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アマゾン社内で2月14日に開かれた全体集会で、CEOのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)は従業員を奮起させるために檄を飛ばした。アマゾンが昨今直面している異例の難局を乗り越えるために、従業員に団結を促した格好だ。
Insiderはこの全体集会の音源を入手した。それによれば、ジャシーのメッセージは概ねこうだ。
既存事業、新規事業、組織横断的チーム、自社のカルチャーを前へ進めるためにやるべきことはたくさんあるが、それには「何カ月も」かかり、時には取り組みが「誤解」されることもあり得る。しかし、われわれの進歩がアマゾンを「再定義」し、今後の自社の立ち位置を高めてくれるだろう——。
「これは1カ月や2カ月でできることではありません。私たちは進歩しようとしている。毎月毎月、意義ある進歩を重ねていこうとしているんです。しかしこれには何カ月もかかり、時に誤解を受けたり、過少評価されることもあるでしょう。
あなた方は、今回起きていることが初めてのことではなく、また最後でもないことは分かっているはずです。
お客様に商品をお届けすることにひたむきに注力し、一人ひとりが主体的になすべき役割があることを認識し、組織の一員として問題の解決にあたる。そうすれば、私たちはすばらしいものを提供し、アマゾンという組織を再定義できると確信しています。
アマゾンにとって最高の時期は目の前に来ていると、強い手応えを感じています。みなさんと一緒にそれを実現することを楽しみにしています」(ジャシー)
このジャシーのコメントは、ここ数カ月アマゾンが同時並行で進めているコスト削減と投資に関し、従業員からの質問に答えてのものだ。アマゾンは成長の急ブレーキと景気低迷のダブルパンチで、1月に1万8000人の人員削減を発表し、複数の長期プロジェクトを凍結した。一方、食料品販売、ヘルスケア、個人用デバイスなどの分野には変わらず投資を続けるとしている。
投資を続けるのはどの分野?
ジャシーはまた、翌期の事業計画を立てていた2022年夏の時点で「非常に不確実な経済環境」が見え始めた、と述べている。それまでは積極的に採用を進めるという拡大路線を方針としていたため、景気悪化に備えてコストの合理化を検討しなくてはならず、それが結果的にレイオフや採用凍結、プロジェクト中止といった意思決定につながった。
「経営陣も従業員のみなさんも、マクロ経済と事業の面で、私たちを取り巻く環境がどう変化しているのかを常に注意しなければいけません。今は、極めて困難な時期にあると見ています」(ジャシー)
それでも、「多様な顧客体験に変化をもたらしうる」長期的に見て重要な戦略的投資のためのリソースは確保した、とジャシーは語る。候補に上がっている投資分野としては、食料品、国際市場、エンターテインメント(音楽およびビデオストリーミング)、音声アシスタント「Alexa」、個人用デバイス、自動運転車開発企業「Zoox」、ブロードバンド通信衛星計画「Project Kuiper」、ヘルスケアなどだ。
「これらがわれわれの追求するイノベーションであり、どれもあっと言わせるようなものばかりです。これほどイノベーションを追求している企業は他にありません」(ジャシー)
企業を成長させるのは一つの大発明ではなく、通常は「物事の積み重ね」だ。こうした目標に向けてチーム一丸となって業務にあたってほしい——ジャシーは従業員に対してこう力説した。そしてアマゾンの成功のために、全従業員が次の3つを実行するよう求めた。
- フォーカスする:アマゾンでは採用を絞るため、「今年は生産性を高める」ために時間が捻出されるはず。「私たちにできることはたくさんある」と説明。
- 顧客中心に考える:顧客中心主義は常にアマゾンのカルチャーの根幹となってきたが、今は特に重要だ。「不確実で困難な時期にあるからこそ、顧客にとって最も重要なものを改めて順位付けし、見直す機会だ」(ジャシー)
- 主体性を持って業務にあたる:自分の仕事に責任を持ち、情熱を傾けること。不安定な時期こそチームがより緊密に協力する必要がある。また、コスト削減のために倹約を心がけること。「競争は熾烈の度を増しており、われわれチームとして協力する必要がある。どうすれば素早く対応でき、どうすれば困難な状況に立ち向かっていけるのか、考えてほしい」(ジャシー)