新しいBingのAIチャットボットはどのような作業を効率化する存在なのか。
出典:マイクロソフト
2022年は画像生成系AIの「Midjourney」や「Stable Diffusion」が脚光を浴びた。色々な諸問題を抜きにしてみると、Stable Diffusionおよびその派生モデルなどの急激な進化が起きている。
テキストはというと、2022年末にChatGPTが大きな話題になった。Business Insider Japan上にもいくつかの記事があり、実際にテストしてみた読者もいるだろう。
情報の精度は別として自然な文章、思考っぽい応答などから可能性をとても感じる。
ただ、ChatGPTは学習したデータを元にした応答であり、得手不得手が目立ったし、最新の情報を元にしたい場合にも弱い。
もちろん、特定の要素……例えば製品のナレッジを学習させたのであれば、FAQを中心としたチャットボットとして活用できるレベルにある。
直近では弁護士ドットコムやグノシーがChatGPTの導入を発表しているが、論理的な用途に寄るほどとても便利だ。
作業の副操縦士となるBing AI
■「BingとChatGPTの強みと弱みを箇条書きで」とたずねてみた
Bingに「BingとChatGPTの強みと弱みを箇条書きで」ときいてみた結果。
画像:筆者によるスクリーンショット。
そんなタイミングでやってきたのがマイクロソフトの「Bing(ビング)」だ。
※BingでAIを使う方法は原稿の末尾で言及している
従来の検索エンジンにAIチャット機能を搭載して、ChatGPTと同様に大規模言語モデルによって自然な文章で質問すると、それに自然な文章で答えてくれたり提案してくれたりする。
なによりリアルタイムに検索した情報を交えている点が大きい。
マイクロソフト独自のAIモデル「Prometheus」をベースにしており、将来的には「Microsoft 365(旧Office 365)」にも実装されるのだが、まずは検索シーンの大きく変えていくようだ。
■「Bingでの検索はどう変化する?」とたずねてみた
Bingに「従来の検索に比べて、Bingでの検索はどう変化する?ユーザー側の使い勝手はどうなる?」ときいてみた結果。
画像:筆者によるスクリーンショット。
Bingにできることは「検索」「提案」「比較」「記事作成」「ジョーク」などだ。
ふんわりした質問をしても、何かしらの提案をしてくれるため、所用時間を抜きにすればITリテラシーを問わず求める答えにたどり着きやすい。
日常的な会話もできるため、検索というよりは話し相手的な印象もあるし、調べものをしている際はコドライバー(副操縦士)的な存在とも感じた。
柔軟性を試すのであれば「小説」や「作詞」「ネーミング」などを聞いてみるといいだろう。「ジョーク」でもいい。
■筆者自身についてたずねてみた
ある程度、個人情報がWeb上にあるのなら、自分のことを調べてもらい、そこから会話を発展させてみると、新しい検索体験の雰囲気つかみにいいし、情報の精度もよくわかる。ここではBusiness Insiderでの記事件数の間違いと金属材料研究所の写真集のタイトルに間違いがあったが、良く見つけてきたなといった感想の方が強い。
画像:筆者によるスクリーンショット。
■記事の要約をお願いしてみた
URLを指定しての要約。議事録の文字起こしをAIに任せて(いまのところBingのIndexに入る必要あり、コンプラ的には難しいのだが)、さらに自然な言語での要約も可能になるだろう。
画像:筆者によるスクリーンショット。
■「Galaxy S23 Ultra」と「iPhone 14 Pro」の比較表をつくってもらった
比較表を生成してもらったもの。一部間違いはあるのだが、便利ではある。
画像:筆者によるスクリーンショット。
■記事の下書きを書いてもらった
この記事の下書きをチェックしてもらい、なんとなく文語体にしてもらった。
画像:筆者によるスクリーンショット。
Bingが「拒否」する作業を探る
できないことについては、画像に対する挙動がわかりやすい。
一例で言えば、画像として掲載されているグラフの情報には非対応というわけだ。ただ、そのうち解消しそうではある(文字認識の技術は成熟しており、例えばスマホアプリの「Microsoft Lens」では手描きの表を撮影してエクセルに落とし込む機能がある)。
また、ある程度の規制が存在しており、バイオレンスな要素を含む小説を書いてほしいといったオーダーは拒否された。
■「バイレンスな要素のある小説」を書いてもらおうとした
小説をお願いしてみたところ。
画像:筆者によるスクリーンショット。
バイオレンス要素はNGだと教えてくれた。小説は具体的な人物情報を入れると、さらに解像度が高まるため、お試しとしてもおすすめ。
画像:筆者によるスクリーンショット。
不確実なものは「情報の精度」だ。検索にヒットした複数ソースから会話を生成するため、情報の元ソースが正確でない場合があり、結果的に出力にも間違いが混ざってくる。
この点は出典情報があるので、人間側で情報を精査するほかないが、複数のWebサイトを横断して情報を集めて、脳内もしくはプレーンテキストでまとめて……の部分がすぐに済む点はとても便利だ。
■「iPhone 13 Pro Max」と「iPhone 14 Pro Max」を比較して長所をあげてもらった
スペックシートでも間違いがある。体験から考えると、この解消がまずもっての課題になるだろう。
画像:筆者によるスクリーンショット。
iPhoneのデータ移行、レンズの作例向けの場所の案は答えられる?
