ウォーレン・バフェット
Reuters/Rick Wilking
- ウォーレン・バフェットは2月25日にバークシャー・ハサウェイの株主に向けた年次書簡を発表した。
- この億万長者の投資家は、コカ・コーラやアメリカン・エキスプレスに長年にわたって投資をし、それが利益を上げていることに手ごたえを感じている。
- さらにバークシャーの自社株買いと納税について述べたほか、会社の利益を操作する経営者を非難した。
ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)は、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)の株主に向けた年次書簡を2023年2月25日に発表した。それは誇りと反省に満ちたものだった。
著名な投資家でありバークシャーのCEOであるバフェットは、書簡の中で自身のキャリアにおいて最も成功した取り引きについて語り、自社株買いと納税について擁護する一方で、ウォール街の期待に応えるために会社の利益を操作する経営者を非難した。
「我々が満足のいく成果を上げているのは、これまでにおよそ12の本当に良い決断をしたことの産物であり、それは5年に一度の割合で起きている」とよい投資機会を得たことについて記した。
バークシャーが保有する約3000億ドル(約41兆円)の株式ポートフォリオの要となっているのは、コカ・コーラ(Coca-Cola)とアメリカン・エキスプレス(American Express)への投資だという。両社とも1990年代にバークシャーからそれぞれ13億ドルの投資を受け、2022年末にはその評価額がコカ・コーラは250億ドル(約3兆4000億円)、アメリカン・エキスプレスは220億ドル(約3兆円)になっている。
そしてバークシャーが2022年に両社から受け取った配当は、コカコーラから7億400万ドル(約960億円)、アメリカン・エキスプレスから3億200万ドル(約411億円)だった。1994年のコカ・コーラからの配当が7500万ドル、1995年のアメリカン・エキスプレスからの配当が4100万ドルだったことからすると確実に成長している。
バフェットがバークシャーの経営に携わってきた約60年の間、彼の投資の大部分は「まあまあ」であり、いくつかの失敗は「非常に大きな幸運」によって軽減されてきたという。そして投資家に対する教訓として次のように記した。
「花が咲くと、雑草はその存在意義を失って枯れていく。一握りの勝者が時間をかけてすばらしいことを成し遂げる。そして、早くから始めることは90代まで生きることにも役立つのだ」
2022年、アメリカ政府は自社株買いに1%の税金を課すとし、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領がその利率の4%への引き上げも支持するとした際、92歳のバフェットは自社株買いを擁護する発言もしている。
バフェットと彼のチームはバークシャー株を買い戻すために、2022年には約80億ドル(約1兆900億円)、2021年には過去最高の270億ドル(約3兆6800億円)、2020年には約250億ドル(約3兆4000億円)を投じており、バークシャーは近年のアメリカで最大規模の自社株買いをする企業となっている。
「すべての自社株買いが株主や国にとって有害である一方、CEOにとっては有益だと言う人は、経済音痴か、口先だけの扇動家だ」とバフェットは記している。
さらに、アナリストの予想を上回るような財務内容を誇示する企業経営者たちを非難した。
「あのやり方は最低だ。数字を操るのに才能はいらない。必要なのは、人を欺こうとする深い欲望だけだ。あるCEOは、自分のトリックを『大胆な想像に基づいた会計』と表現していた。これは資本主義の恥ずべき行為の1つになっている」
バフェットは書簡の中で、2021年までの10年間にアメリカ財務省が徴収した32兆ドル(約4360兆円)の税金のうち、バークシャーが約0.1%を拠出している事実を強調した。そして、事業繁栄の土台となっている政府に対して、資金供給を積極的に行う意思があるとも述べた。
「バークシャーでは、今後10年でさらに税金を払うことを望み、期待している。我々はこの国に少なからず借りがある。アメリカのダイナミズムのおかげでバークシャーが成し遂げられたことは多く、バークシャーはその貢献を常に必要としている。我々はアメリカの追い風を頼りにしており、その風は時折弱まることもあるが、その推進力は常に戻ってくる」
さらにバフェットは、保守的で長期志向の経営スタイルや、バークシャーが自身の死後も長く存続することを望むといったことに言及している。
「また、金融パニックやこれまでに起きたことのない保険金の損失など、困難な時期になった場合、望まない出費が必要になるような行動は避けることも重要だ。バークシャーに、ゴールはない」と記した。