アマゾン(Amazon)が突如発表した、従業員の「週3日以上オフィス出社義務化」に社内が揺れています。
Reuters
アマゾン(Amazon)は2月17日、従業員の大半に週3日以上のオフィス出社を義務づける指示を出したことを突如公表。社内で混乱や批判の声が強まる中、同社内で強い影響力を持つあるエンジニアがスラック(Slack)の社内チャンネルに投稿して従業員の注目を集めている。
その投稿主とは、アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)のバイスプレジデント(セキュリティ担当)で、卓越したエンジニアとして社内外に知られるポール・ヴィクシー氏だ。
ヴィクシー氏はコンピューターサイエンスの博士号を持ち、2014年にはインターネットの発展と進歩に多大なる貢献を果たした人物の功績を称える「インターネットの殿堂(The Internet Hall of Fame)」入りを果たした。
ビジネス特化SNS「リンクトイン(LinkedIn)」のプロフィールによれば、同氏は2000年代後半に日本の慶應義塾大学で博士号(コンピューターサイエンス専攻)を取得している。
Insiderがスクリーンショットを確認したところ、ヴィクシー氏は社内チャンネルに参加している従業員たちに対し、軽挙妄動に走ることなく、経営陣からの詳細な説明を待つべきと書き込んだ。
ただ、その投稿からは、ヴィクシー氏でさえ出社義務化の方針について全く知らされていなかったこと、もっと言えば「Sチーム」と呼ばれるアマゾン最高幹部の多くも、詳細計画の最終決定には関与していなかった可能性が読み取れる。
以下にその投稿の内容を掲載する。なお、ヴィクシー氏は2021年に自ら創業したファーサイト・セキュリティ(Farsight Security)の売却を経て、2022年3月にAWSにジョインしたばかりだ。
「3月28日は私の入社1周年記念日です。なので、それ以前にアマゾンにどんな企業カルチャーが存在したのか、私は知りません。
ただ、1年間をここで過ごして、経営層の残酷さに触れる機会というのは一度もありませんでした。
さて、私たちはこの事態とどう向き合うべきか?今言えるのは、ジャシーの指示がどんな形で実施されるのか予測したり意見したりするにしても、分別を持って過度に攻撃的にならない範囲でやるべきではないかということです。
出社義務化の実施計画に私は関わっていません。Sチームに詳細が共有される前に発表に至った可能性がありそうです。情報が不足している今日の段階では、最悪の展開を想像して過度に恐れるのはやめませんか」
ヴィクシー氏のこの投稿は、2月17日に新たに開設された社内チャンネル「リモートアドボカシー(Remote Advocacy)」に書き込まれたものだ。
アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)が従業員の多くに週3日以上のオフィス出社を義務付ける方針を発表した後、リモートワーク維持を支持する従業員たちがこのチャンネルに集結。あまりに唐突な方針転換とその発表について、憤懣やるかたない思いをぶちまけている。
同チャンネルには現在1万4000人以上の従業員が参加。経営陣に対する批判にとどまらず、より柔軟な勤務体制の採用を求める嘆願書の作成と署名を準備している模様だ。
ヴィクシー氏の投稿には続きがある。
「詳細は知りません。ただ私としては、顧客、従業員とその家族、株主……あらゆる利害関係者の懸念やニーズ、要望をバランス良く満たすのは、一番簡単なケースですら難しいことで、しかも今回の問題は一番簡単なケースですらない、そんなことを考えています。
私から言えることが何かあるとすれば、先行きを照らして探る松明(たいまつ)と熊手はひとまず手放さないでおこうということ。まだ分からないことだらけですから」
Insiderはアマゾンの広報担当にコメントを求めたが拒否された。