米銀大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)は2023年上半期にも景気後退入りがあると予測する。
Reuters / Lucas Jackson
ここから先にまた調整局面がやって来るのか、それともすでに底入れしたのか。株式が相場サイクルのどの局面にいるのかをピンポイントで特定するのはなかなか難しい。
しかし、株式投資はそもそも、単一インデックス(指数)の上昇か下降のどちらかに賭けるような単純なものではない。S&P500種株価指数がどんな挙動を示そうが、リターンが上振れする可能性は(表面にこれという形で見えないだけで)常にある。
米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)のストラテジストチームは2月13日付の顧客向けレポートで、同社が独自に定義して提供する「米国レジームインジケーター」を援用し、現在の相場がたどり着く大底にこそ最高の投資機会が存在するとの見方を強調している。
同インジケーターは、製造業の業況およびセンチメント、企業の業績予想、債権利回りの変動など多様な要因に基づき、景気動向の判断に資する指標だ。
景気循環(サイクル)には「回復期」「好況期」「後退期」「不況期」と呼ばれる4つのステージがあり、バンカメのインジケーターは「不況期」に突入寸前の現状を示しているという。
同行の米国株・クオンツ・ESG戦略責任者を務めるサビータ・スブラマニアン氏は、2月10日付の顧客向けレポートでこう説明している。
「当社の米国レジームインジケーターの数値は、2月に入って不況期に足を踏み入れたことを示しています。翌3月も連続して同様の結果が確認された場合、後退期から不況期への移行が確定することになります」
【図表1】「米国レジームインジケーター」の推移(1990年〜2023年)。1月にマイナス圏に突入し、不況期への移行が懸念される。
Bank of America
バンカメのエコノミストチームは、米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派路線を継続し、2023年末までピーク水準のまま金利を据え置くとみて、2023年上半期の景気後退入りを予測する。
米ウォール街の他の大手金融機関も多くが2023年中の景気後退入りを想定している。
米ニューヨーク連銀がイールドカーブの形状(すなわち10年物米国債と3カ月物米国債の利回り差)を基に算出する(12カ月以内の)景気後退確率は現在のところ57%となっている。
過去のデータを踏まえると、景気後退期に投資家が特に注目すべき銘柄は「高クオリティ」「低リスク」「大型株」の各要件に該当するものとバンカメは指摘する。
「例えば、高クオリティ株と大型株は景気サイクルの不況期にアウトパフォームする傾向があります。一方、回復期に高いパフォーマンスを発揮するのは、バリュー(割安)株、高リスク株、小型株です」
【図表2】景気(循環)サイクルと4つの局面でアウトパフォームする銘柄の傾向。上方向が景気拡大、下方向が景気縮小を示す。
Bank of America
景気後退期において、高クオリティ・低リスク・大型株に該当する銘柄は、S&P500種均等加重(イコールウェイト)指数を平均4.8~5.6%アウトパフォームしてきた。
ただし、今回の景気後退については、小型株がすでに十分すぎるくらい下落していることから、大型株のみならず小型株にも期待できるとスブラマニアン氏は指摘する。
「小型株は一般的に景気後退期(景気サイクルの不況期)はアンダーパフォームするものですが、今回について言えば、小型株の動向を示すラッセル2000指数はすでに深刻な景気後退と2008年の世界金融危機時のような企業の業績低下を織り込み済み。一方、大型株は歴史的に見てまだ割高で、株式リスクプレミアム(ERP)も横ばいの推移が続いています」
「実際、FRBがインフレ抑制に腐心していた1970年代から80年代初頭の不況期にも、小型株がアウトパフォームした実績はあるのです」
【図表3】小型株の動向を示すラッセル2000指数と大型株の動向を示すラッセル1000指数の予想株価収益率の対比(1985〜2022年)。小型株は歴史的な割安水準。
Bank of America
さらにスブラマニアン氏は、売上高に対してキャッシュフローのマージンが大きい銘柄は、(景気サイクルの)後退期から不況期にかけてアウトパフォームする可能性が高いと指摘する。潤沢なフリーキャッシュフローはしばしば高クオリティ銘柄の特徴とされる。
「相場サイクルのステージが進むにつれ、健全なフリーキャッシュフローを生み出し続ける企業は減り、貴重な存在になっていきます。なぜなら、一般的にサイクルの後半には、コスト上昇、賃上げ圧力、金利上昇、生産能力ひっ迫による設備投資増など、キャッシュフローを圧迫する要因が集中するからです」
スブラマニアン氏が挙げたアウトパフォーマンスの要件にエクスポージャーを取る手法としては、上場投資信託「iシェアーズ MSCI米国クオリティ・ファクターETF」「インベスコS&P500低ボラティリティETF」「バンガード・ラージキャップETF」「バンガード・スモールキャップETF」が挙げられる。