おもしろかった事例を見てみよう。
「iPhoneのデータ移行をスムーズに実現するには?」とお願いしてみたところ、妥当な方法が提案された。
ただクイックスタートが抜けていたので、その点を質問したら、「なぜその解答を選んだのか」といった答えも得られた。
こうした双方向のやり取りはとても新鮮であり、アップルの「Siri」が登場したときのインパクトに近い。
■iPhoneの機種変更をスムーズに実現する方法をたずねてみた
妥当な回答なのだが、ステップ3に疑問があった。もっと事故が少ない手段としてクイックスタートがある。
画像:筆者によるスクリーンショット。
クイックスタートをスルーした理由を聞いてみたところ、Bingなりの配慮故だったとわかったうえに、なるほどとなってしまった次第。
画像:筆者によるスクリーンショット。
また直近に一眼カメラのレンズを購入したので、どこかに試し撮りする撮影スポットはないかと聴いてみると、普段目にする記事のような内容の回答があった。
もう少し肉付けするとそれなりの記事になりそうなレベルだった。
■「新型レンズに最適な撮影スポット」をたずねてみた
ソニーの新型レンズ「SEL2070G」の作例にオススメの撮影スポットを聴いてみたもの。
画像:筆者によるスクリーンショット。
■「新型レンズに最適な撮影スポット」について1日置いてたずねてみた
1日置いて似た質問をしてみたところ。地図が表示された。
画像:筆者によるスクリーンショット。
会話を続けてみると、これも記事の小ネタによさそうな要素を出してきた。
画像:筆者によるスクリーンショット。
自身の「ライター」としての職業を考える
突き詰めると今見ているこのテキストも論理的なものであり、商業日本語にも近い。
最終的には筆者のようなライター的なものは消滅するだろう。
ただ、もともとIT系のライティングをしていれば、ひどい言い方をすると「サボるための技術進化」を追いかけてきたわけであり、いずれは追ってきた技術によって道を断たれる可能性はいつも見えていた。
そんなこともあり、筆者の場合は、ライター業の比重を落とし、編集業のウェイトを増やしたのが約1.5年前だった。
この原稿もBingに「ネタ出し」をしてもらい、それを元に原稿を書いている。
そのうち編集的な動きも減って、もっと企画的な部分を重視される未来になりそうだが、最終的な判断を下すのは人という点はしばらく続くだろう。
その際、必要なものは知識や体験、発想になるだろうか。少なくとも(すでに産業界で活発だが)経験の部分はAIによって補強されるため、現時点でも道具としての可能性は多いにある。
■この記事の原稿を制作するのに使う「構成」を立ててもらった
本稿の元ネタ。最終的にはだいぶ構造が変化してしまったが、とっかかりがスムーズだった。
画像:筆者によるスクリーンショット。
個人的には言語圏を問わずネットミームにすんなり対応していることは、かなり驚きだ。
2022年末、情報処理方面の科学者やデータサイエンティスト、エンジニア(機械学習方面)らとChatGPTをいじりつつ、
「ChatGPTはすごいが、日本語のネットミームに対応するのは2023年後半。対応した時点でいったん楽しい方向に進むだろう(ダメな意味で)。
『AI産“いかがでしたかエントリー”』(編注:SEO対策に特化した内容に意味がないもしくは薄い記事)が量産されて、検索が役に立たないタイミングが生まれるだろうし、検索というアクションが変わるかもしれない」
などと話していたのだが、想像以上に速くそんな未来がきてしまった。ともあれ、いま以上に一次ソースに当たる重要性が増すだろう。
最後に、MidjourneyやStable Diffusionが話題になったとき、触れてみた読者は多いだろう。ただ、そのときだけで以降の変容・進化を追っている読者は少ないハズだ。
Bingの場合も同様かもしれないが、Bingの変化速度も極めて速いだろう。規定のブラウザーを「Microsoft Edge」に変更して、しばらくBingと過ごして変化を体験してみるべきだ(編注:AI機能搭載Edgeは2月16日時点で開発者向けの「Dev チャネル」に限られる)。