最高の滑り出しを見せた2023年の株式市場も、この先はネガティブな展開を予測する専門家が多く……。
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2023年の米株式市場はウォール街のほとんど誰もが想像し得なかったほどに好調な滑り出しを記録した。
S&P500種株価指数は2月に入ってから4100前後で推移しているが、この水準に到達することを2022年末時点で予測できていた投資銀行はわずかに4社。しかもそのうち3社は、下半期中の上昇を経てその水準に達するとしていた。
最も強気の予測を提示していたドイツ銀行(Deutsche Bank)でさえ、上半期は17%低下すると読んでいた。
ただ、こうした足元の上昇がどこまで続くのかと言うと、間もなく下落に転じるとの見方が多いのが現実だ。
富裕層向け資産運用会社ケイス・キャピタル・アドバイザーズ(Kace Capital Advisors)創業者兼最高経営責任者(CEO)のケニー・ポルカリ氏は、年初来続いたS&P500種指数の上昇基調がそのうち終わり、その後は3800〜3850のサポートライン(下値支持線)まで下げると予測する。
市場歴40年のベテランで米CNBCやFOXビジネスの経済番組コメンテーターとしても知られるポルカリ氏によれば、足元で力強さを示す米経済の勢いが失われ、想定以上の長期にわたる景気後退に向かう展開が見えてくる頃、株価下落が始まるという。
「景気はこれからもっと悪くなっていくと思う。失業率は上昇し、相場への下押し圧力になる。
考えられる限り最悪の事態に備えておくことだ。そうしておけば、あとは何でもうれしい誤算、サプライズと思える。僕が言ってるほどに悪い展開にならなかったら、それはそれで素晴らしいじゃないか。僕が間違ってたことが明らかになるなら本望さ。むしろ間違えたいくらいだ」
米FOXビジネスの経済番組に出演して雇用統計について分析を語るポルカリ氏(2022年10月)。
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下落相場で手元に置いておきたい10銘柄
ポルカリ氏は今後の相場について全面安の展開を予想しているものの、ディフェンシブセクターや高配当銘柄、巨大ハイテク銘柄など、魅力的な投資機会は残されているとみる。
年齢や市場歴などの経験を問わず、適切な銘柄を個別に選択できれば投資益を得ることはできるが、どんな相場展開になっても間違いなくリターンを確保できる「万能ポートフォリオ」は存在しないというのがポルカリ氏の考えだ。
失敗しても逆転可能な若い投資家は積極的にリスクを取ってチャンスをつかみにいくのがいいし、引退後の老後生活も見えてきた投資家はハイリスク・ハイリターンの銘柄への投資は避けたほうがいいとポルカリ氏は語る。
「あなたに見えているこの先の景色、あなたのよって立つタイムホライズン(時間軸)は、僕のそれとはまったく違うものだ。
ゴルフに例えるなら、僕はバックナイン(後半の9ホール)にいるが、あなたはフロントナインにいるのかもしれない。あなたがこれから18ホールを回ろうという時に、僕は残り2ホールかもしれない。もしそんな状況なら、あなたには僕のポートフォリオが保守的に見えるだろうし、むしろそうあるべきだと思う」
上記のような立ち位置を踏まえた上で、ポルカリ氏はリスク回避を優先したい投資家に対し、高配当の銘柄やヘルスケア、公益事業、生活必需品など景気後退の影響を受けにくいセクターの銘柄を推奨する。
該当する具体的銘柄としては、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、コカコーラ(Coca-Cola)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)の3社が挙げられる。
「これら3銘柄に人目を特に引く要素はない。でも、企業規模も時価総額も大きく、世界中に多数の拠点を持つグローバル企業としての強みがある。十分な配当金も出していて、何より困難な時期を乗り切るだけの力がある」
ポルカリ氏は他にも高配当銘柄として、通信大手のAT&Tおよびベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)を推奨する。年間配当利回りは前者が5.8%、後者が6.5%と極めて魅力的だ。
また、アマゾン(Amazon)、アップル(Apple)、マイクロソフト(Microsoft)、IBM(International Business Machines)のような巨大テック銘柄は、年齢に関わらずあらゆる投資家にエクスポージャーを取るよう推奨したいという。
高いリスク選好を持つ投資家は、サイバーセキュリティ関連銘柄や、エヌビディア(Nvidia)のような人工知能(AI)関連銘柄に目を向けてみるのもいいとポルカリ氏は語る。
米研究団体OpenAIが開発した対話型AI「ChatGPT」の大ブレイクに代表されるように、現時点ではAIが2023年のテック分野の大きなトレンドになりそうだ。
投資家たちはいま、急成長を遂げつつあるこの業界から何とか利益を得ようと躍起になっている。
AI分野へのエクスポージャーを取りたい投資家にポルカリ氏が推奨するのは、「グローバルX ロボティクス&AI(Global X Robotics and Artificial Intelligence)」のようなテーマ別上場投資信託(ETF)だ。どの企業がこのブームの最大の勝者になるのか、あえて絞り込む必要がなくなる上、リスクも抑えられるという。