「女性の雇用が増えると、若い男性ほど割を食う」は本当? 彼氏が放った一言に何と返すべきか

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Metamorworks/Shutterstock

今回は、読者の方からのご相談にお答えします。

相談者は女子大学生。「女性活躍推進」が叫ばれ、女性を積極採用する企業が増えている現状に対し、複雑な気持ちを抱えているそうです。


Aさん

Aさん

大学生です。付き合っている同級生の彼とは同じ就職先を志望しています。その会社は少し前に「女性の雇用を増やす」と宣言していたのですが、先日彼が酔っ払った時に、もしも自分(彼)じゃなくて私が内定をもらったらモヤモヤする、と言われました。

もともと女性の割合が少なすぎるんだから女性が優先的に採用されるのは当然でしょ、とその時は思ったのですが、よく考えてみたら、その会社にすでに在籍しているベテラン男性に「男性枠」を占められていたら、これから入ってくる若い世代の男性こそ割を食ってしまいますよね。女性を優先的に雇用する企業について、どう考えを整理したらいいのでしょうか。
(Aさん/20代前半/女性/学生)


Aさんが彼氏さんに対して申し訳ない気持ちを抱く必要はまったくありません。

彼氏さんが「女性が得していて男性は損だ。不公平だ」と捉えているとしたら、それは考え違いであることを、まずお伝えしておきましょう。

これまでは、立場が逆でした。女性が損をする立場が長く続き、近年ようやくその不公平が正されつつあるのです。

政府が「女性活躍推進」を打ち出す何年も前、就職先として人気が高い大手企業の経営層の方が、こんなことを仰っていました。

「新卒採用の選考の際、応募学生を優秀な順に並べると、上位8割が女性なんだ。でも女性ばかり採用したら組織のバランスが崩れるから、結果的には男女半々の割合に調整して採用するんだよ」

これはその企業に限った話ではなく、多くの企業から同じような声を聞きました。新卒採用においては、女子学生のほうが高く評価される傾向が強かったのです。

これはつまり、本来なら採用されるべき優秀な女性が落とされ、その枠に「下駄を履かせてもらった」男性が採用されていたということですね。

採用の男女比は、いびつな状態から健全化している

もちろん、長年にわたり男性中心・男性優先の採用が根付いていた企業も多数あります。

しかし近年、世界的に「ダイバーシティ(多様性)」が重視されるようになりました。

加えて、労働人口が減少していく日本においては、中長期的に女性の労働力を活かしていかなければ衰退を免れない状況に直面しています。

そこで、これまで男性中心の組織を築いてきた企業も、慌てて「活躍する女性のロールモデル」を生み出すべく採用を強化し、ダイバーシティの風土へ転換していこうと動き出しているのです。

ですから、Aさんの彼氏さんは「女性というだけで採用枠が増えるなんてずるい」と思っているかもしれませんが、もともと割を食っていたのは女性。それが是正されて健全な状態になりつつあるのが今の状況です。

つまり、「10年前の新卒男性」と比べると不利になっているのは事実ですが、女性に対して不利だと思うのはお門違いですよね。

森本さん語録1

それに、女性の採用に注力している企業も、結果的には男女半々の採用に落ち着いているケースが多いですよ。

やはり女性は「出産・育児」というライフイベントを迎える時期に制約がかかりますし、女性に多いと言われる「インポスターシンドローム」を懸念する人事担当者も少なくありません。

インポスターシンドロームとは自分を過小評価する心理傾向のことで、これにより管理職昇進を受け入れない女性も少なくないようです。

こうしたことから、女性中心の組織になると、それはそれでマネジメントが機能しなくなるリスクが課題視され、男女のバランスをとった採用・組織編成に決着していることが多いのです。

「ベテラン男性」と席を取り合うことはない

Aさんが考えていることで、もう一つ実情と異なるポイントがあります。

「その会社にすでに在籍しているベテラン男性に『男性枠』を占められていたら、これから入ってくる若い世代の男性こそ割を食ってしまいますよね」

こう仰っていますが、そんなことはありません。むしろ逆。ベテラン男性は社内で居場所を失いつつあります。

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