F-22「ラプター」
US Air Force photo by Lt. Sam Eckholm
- アメリカ最強の制空戦闘機F-22が、ついに空対空の戦果を上げた。
- 2月前半の1週間の間に、F-22は中国の「スパイ気球」と未確認の「物体」を2回の実戦で撃墜した。
- いずれもF-22の攻撃対象として想定されていた戦闘機ではなかった。
アメリカ最強の戦闘機、F-22「ラプター」は運用が始まって20年近くが経つが、今回初めて空対空攻撃に利用された。しかも、1週間のうちに2回の戦果を上げた。
アメリカ当局は、第5世代ステルス戦闘機であるF-22が2023年2月10日、アラスカ上空の高度1万2000メートルを飛行して民間航空機の安全を脅かしていた未確認の「高高度物体」を撃墜したと発表した。アメリカ国防総省は、この物体を「小型車」と同程度の大きさだ説明している。
F-22は、2月4日にもサウスカロライナ州沖の1万8000メートル上空を飛行していた中国の「スパイ気球」を撃墜している。アメリカ軍最高司令官の発表によると、これは高さ60メートルで、ジェット旅客機並みの積載能力があったという。
いずれもF-22が搭載した空対空ミサイル「AIM-9X サイドワインダー」1発を受けて撃墜された。中国のスパイ気球との実戦は、F-22にとって初めての空対空攻撃であり、高高度を飛行する気球に対してAIM-9Xが使用されたのも初めてのことだった。さらに、F-22は10日にも高高度物体を撃墜していることから、1週間以内で2つの戦果を上げたことになる。
1980年代に「先進戦術戦闘機計画(ATF)」が始まり、その過程でロッキード・マーチン(Lockheed Martin)によってF-22「ラプター」が製造され、2005年に運用が開始された。その後、190機近くの運用機が製造されたのちに、生産終了となった。アメリカ空軍によると、F-22はソ連のSu-27「フランカー」やMiG-29「フルクラム」、また中国のJ-11「瀋陽」の脅威に対する解決策として製造されたという。
2011年3月2日、ネバダ試験訓練場で空中給油の準備をするアメリカ空軍のF-22。
US Air Force/Senior Airman Brett Clashman
ロシアと中国が独自の第5世代戦闘機の開発に挑戦するという状況に直面しながらも、F-22は高度な空戦能力を発揮するアメリカ最強の制空戦闘機として登場した。
F-22は、全長約19メートル、翼幅約13メートル、3万5000ポンドの推力を発生できるエンジンを2基搭載し、超音速での飛行が可能であるとメーカーは発表している。攻撃に関しては、高高度から巡航速度で地上目標を攻撃し、敵機と交戦できる能力を持つ。
空対地攻撃用には、1000ポンド級の統合直接攻撃弾薬(JDAM)「GBU-32」を一組搭載し、1万5000メートルの上空をマッハ1.5で飛行しながら最大40キロメートル離れた移動する目標に向けて爆弾を投下、命中させることができる。
この先進的な戦闘機は、2010年代にシリアでイスラム国の資産を標的とした作戦を実施したことがあるが、今回中国の機体を撃墜するまで、空対空での戦果を上げたことはなかった。
アメリカ国防総省によると、2月4日にF-22が撃墜した中国のスパイ気球は、アメリカ政府と中国政府の間の緊張が高まる中、現れたもので、中国は5大陸でこの気球を飛ばしているという。だが、2月10日にアラスカ領空でF-22に墜落された物体が何なのかは、まだ分かっていない。
ホワイトハウスのジョン・カービー(John Kirby)国家安全保障会議報道官は記者団に「我々はこれを物体と呼んでいる。それが今できるベストの説明だからだ」と語っている。
「国有か企業所有か民間所有か、あるいは個人所有なのか、とにかくまだ分からない」