マールブルグウイルス(擬似色で表示)。
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- 世界保健機関は、赤道ギニアの保健当局が致死率の高いマールブルグ病の症例を確認したことを2023年2月13日に公表した。
- マールブルグウイルスは感染力が強く、発熱、疲労、出血性の嘔吐を引き起こすという。
- 現在、このウイルスを治療するための承認済みのワクチンや抗ウイルス治療薬はない状況だ。
2023年2月13日、世界保健機関(World Health Organization:WHO)は、赤道ギニアがで致死率の高いマールブルグ病の症例を確認したと公表した。
WHOによると、マールブルグウイルスによる発熱で同国内で少なくとも1人が死亡したことが確認されており、さら同ウイルスは8人の死亡に関連しているという。赤道ギニアでは、報告された9人の死亡に加え、16例の感染が疑われる患者がおり、患者には発熱、疲労、血液の混じった嘔吐や下痢などの症状が見られると伝えられている。
赤道ギニア東部のキエンテム州で確認されたこれらのマールブルグウイルス病は、同国で初めて確認された例となった。2022年にガーナで同病の患者が報告されて以来、約半年ぶりのことだ。
マールブルグ病は珍しい感染症だが非常に感染力が強く、平均致死率もWHOによると約50%と高く、命に関わる病気だという。 2005年にアンゴラで発生したマールブルグ病は、感染者の死亡率が88%にも上ったという。
マールブルグ病の症状は?
マールブルグ病の一般的な症状は、出血熱、倦怠感、出血性嘔吐、下痢などだ。
WHOによると、この病気は突発的に始まることが多く、高熱、ひどい頭痛、倦怠感から始まり、筋肉痛やけいれんなどを伴うこともあり、黄疸、吐き気、腹通などの症状もある。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、感染5日目ごろ、感染者の胸、背中、腹などに痒みを伴わない発疹が現れることもあるという。
また、WHOによると、感染3日目頃には目がくぼみ無表情になり、極度に無気力になるという「幽霊のような」状態になることもある。死亡するのは感染後8日から9日のことが多く、通常は死亡前に出血の症状やショック状態になるという。
マールブルグウイルスは非常に感染力が強く、遺体が感染源になる可能性もある。
マールブルグ病の治療方法
WHOによると、現在、マールブルグウイルスに対して承認済みのワクチンや抗ウイルス治療は存在しないが、水分補給や対症療法など早期に治療を受けることで生存率を高めることができるという。
WHOは火曜日に緊急会議を開き、現在開発中の複数のマールブルグウイルスのワクチンと治療法を試験するかどうかを議論した。
マールブルグウイルスはマラリア、腸チフス、髄膜炎、エボラ出血熱など他の感染症と症状が似ているため、診断が困難な場合がある。
WHOによるとマールブルグウイルスはエボラ出血熱を引き起こすウイルスと同じフィロウイルス科に属している。またマールブルグウイルス病は自然宿主であるフルーツコウモリを介して人間に感染するという。
マールブルグ病は呼吸器系疾患ではない。感染者の血液や体液、物などに直接接触することによって人の間に広がっていく。
マールブルグウイルスは、1967年にドイツのマールブルグとフランクフルト、ユーゴスラビア(当時)のベオグラードで研究を行っていた研究者の間で初めて確認された。
WHOはどのように対応している?
国連の保健機関であるWHOは、疫学、症例管理、感染予防の分野の保健緊急専門家を赤道ギニアに派遣し、感染症の拡大抑制に努めていると2023年2月14日の声明で述べた。また、感染地域に先遣隊を配置し、接触者の追跡、症状がある人の隔離、医療の提供などを行っているという。
隣国カメルーンの当局は、2023年2月15日、赤道ギニアと国境を接するコミュニティで、マールブルグ病の疑いのある2つの症例を見つけたと発表している。