1995年3月17日、NECが開催したOS「Windows 95」のプロモーションイベント「Inside Track 95」で登壇した当時のマイクロソフトのCEO、ビル・ゲイツ。
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- マイクロソフトはかつてOSのシェアを90%以上持つコンピュータ界の王者だった。
- マイクロソフトはグーグルやアップルとの競争に失敗し、反トラスト法に違反したことで、消費者への有利な立場を失った。
- アップデートされたAI搭載のBingの登場は、同社が1990年代の支配的立場に戻るチャンスだ。
マイクロソフト(Microsoft)ほど1990年代を懐かしむ者はいないだろう。WindowsがOSの約90%を占め、iPhoneはまだスティーブ・ジョブズの頭の中で、そしてあなたのお気に入りのうっとうしいバーチャルアシスタントはClippyだった1990年代だ。
マイクロソフトはコンピューターを使って行う活動のすべて「だった」。現在のグーグル(Google)のChromeのように、同社のブラウザであるインターネット・エクスプローラー(Internet Explorer)はウェブへの入り口だった。WindowsOSは、ミレニアル世代の多くがコンピュータの使い方を学んだ方法だ。創業者のビル・ゲイツ(Bill Gates)はかつて、最も裕福で最年少の億万長者だった。
しかし、アメリカ政府による反トラスト法違反の提訴、グーグル(Google)の登場、そしてスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)CEOの下でスマートフォンの重要性を認識しなかったマイクロソフトは消費者の意識から失われていった。
誤解のないように言うと、マイクロソフトの業績は悪くない。現CEOのサティア・ナデラ(Satya Nadella)の下、企業として、ゲームの主要プレイヤーとして、自らを再構築し、時価総額はほぼ2兆ドル(約270兆円)に達している。マイクロソフトはクラウドビジネスのAzureとOfficeから資金を調達し、最も人気のあるゲーム・エコシステムであるXboxも所有している。
しかし、同社の消費者向けソフトウェアは幹部がジョークにするほど愛されていない。
「抑えきれず」とは言わない…
だがBingはその状況を一変させるかもしれない。
マイクロソフトはデフォルトになりたい
マイクロソフトは人工知能のスタートアップであるOpenAIと提携した。OpenAIのチャットボットChatGPTは、詩やエッセイ、求人への応募書類、およびコードを書けることをユーザーが発見し、爆発的に普及している。マイクロソフトはOpenAIのディープラーニング技術をChromeの競合として振るわなかったBingに統合し、検索エンジンがよりニュアンスに富んだ方法で質問に答えられるようにした。
新しいBingは、ユーザーに「ビリヤニ レシピ」というような、いかにもな「検索語」で質問をさせるのではない。理論的には「ベジタリアン6人のためにディナーパーティを開く必要がある。3品のコース料理とチョコレートのデザートを提案して」といったような質問ができるようになる。
さらにBingは単に結果のリストを返すのではなく、下の画面のように、より使いやすい方法で情報を提出してくれる。
Shona Ghosh/Insider
とても未来的でかっこいいではないか!
だがあまり未来的でなくかっこよくないのは、マイクロソフトが自社の市場シェアを可能な限り拡大しようとしていることだ。
新しいBingは以下のいくつかまたはすべての手続きを経なければ利用できない。
- なるべく(マイクロソフト所有の)Edgeウェブブラウザを使用し、ウェイティングリストにサインアップする。
- (マイクロソフト所有の)Outlookのメールアカウントでサインインする。
- (マイクロソフト所有の)GitHub経由でログインする。
- デフォルトの検索エンジンとしてBingを選択する。またはBingアプリをダウンロードするなど使用しているデバイスで「マイクロソフトをデフォルトに設定」する。
Shona Ghosh/Insider
Webトラフィック解析を行うスタット・カウンター(Stat Counter)によると、現在Bingの検索市場でのシェアはわずか3%だという。一方、グーグルのChromeは90%以上を占めている。
ある人たちの意見では、PCメーカーに自社のウェブブラウザをオペレーティングシステムに統合することによって使用を強制するのとは違い、これは違法なことではない。しかし、図々しいことではある。マイクロソフトの次の決算が出る頃には、このシェアの数値は1、2段階上がっているかもしれない。
マイクロソフトのナデラCEOはこの瞬間の重要性を分かっている。
「最終的には、どんな企業でも自身を改革できれば、関連性を保つことができる」と、彼はブルームバーグ(Bloomberg)に語っている。
「常に自身を再構築する必要があるし、グーグルも自分たちに何が必要かを考えているだろう。90年代前半のマイクロソフトのように、毎日、新しいカテゴリーを導入したり、カテゴリーを再定義できるようにしたいと思っている」