ドキュメント制作の作業をサポートする「Notion AI」がついに正式版としてリリースされた。
出典:Notion
ドキュメンテーションサービス「Notion(ノーション)」は2月23日、同サービス上の新機能「Notion AI」を正式発表した。
Notion AIは2022年11月にプライベートアルファ版がリリース。全世界で200万人が「ウェイティングリスト」に登録していた。今回の正式版はすでに、全ユーザーに対してリリース済みになっている。初回20回までは無料で利用できる。
利用料金は、月額10ドル(約1350円)、年間契約の場合は月額8ドル(約1080円)のオプションとなる。現在、無料プランのユーザーも料金さえ払えば回数無制限で利用できる。
ChatGPTなど生成系AIが話題の昨今だが、ドキュメンテーションツールであるNotionのAIはどんな特徴があるのか、正式版で確認してみた。
アルファ版ユーザーがAIに期待したのは「著者ではなく編集者」
出典:Notion
Notion AIの機能は大きく分けて3つある。
いずれもNotionのエディター上で、行の最初でスペースキーを押すか、任意の文字列(ブロック)を選択することで「AIへの依頼」が開始できる。
- 生産性向上:「ノート全体や選択したテキストの要約」「選択したテキストなどからのアクションアイテム(いわゆるToDo)を抽出する」など
- 品質向上:「翻訳する(日本語を含め14言語に対応)」「スペルと文法を修正する」「短くする、長くする」「よりシンプルな表現にする」など
- アイデア創出:「AIにテーマを与えてブレインストーミングをさせる」「プレスリリースを出す」「文章内に含まれる長所と短所を分類してリスト化する」「営業メールを作る」など
Notion AIは「そのページ内の情報」や「誰と作業しているか」という情報を持っており、ある意味で「ユーザーの業務内容」を一部理解しているとも言える。
そのためいずれの機能も、Notion上でよく使う、文章の作成や情報の整理といった作業をサポートするものになっている。
Notion AIに「文章に含まれるメリットとデメリットを表にまとめる」ように指示をしているところ。
出典:Notion
例えば、マイクロソフトのBingのAIについて、マイクロソフトはプレスリリースの中で「copilot(副操縦士)」という言葉を使っていた。
一方で、Notionのゼネラルマネージャー 日本担当の西勝清氏によると「(Notion AIの場合は)ユーザーが筆者なら、AIは編集者」としての役割で開発されたと言う。
ただ、西氏によると、開発当初は「著者としての役割のAI」として開発されていたが、プライベートアルファ版を利用した100万人の動向を探ると、ユーザーはAIに対し、著者ではなく、「(自身の書いた)文章をよりよくしてくれる存在であることを期待していた」という。
そのため、プライベートアルファ版ローンチ当初の仕様を変更し、直近ではAIに作業内容を依頼するような「会話型のインターフェイス」に変更されている。
「検索」用途には向かない
オンラインで取材に応じるNotion ゼネラルマネージャー 日本担当の西勝清氏。
画像:筆者によるスクリーンショット
Notion AIに向いていないこともある。わかりやすいのは、特に前述のBingが得意とするような「検索」「調査」などの作業だ。
Notion広報も「参考資料ツールや回答ボットなど、調査の代替を目的としたものではない」とし、「会議のメモをまとめたり、ブレーンストーミングを始めたりといったワークフローを効率化し、重要なことに集中できるようにするために最も効果的」としている。
また、現状では実行したページ以外の情報も参照していない。そのため、Notion内での「探索」やページをまたいでの要約生成などもできない。
ただしこの点について、Notionは今後「ワークスペース全体」を参照できるように拡張する計画がある。
また、西氏は今後のAI機能の展開について「可能性」を述べた。
「Notionはドキュメント、ナレッジ、Wikiとして、情報や知識が溜まっている。Wikiでの利用では(AIが)情報を探す、アシストすることは(今後の)可能性としてありうる」(西氏)
日本語の品質も「十分」、入力データは「再学習には使われない」
OpenAIの技術を活用したサービスが複数出てきているが、Notion AIについては「複数の言語モデル」を使っているという。
撮影:小林優多郎
noteや弁護士ドットコムなどのAI機能は、OpenAIの大規模言語モデルを用いて開発したと明言されている。
今回のNotion AIについては「(自社開発ではない)複数の言語モデルパートナーと連携している」(西氏)とし、明確な企業名などは非開示となっている。
元の言語モデル次第では「日本語の精度」と「プライバシー/セキュリティー」の問題が気になるところだ。
例えば、前述OpenAIが公開しているChatGPTの場合、アメリカに開発拠点があることと、全世界的に使われている言語(学習データが豊富)ということで、「日本語より英語の方が回答精度が高い」という評価がSNSなどでは上がっている。
これについて、Notion広報は「日本語でAI利用時の品質が十分に良いものであると判断しリリースしています」とコメントしつつ、「今後、より多くのフィードバックを集め、改善を続けていきます」とも回答した。
また、ChatGPTの場合、研究用途での公開となっているため、入力した情報は再学習に利用される。そのため、一部の企業では業務情報をChatGPTに入力しないように呼びかけている。
Notionが扱う情報には個人情報もあれば、社内で業務利用をしていれば機密情報も多分に含まれている。意図せぬ形で情報が外部流出する可能性はないのか。
この懸念に対し西氏は「(連携先の)言語モデルにデータを送信する際は暗号化されている。さらに、再学習には使われない仕様になっている」と、Notionがユーザープライバシーを優先している姿勢を強調した。