カバーの谷郷元昭社長と同社所属VTuberの「ときのそら」。(2020年12月撮影)
撮影:伊藤圭
2Dや3Dのキャラクターをアバターに用い、ネット上で活動するバーチャルYouTuber(VTuber、バーチャルライバーとも呼ぶ)のプロジェクト「ホロライブ」「ホロスターズ」などを運営するカバーが東証グロースで上場する。同社が2月17日に発表した。
上場予定日は3月27日。VTuver事業を主軸とする企業としては、「にじさんじ」を運営するANYCOLORに続く大型上場となる。
「日本発で最先端の二次元エンターテインメント体験を」——。「ホロライブプロダクション」を率いるカバーCEOの谷郷元昭氏が、この言葉に掲げてVTuber事業を立ち上げたのは2017年9月のことだった。
主要な経営指標等の推移
出典:カバー株式会社「新規上場申請のための有価証券報告書」より。
2023年第3四半期時点で、同社にはVTuber71名が在籍。YouTubeのチャンネル登録者が100万人を超えるタレントも同期時点で31名所属している。
特撮やアニメへの深い愛を語る白狐の女の子、抜群のイラスト力で自らアルバムジャケットをデザインする海賊の船長、中毒性のある笑い声と語尾で視聴者を虜にするハイテンションなウサギの女の子などなど……。
配信者の王道である「歌ってみた」はもちろん、Minecraft内での運動会や料理配信、俳句選手権など一風変わった企画もあれば、超高難度のゲームに挑む長時間の耐久企画もある。
出典:カバー株式会社「新規上場申請のための有価証券報告書」より。
配信には常に数千人〜数万人のファンがリアルタイムが参加。時に笑いを、時にドラマを生み出す“ホロメン”たちの活動を見守っている。最近では大手コンビニや食品メーカーともコラボ。その活躍はバーチャルにとどまらない。
ホロライブで2回目のフェスとなる「hololive 2nd fes. Beyond the Stage」には28人の所属VTuberが参加。圧巻のステージをつくり上げた。キャッチコピーは「広がる世界で、一緒に」
提供:カバー
コロナ禍では「おうち時間」の増加も背景に、ファンを積み増してきた。大手食品メーカーやコンビニエンスストアとのコラボも多い。3月には幕張メッセで大型のイベント「hololive SUPER EXPO」を開催予定。近年は、ホロライブの世界観を表現するメタバースプロジェクト「ホロアース」にも注力している。
四半期売上高推移。
出典:カバー株式会社「新規上場申請のための有価証券報告書」より。
谷郷氏もまたVTuber界隈で「YAGOO(ヤゴー)」の愛称で知られるようになった。海外のネット掲示板「reddit」ではファンが作るネットミームのネタにされるほどだ。
谷郷元昭社長の経歴。
Business Insider Japan
カバー株式会社の沿革
出典:カバー株式会社「新規上場申請のための有価証券報告書」より。
谷郷氏は、当初から「世界」を見据えた事業を営んできた。
今まで支えて頂いた皆さんのおかげで、本日、カバー株式会社は東証グロース市場にて新規上場承認を頂くことができました。
これからも、世界が愛するカルチャーを届けるべく、果敢にチャレンジしていきたいと思います。
引き続きのご支援どうぞよろしくお願いいたします。(2023年2月17日、谷郷社長のTwitterより)
かつて谷郷氏は、Business Insider Japanの取材に対してこう語っている。
「演じる側も楽しむ側も、アバター的な概念やバーチャル的な概念は、国境や年齢を超えられる。我々としても、そういうサービスを今後も作っていきたいなと思っています。
日本のアニメが好きなマーケットというのは結構大きい。100万人のデマンドということではなくて、もっとたくさんのファンに支持していただいて、いろいろな新しいサービスを提供できるようになっていければと思っています」