テスラは、自社の車を「修理の必要性を排除した」と宣伝しているが、電気自動車とガソリン車には修理やメンテナンスで微妙な違いがある。
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- 電気自動車(EV)はガソリン車とは異なる整備やメンテナンスが必要だ。
- 消費者はEVに乗ることで、販売店に行くことの意味が変わることを期待している。
- しかし専門家は、EVの修理に多額の費用がかかると見積もっている。
電気自動車(EV)の場合、車をディーラーに持っていくのはガソリン車と同じ意味ではない。
EVはアメリカの市場の6%程度しか占めていないが、EVが普及するにつれて、消費者はEVの運転や充電などについてさまざまな疑問が湧いてきている。また、EVを整備しつつ維持するのはどのくらい大変なのか、そのためにどれだけの費用がかかるのかということも気になるものだ。
EVはガソリン車とは違い、「車輪の上のコンピューター」と呼ばれることもある。EVとガソリン車には明らかな違いがある。EVは巨大なバッテリーとモーターを搭載しているが、エンジンはない。オイル交換も不要だ。エンジンの点火プラグもなく、一般的に駆動部品が少ない。テスラは(Tesla)自社の車を「修理の必要性をなくす」と宣伝しているほどだ。
EVは修理は少ないが、修理代は高くつくかもしれない
EVの部品の多くはサスペンション、ブレーキ、ボディなど、ガスエンジン車と似ている。ワイパー、そしてウィンドウォッシャー液の交換やタイヤ交換の必要があることもガソリン車と同じだ。EVがガソリン車と最も異なるのは駆動力の構成だろう。EVは一般的に長持ちする乗り物ではあるが、いずれは特定の部品が摩耗したり、修理が必要になったりする可能性がある。
「BEV(Battery Electric Vehicle:100%電気で走るEV)は走行距離の点では非常に長寿命の傾向にある。ガソリン車の寿命がおおむね10万マイル(約16万km)であるのに対し、EVは数十万マイル(約30万km〜50万km)あるかもしれない」とSAPノース・アメリカ(SAP North America)の自動車部門責任者、ビル・ニューマン(Bill Newman)はInsiderに語っている。
「EVは修理の頻度は下がるかもしれないが、修理にかかるコストは上がるだろう」
ケリー・ブルー・ブック(Kelley Blue Book:KBB)が行ったEVと内燃機関自動車の所有にかかる総費用の評価では、EVの維持費は5年間で4246ドル(約56万円)とされており、ガソリン車の4583ドル(約60万円)を下回っている。
しかしKBBの試算では、EVはその期間中1712ドル(約22万7300円)の修理代がかかり、ガソリン車の修理代1695ドル(約22万5000円)よりも高くなるとしている。
「EVは液体の補充やフィルターの交換などのメンテナンスはそれほど必要ではないが、修理代は高額になるだろう」とオートテック・ベンチャーズ(AutoTech Ventures)のマネージングディレクター、クイン・ガルシア(Quin Garcia)は述べている。
EVにはガソリン車用とは異なる専用タイヤがある。
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EV購入者が期待すること
例えば、EVのタイヤはガソリン車用のものとは違う専用のものがある。EV専用のタイヤは、重い負荷(主にバッテリーによるもの)や加速時の大きな衝撃、さらには騒音の低減にも対応できるものでないといけない。また、EVは一般にガソリン車と比較して重量があり、大きなトルクが生じるため、タイヤの摩耗が激しく、交換頻度が高くなる可能性がある。
EVのバッテリーがどのように劣化し、いつ交換が必要になるかについては明確なコンセンサスは得られていないようだ。最初のオーナーがそうなる可能性はないだろうが、EVが中古市場に出回るようになれば、2人目、3人目のオーナーが多額の交換費用が必要になるかどうかを判断する上で、バッテリーの状態などのデータは重要な要素となる。
一方、代替燃料データセンター(Alternative Fuels Data Center)によると、EVは回生ブレーキによって摩耗が抑えられるため、ブレーキパッドは交換する必要がないかもしれないという。
カーディーラーへの影響
このような変化の結果として、ディーラー各社は、車両へのサービスの必要性の低下が、自社の収益にどの程度の影響を与えるかを見極めているところだ。購入後のアフターサービスは現在、ディーラーのビジネスの大きな部分を占めている。
「我々は皆、アフターサービスが将来的に利益の中心になっていくと考えている」とガルシアは話す。
「ディーラーはアフターサービスを重視する一方で、アフターサービスがそれほど必要ないEVをどう扱っていくのだろうか」