アマゾンの小売部門のCEOであるダグ・ヘリントン。
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アマゾンの配送スピードはパンデミック以降著しく低下し、多くの顧客が荷物の到着まで数日、時には数週間も待たされている。
しかし、同社の小売部門トップのダグ・ヘリントン(Doug Herrington)は2023年に入り、過去にないくらい配送をスピードを迅速化するため、劇的な改善策を考えている。
Insiderは、2023年2月中旬に開かれたアマゾンの全体会議の音源を入手した。この会議でヘリントンは、コスト構造や在庫管理の仕方などさまざまな点を見直すことで配送スピードの改善が可能だとしている。
「今年はわれわれにとって、いくつかの『初めて』を経験する年になりそうです。過去にないほどサービスコストを下げ、過去にないほどお客様に早く商品をお届けできるようにします」
ヘリントンの大胆な約束は、ここ数年出荷速度の遅さについてアマゾンの顧客から繰り返し苦情が寄せられているのを受けたものだ。ソーシャルメディア上で、アマゾンの顧客がこのような指摘をしているのをよく見かける。
2022年に行われた元従業員による非公式の調査では、アマゾンはプライム会員に対して2日以内の配達を謳っているが、実際には通常5日かかっていることが分かったという。この、プライム会員向けの2日配送保証をめぐり、アマゾンは現在、「虚偽広告」と「過失による不当表示」を理由に連邦裁判所で集団訴訟を起こされている。
そこでヘリントンは、コロナ禍以来、労働と物流の問題で大きな打撃を被ったアマゾンの配送ネットワーク全体の効率化を目指していることを示唆した。アマゾンのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)CEOは2月初め、2022年の事業拡大計画を縮小した後、輸送網のコストと効率の最適化に注力していると述べている。
アマゾンの広報担当者はInsiderの問い合わせに対してメールで回答し、同社の2022年の一般的な配送スピードは前年よりも改善され、2023年もその傾向が続くとしている。
「プライム配送を遅延なくスピーディーにお届けする取り組みは、2021年より2022年、2022年より2023年と改善されています」 (広報担当者)
2つの大きな最優先事項
ヘリントンは2月中旬の会議の席で、配送速度の向上は2023年にアマゾンの小売事業が取り組むべき「2つの最優先事項」の1つであると語った。もう1つは、商品の販売・配送コストの削減だ。
配送スピードは、顧客の利便性にとって「最も重要で代表的なもの」であり、買い物客は注文品が早く届くと買いやすくなり、アマゾンにとっても「さらなる成長を促す」ものだと、ヘリントンは言う。
そのため、2023年には、同社の幅広い倉庫ネットワークをさらに活用するために労力を惜しまないという。同社はアメリカ国内に数百の倉庫を持つことで、人口の多い大都市圏の近くに商品を保管できるようになり、ひいては配送スピードの向上とコスト削減が図れるようになった。
現在アマゾンは、販売者やベンダーと協力して各地域で保管する在庫を増やし、商品確保に努めているという。また、社内の複数のチームと協力し、アマゾンのウェブサイト上の検索で商品を探しやすくする施策も進めている。これが実現すれば、顧客は自分に近い場所に在庫があるか、どの商品が最短で届きそうかを見つけられるようになる。これらの施策により、アマゾンの顧客は「最短・最安で」商品を手に入れることができるようになる、とへリントンは言う。
「ここ数年で構築してきた配送のしくみを使い、フルフィルメントセンターと顧客をどう結びつけるかを改めて考えることによって、それを可能にするつもりです」(へリントン)
ヘリントンは、2023年の2つの優先事項である配送の迅速化とコスト削減は、将来のアマゾンの成功に不可欠であると言う。コスト削減は、顧客に低価格の商品を提供でき、販売者がアマゾンで売る商品の増加にもつながるため重要だ。また、販売と配送にかかるコストが下がれば、配送スピード向上に向けて追加投資を行えるようになると同氏は付け加えた。
「この2つを実施することで、今年に限らず今後数年間投資を続け、品揃え、価格、利便性を改善し続けることができるのです」(ヘリントン)