個人投資家とは? プロとは異なり、自分の資産を投資するアマチュア投資家

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個人投資家は個人の資産で取引し、より感情的に市場へ投資する。

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  • 個人投資家とは、株式市場にアマチュアとして参加する個人のことをいう。
  • 機関投資家と比べて個人投資家は短期思考の傾向があり、株価に与える影響は小さい。
  • 携帯の取引アプリや手数料の引き下げで敷居が下がり、より多くの人が株式市場に参加する道が開けた。

規則、税金、ボラティリティ(変動率)など投資に関して知らなければならないことはたくさんある。自分の資産を個人証券口座で運用している人は、個人投資家と見なされる。

個人投資家について知っておくべきことや、彼らがどのように株式市場で行動しているのかを説明しよう。

個人投資家とは何か?

個人投資家とはアマチュア投資家のことで、「平均的な小規模投資家」だと、ナテクシス・インベストメント・マネージャーズ・ソリューション(Natixis Investment Managers Solution)のポートフォリオ・マネージャーで主席ポートフォリオ・ストラテジストのジャック・ジャナシーウィック氏は説明する。個人投資家は通常、投資以外にも主な収入源を持つ。

個人投資家は知識も所得水準もまちまちだが、いくつか重要な特色がある。何より重要なのは、個人投資家は自分の資産を投資しており、プロ投資家よりも取引額がずっと小さいことだ。顧客に代わって投資判断を下す証券会社やヘッジファンドとは異なり、個人投資家はポートフォリオのわずかな変動でも、資産に直接影響を受ける。

株式市場の変動が自分の純資産に直接関係してくるため、個人投資家は損失回避(利益追求の意識よりも資産を失う恐怖の方が大きいこと)になりがちだ。こうした損失回避の結果、「市場変動率(ボラティリティ)が高い時に、機関投資家が慎重に考えて行動するのに対して、個人投資家は非合理的な投資判断を下す可能性がある」と、ザ・バッド・インベストメント・カンパニー(The BAD Investment Company)の創業者で社長のトミー・マンクーゾ氏は言う。

また、米国の場合、証券取引委員会(SEC)が個人投資家保護の規制外商品にも投資できる十分な知識があると判断した個人投資家は、「有価証券に対する投資に係る専門的知識および経験を有する者」である適格投資家として認定され、個人投資家ではなくなる(日本の場合は金融庁が認定)。

個人投資家は市場にどのような影響を与えるか?

一般的に、個人投資家は市場に次のような影響を与える。1つ目に、個人投資家は市場センチメントを左右する。そうしたセンチメントが取引活動や価格変動を通じて金融市場の基調を決定づけるのだ。

2つ目に、個人投資家はボラティリティを高めることがある。携帯取引アプリの普及で市場へのアクセスが高まったことに加え、個人投資家の感情的で短期的な取引パターンが相まって、市場に対する反応が早くなりボラティリティが上昇した。

マンキューゾ氏は、「個人投資家が投稿サイトのレディット(Reddit)の投資掲示板を使って、個別株を大きく動かせることを、市場は目の当たりにした」と言う。だが、こうしたショートスクイーズ(空売りしている株式の価格が上昇し、売り方が買い戻しを強いられ株価が急騰すること)の背後にある機関投資家の資金がなければ、株価は上がるのと同じくらい急速に下落するだろう。

3つ目に個人投資家は、企業利益と株価のパフォーマンスとを切り離して考えることがある。ペンシルバニア大学ウォートンビジネススクールの調査によると、個人投資家は企業の決算発表に素早く反応する。決算発表自体が良くても悪くても、決算発表で株価が上昇する傾向にあり、したがって企業決算は依然ほどリターンと密接に関連していない。またこの調査では、いったん株価が上昇すると、決算後も株価が高止まりすることが分かった。

だが、個人投資家が市場に与える影響は、機関投資家に比べればなお限定的だとジャナシーウィック氏は言う。

「個人投資家は市場の周辺で影響を与えるにすぎず、相場を揺るがす主な原動力ではない」

個人投資家 vs 機関投資家

個人投資家と機関投資家の最も顕著な違いは知識水準の差だが、両者を分かつ主な要因は他にもいくつかある。

個人投資家 機関投資家
個人投資家は自分の資産を取引し、そのため投資に感情的になりやすい。 機関投資家はヘッジファンド・マネージャーや保険会社のように他者のために取引することが多い。
個人投資家とみなされるための最低投資要件はない。 FINRAでは機関投資家を、銀行や投資会社、登録投資代理人、資産が5,000万ドル以上の個人と定義している。
個人投資家は、比較的少額を運用し、市場に目立った影響を与えない。 機関投資家は数百万ドルもの資金を動かし、株価に影響を与える。
短期的に話題の銘柄に投資する可能性が高い。 一般的に長期投資戦略を公約する。



個人投資家の変化

2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し始め、個人投資家層に目覚ましい変化をもたらした。証券会社のシュワブ(Schwab)によると、2020年以前、投資家の平均年齢は48歳だった。しかし2020年に新たに口座を開設した人の66%が45歳以下で、22%が18~29歳だった。

手数料無料や端株(1株に満たない端数株式)取引をうたう携帯取引アプリの台頭は、証券会社と比べて小口投資を行う新たな若い層の背中を押した。投資アプリのロビンフッド(Robinhood)の平均口座残高は4800ドル(約67万円)である一方、伝統的な証券会社であるシュワブの個人年金口座(Personal Choice Retirement Account® (PCRA))の平均残高は33万1664ドル(約4600万円)だ。

投資がしやすくなった要因は、オンラインや口コミでより多くの投資情報が共有できるようになったことが大きいと、マンキューゾ氏は指摘する。

「8年ほど前にこの事業に足を踏み入れた時は、同僚や友達と意味のある会話はあまりできなかった。だが今では、投資についてほとんど毎日話している気がする」

しかし、投資がしやすくなったことで、市場のボラティリティも上がった。具体的に言うと、SNSなどで大きく注目が集まり、短期間で急激に株価が上昇する「ミーム株」が登場したのである。最も有名なのは、2021年初めに株価が急騰したゲームストップ株だ。

上述のレディットのユーザーがゲームストップ株を大量に購入し、この株が引き続き下落すると予想し、空売りを仕掛けていた機関投資家が買い戻しを余儀なくされたのだ。上昇前は4ドルほどだった同社株は、2021年1月27日に一時1株325ドルをつけた。

ジャナシーウィック氏は言う。

「個人投資家市場は確かに面白くなっているし、参加者も増えてきている。それは悪い事ではないだろう。市場参加のハードルは確実に下がっており、コストも低下している。その大半は、市場への参加が増えてきた若い個人投資家をターゲットにしているのだ」

投資家層の拡大、特に若い大学生世代の投資家が増える最大のメリットは、こうした投資家層が今投資をしているかどうかではなく、今後何年にもわたって投資を行うことだ。

若い投資家層は市場を動かす存在になっていくだろうか? いや、そんなことはなかろう。だが、口座開設をすれば、少なくとも一定レベルの知識が養われる。

マンクーゾ氏は言う。

「今は多くの人が若い頃から投資を始めているので、長期投資に関してある種の投資知識を持つ人が今後増えていくだろう」

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