妻と娘を伴い、宴会に出席する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(2023年2月7日、平壌)。
KCNA via Reuters
- 北朝鮮は人民が金正恩朝鮮労働党総書記の娘と同じ名前を使うことを禁止していると、ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
- 「ジュエ」という名前の人間は皆、出生証明書を変更しなければならないと、匿名の関係者2人はRFAに語った。
- 金氏は娘が注目されることを望んでいるのだろうと、北朝鮮の専門家は話している。
北朝鮮当局は、金正恩朝鮮労働党総書記の娘と同じ「ジュエ」という名前の女子および女性に名前を変えるよう強制していると、ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
RFAが引用したそれぞれ平壌と平安南道で暮らす匿名の住民2人は、複数の地方自治体が女性に出生証明書を変更するよう命じたと話している。
「昨日、市の安全部が『ジュエ』という名前で住民登録をしている女性を集めて、名前を変えるよう命じていました」とある住民はRFAに語った。
近所に暮らすジュエという名前の12歳の少女とその両親は、娘の名前と出生証明書の変更を安全部に報告するよう指示されていたという。
当局は「ジュエ」という名前は今や「最高尊厳の『尊いお子様』」のものだと説明していたと、この住民は話している。
現在10歳と考えらえているキム・ジュエさんは、金氏の3人の子どものうち、その姿が明らかになっている唯一の子だ。2022年11月、父親とともに大陸間弾道ミサイルの発射実験を視察した際に初めてその姿が公開された。
金氏の娘が再び注目されたのは2月7日、朝鮮人民軍創建75年を記念する宴会に出席し、軍の高官らと記念撮影に収まった時だ。
父母の間で記念撮影に収まるキム・ジュエさん。
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金氏の娘への注目が高まる中、彼女が父親の後継者として育てられているのではないかとの憶測も広がっている。
金氏も2014年、人民に自分と同じ「ジョンウン」という名前を使うことを禁じ、出生証明書の変更を命じていた。
「指示は『任意』でしたが、北朝鮮では特に指導部からの命令となると、任意ということはほとんどありません」とCIA(中央情報局)の元アナリストで、現在はアメリカのシンクタンク、ランド研究所の政策アナリストであるスー・キム(Soo Kim)氏はInsiderに語った。
「なので今回の名前使用の禁止も、北朝鮮では珍しいことではありません」とキム氏は話している。ただ、金総書記の娘をどんな将来が待ち受けているのか語るには早すぎるし、一連の動きが示しているのは、金総書記が自分の子ども見せたがっているということだけだと同氏は言う。
北朝鮮はまだ少女が後継者だとは言っていないし、国営メディアも通常、後継者に対してするような賛美を始めてはいないとキム氏は話している。
北朝鮮では歴代の独裁者の下で、後継者には重要な肩書きが与えられてきた。2011年12月に金正恩体制が始まる前、正恩氏は軍で高い地位についていただけでなく、党の重要なポストも与えられていた。
「ただ、金氏が伝統にとらわれず、独自の道を切り開いて後継者を指名し、育成することを選択すれば、当然ながら政権の行動を予測するのははるかに難しくなるでしょう」とアナリストのキム氏は話している。