや、ChatGPTに対抗すべく独自の対話型AI「Bard」を発表したグーグル。そしてChatGPTに使われているAIを活用して記事作成をすると報じられたバズフィードなどが、同サービスに関連して株価を上下させていることは既報のとおりだ。
参考記事:
米バズフィード、ChatGPTの技術で記事作成へ…株価は大きく上昇
市場が注目するAI関連企業…ChatGPT公開後に急騰した5つの銘柄
AI競争で株価が乱高下…ChatGPTをめぐるグーグルとマイクロソフトの争い
その後もBardが不正確な回答を生成したことでグーグルの親会社アルファベットの株価が急落し、代わりにマイクロソフトが上昇するなど、ChatGPT関連の動向に市場が振り回される事態が続いている。
日本語とChatGPTの現実は
shutterstock / CHUAN CHUAN
今回のnote社の株価の推移は、これから日本市場でもChatGPTの存在感が増す予兆かもしれない。
2月9日にnote社が開催したChatGPT活用法を紹介するイベントに登壇した同社CXOの深津貴之氏は、連日の株価について、
「僕のCXOとしての仕事は最高のChatGPTエディターを作ることなので、株価は基本的には興味の外です。むしろ『それ(株価)にとらわれないでいいものを作ってください』という仕事なので」
とコメント。イベント内で深津氏が指摘したのは、日本語より英語でChatGPTに質問(入力)したほうが回答の精度が格段に上がることだ。
「誰もがAIを使って対話するようになった時の大きな社会問題として、英語話者は頭がいい相棒ができるのに対し、日本語話者はそうでない相棒がつくことになる。AIで人の生産性にレバレッジを利かせられるようになればなるほど、その差が開いてしまいます」(深津さん)
ただこれは現在の状態が続いた場合で、「性能の高い翻訳AIができれば格差もなくなるかもしれない」(深津さん)とも言う。
言葉どおりに解釈すれば、翻訳にもビジネスチャンスがある、ということになる。日本に対話型、生成系AIがもたらす影響から目が離せない。