ドリンク・カスタマイズのパイオニア、スターバックス。
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- スターバックスはカスタマイズされたドリンクをスタッフがより速く提供できるマシンの特許を新たに申請した。
- ドリンクをカスタマイズできることで、スターバックスは客を呼び寄せ、高い利益をもたらしているが、スタッフにとってはその複雑さが頭痛の種となっている。
- スターバックスがこのマシンの試作機をすでに開発したのか、また実用化されるかは不明だ。
スターバックス(Starbucks)は、バリスタが複雑にカスタマイズされたドリンクをより速く提供し、ドリンクに特色を出したい客の要求に応えられるマシンの特許を新たに申請した。
スターバックスのドリンクのメニューは、ホットもアイスも、材料の分量や入れる順番が厳密に決められている。スターバックスはメニューのカスタマイズに関してパイオニア的存在であり、例えばエスプレッソのショット、キャラメルやバニラなどのフレーバーシロップ、あるいは氷を追加するなど、カスタマイズしたドリンクをオーダーすることができる。
カスタマイズのオプションの充実が売り上げを伸ばしているが、作るのに時間がかかり、高度にカスタマイズされた間違いやすいドリンクを客が好んでいることは、バリスタにとっては頭痛の種になっている。また、これらのカスタマイズされたスターバックスのドリンクは、TikTokのバイラルトレンドにリンクしているケースもある。
2022年11月の第4四半期決算説明会で、シロップやソースなどのカスタマイズは、年間10億ドル(約1343億円)の売上を生み出しているとスターバックス・ノース・アメリカ(Starbucks North America)の社長、サラ・トリリング(Sara Trilling)は述べている。同社のカスタマイズにおける売上は、2019年から倍増している。2022年第4四半期は、直営店で販売されるドリンクの60%はカスタマイズされたものだったという。
ドリンクをカスタマイズする料金は各アイテムごとに異なる。Insiderがスターバックスのドリンクをカスタマイズしてオンライン注文してみたところ、シロップが最も高価で80セント(約107円)だったが、無料でできるカスタマイズも数多くある。
スターバックスによると、特許を出願したマシンの仕組みは、バリスタがレシピを覚える必要がないようにガイドし、自動的に洗浄し、自動的にシロップやフレーバーなどをドリンクに入れるので、バリスタの仕事が楽になるという。また、スターバックスは機械式のポンプを使うことによってスタッフの「腕の疲労」を軽減するとしている。
スターバックスは、2023年2月9日付の特許出願書では、マシンの自動化によってドリンクを作る速度が上がり、ミスが減るとしている。
このマシンの詳細について、広報担当者は次のように答えている。
「スターバックスは、お客様を中心としたアプローチで飲料のイノベーションに取り組み、スターバックス・エクスペリエンス(Starbucks Experience)の一環として、お客様に喜んでいただける新しい方法を常に模索しています」
だが、このマシンがいつ、どのような形で実用化されるかは不明で、スターバックスがこのマシンの試作機を作ったかどうかも分かっていない。同社は2021年7月にこのマシンの特許を仮出願していた。
スターバックスのバリスタは以前、客はモバイル注文で無制限にドリンクをカスタマイズできることを利用しているとInsiderに語っている。場合によっては、「ただそこにあるから」という理由で、シロップやコーヒーを過剰に追加したとんでもないドリンクを作る客もいるという。
バリスタたちはこのようなカスタマイズが不満な点だとし、多くのバリスタはスターバックスは客がドリンクをカスタマイズできる範囲を制限してほしいとInsiderに話している。ドライブスルーのスタッフたちは、ドリンクを作る時間を厳しく設定されているが、複雑にカスタマイズされたドリンクをオーダーされると時間がかかってしまう。また、カスタマイズされたドリンクを作るのに時間がかかったり、完璧に作られていなかったりすると、失礼な態度を取ること客もいると多くのバリスタが証言している。
しかし、スターバックスは自社のドリンクのカスタマイズ性を低下することは望んでいない。経営陣は、このカスタマイズこそがスターバックスをライバルのコーヒーチェーンと差別化していると述べている。
「お客様のカスタマイズの要望に即座に対応できるのは、世界のコーヒー会社の中で弊社だけです。また、フレーバー、シロップ、ミルク、フォームなどに関して、お客様が望むドリンクを提供するために能力を発揮できるコーヒー会社は弊社の他にありません」とハワード・シュルツ(Howard Schultz)暫定CEOは、スターバックスの2022年11月の決算発表の場で語っている。
また今回同社が申請したマシンの特許には、ドリンク全体の色だけでなく、個々の層の色をカスタマイズする機能も含まれている。
特許出願書には客が自分の服装に合ったドリンクを頼むことができ、それをマシンがマッピングできると記されている。また、スターバックスのアプリまたはデジタルオーダー端末で注文する際には、客が好きな色を選べるオプションも考えられる。これには着ているジャケットの写真など希望する色の入っている写真をアップロードする機能が含まれる可能性がある。
この特許出願書では、スターバックスがどのようにしてドリンクに色をつけるのかについては明らかになっていない。
スターバックスによると、このシステムでは、曜日や時間帯、天気、休日などに応じて色を勧めることもできるという。また、スポーツ会場に置くディスペンサーは、出場チームに応じた色を勧めるなどよりローカライズされた提案をする可能性もある。
その他の機能には、音声認識するマイクや新しいレシピに関する情報を取得するためのWi-Fi接続などがあるとしている。