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ベンチャーキャピタルであるブルペン・キャピタル(Bullpen Capital)でゼネラルパートナーを務めるアン・ライ(Ann Lai)は、アメリカ中のスタートアップのファウンダーたちに電話をかける日々だ。
ライはクリエイターエコノミーを含むテクノロジーやデータといった領域のスタートアップに対する融資を主な業務としており、多様でまだそれほど評価が高まっていないスタートアップに関心がある。
最近では、ニック・チェン(Nick Chen)らが創業したクリエイター収益化のためのスタートアップ、ピコ(Pico)が650万ドルを調達したラウンドに関わった。
「資金調達環境はいま非常に悪化していますが、過小評価されているスタートアップにとってはいいことです。というのも、そういうスタートアップはスルーされることにも2倍働かなければならないことにも慣れていますから」(ライ)
ブルペン・キャピタルのアン・ライ。
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2022年、とりわけ下期にVC資金が世界的に停滞したことを考えると、2023年に資金調達を行うスタートアップはそう多くはないだろうとライは予想する。しかしいずれ状況が好転すれば、起業家がVCに売り込むチャンスがやってくる。
ライが投資すべきスタートアップを判断するうで必ず目を通すのが、ピッチデックだ。ピッチデックとは、起業家がVCら投資家に対し、事業の目標、収益・売上・成長予測、資金を必要としている理由、その資金をどう使おうとしているのかを示すためのプレゼン資料である。
「ピッチデックは子ども向けの絵本のようなものでなくてはいけません。平易な言葉で、短く、ストーリーを伝えるものです」
以降では、今日のような厳しい経済状況下で資金調達を成功させるためにはどんな点を心がけてピッチデックを作成すればよいか、これまで何百ものピッチデックを見てきたライにアドバイスをしてもらった。
ピッチデックの冒頭は重要な数字から入る
ピッチデックの1番目と2番目のスライドには、売上や純利益率など損益計算書の一番上にくるような指標を置くこと——これがライの第一のアドバイスだ。
「私たちVCは日々膨大な量のデータに目を通しています。ですから、私たちが一番知りたい項目を先頭に持ってくれば注意を引きやすくなるわけです」
まず数字の説明をしたうえで、3枚のスライドで自分たちのスタートアップが取り組もうとしている課題について話す。そして、「パンチラインスライド」と呼ばれるスライドを続けるのがおすすめだとライは言う。パンチラインスライドとは、自社のビジョンについて謳った声明文や目標のことである。
その次のスライドでは再び指標の話に戻り、成長予測や達成目標について詳しく語るのがいい。ライいわく、これらの指標は海外の起業家にとっては特に重要になる。
「VCの多くは外国の起業家に対してバイアスを持っていますから、自社の数字については隅々まで頭に叩き込んでおく必要があります」
8歳にも分かる平易な言葉を使う
ピッチデックをつくる際は平易な言葉を使うよう心がけることも重要だ、とライは強調する。そう、8歳児を相手にプレゼンするくらいのイメージだ。
ライによると、VCはたいてい各スライドの見出しを読むだけで細かい文章は読み飛ばしてしまうので、見出しの付け方は特に重要だ。
ピッチデックに複雑な図表を入れ込む起業家も少なくないが、ライはこうした要素も好まない。
「スライドを見る10秒間で、円グラフや折れ線グラフを本当に読み取れる人なんていませんから、こういう要素は入れないほうがいい。補足資料になら入れてもかまいませんが、それもVCたちが詳細を知りたい場合に限ります」
「急成長中」は必ずしも売りにならない
ライによれば、VCも数年前までは売上収益率300〜400%というような驚異的な成長企業に出資する傾向が今より強かった。
しかし経済が減速している今、VCの多くは慎重に投資判断をするようになっている。急成長中のスタートアップは敬遠する代わりに、成長率や資本効率性が持続的だと判断できる企業を優先させている。
「私たちはより安全な財務内容のスタートアップを求めています。つまり、少ない資金をやりくりして安定した成長率を維持できる企業ということですね。高いパフォーマンスを示している急成長企業は、現状では危険信号になるおそれがあるのです」
「これは賛否両論あるんですが」とライは前置きしたうえで、起業家は自身が売り込みをしているVCを調べて、そのVCが何に重きを置いているかを研究すべきだと話す。そうすれば、VCから反応してもらえる可能性は高まる。
「複数のVCに対して、万人向けするような売り込みはすべきではありません。私たちVCは皆、横でつながっていますから」