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大損につながりかねない、投資にまつわる5つの誤解

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経験則は便利だが、個別の財政状況に対するアドバイスにはならないこともある。

filadendron/Getty Images

  • 投資にまつわる一般的な誤解を信じてしまうと、自分の財産にネガティブに作用することがある。
  • 数十年前に真実だったことが、技術や経済が変化した今も真実だとは限らない。
  • 経験則は便利だが、個別の財政状況に対するアドバイスにはならないことも、意識しておこう。

これまで何十年にもわたり、投資は難しく、富裕層だけのもので、普通の人々にはあまりにも縁遠いと考えられてきた。しかし、投資アプリや投資インフルエンサーが急増し、投資が身近でわかりやすいものになっている。そのため、冒頭のような考えも人々の頭の中から消え去りつつあるようだ。

そのような変化が生じているにもかかわらず、ファイナンスの世界には今もまだ有害な誤解が存在している。

誤解1:投資は金持ちだけのもの

「金儲けするには金がいる」という考えが、この誤解がいまだに生き残っている最大の理由だろう。

確かに、投資をするにはある程度の資本が必要だ。しかし、過去とは違って、もはや投資するのに何十万円もの資産が必要とされることはなくなった。「人々は『投資』と聞くと株選びやデイトレード、あるいは巨額の出費を想像する」と、ファイナンシャルプランニングアプリ「フィアレス・ファイナンス(Fearless Finance)」でCFP®(公認投資コンサルタント)として活動するエリザベス・ペニントン氏は語る。「だが、確定拠出年金に20ドル(約2000円)を振り込むのも投資なのだ」

かつて、投資会社はファイナンシャルアドバイザーの助けを求めるクライアントに5000ドルから25万ドル(約50万円から約2500万円)を要求し、人々の不興を買った。それに加えて、株を買おうとした人は、会社の価値に応じて数百ドル(数万円)から場合によっては数千ドル(数十万円)することもあった株を一株まるまる買わなければならなかった。

だが、今はそうではない。投資サービスに支払う手数料も最低額も、ここ数年間で劇的なまでに小さくなった。今では証券会社の多くが端株を扱っていて、投資家は希望銘柄に5ドル(約500円)から投資できるようになった。その場合も、利率は多額を投資した人と同じだ。

ヒント:端株主といえども、全株主と同じ率の利益と損益を受け取り、証券会社によっては、投票権などといった恩恵も全株主と同等になる。当該企業が配当を支払う場合、端株主にもそれを受け取る権利がある。

誤解2:資産は株式市場よりも現金として手元に置いておくほうが安全

市場の変動が激しい時期は、預金口座に現金を置くほうが安全に感じられる。市場での出来事によって投資口座の残高が急減するのを避けるために、実際にそうする人が多い。貯蓄した場合、(自分で引き出した場合は除いて)その名目価値が急激に減ることはないが、その貯蓄額が有する購買力はインフレーションが起これば低下してしまう。

たとえば、2001年の100ドルは2021年では63ドルの価値しかない。同じ期間、100ドルをS&P 500に投資していた場合、2021年には534ドルになっていた。これは、経済学では「機会費用」と呼ばれている。この例の場合、現金を投資に回さなかったことで295ドルの損をした計算になる。

フィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)で新規顧客部門の上級副社長を務めるケリー・ラノン氏はこう説明する。「現金のすべてを低金利の銀行口座に置いていると、インフレ率が金利を上回るリスクが生じる。だが、投資した場合は、そのお金があなたのためにしっかりと働いてくれて、時間とともに価値を増す可能性がある」

誤解3:借金を返済してから投資を始めるべき

「持ち家か賃貸か」というテーマと並んで、個人の資産繰りで最も熱く議論されているのが、「借金を返済するか投資をするか」というテーマだろう。「この考えはほぼ完全に間違いだ」と、ペニントン氏は言う。「借金がなくなるまで投資を待てというアドバイスは、人々の将来における金銭的な安全を著しく危険にさらす恐れがある」

この議論がなくならないのは、学生ローンの負担が何百万ものアメリカ人の家計を圧迫しているからだ。資金が少ないと、どの決断も重大事になる。借金の返済に集中すれば、借金なしの生活を実現してキャッシュフローに融通が利くようになる。一方、投資をすれば全体的な純資産が増え、定年退職後の生活が楽になる。

この問題について検討するときは、返済する借金の種類と額が非常に重要になる。しかし同時に、機会費用について考えるのも大切なことだ。たとえば、学生ローンを返済するのに10年かかる場合、10年にわたって複利を取り逃すことになる。そのため、退職後の目標を達成するのはさらに難しくなる。

誤解4:株価は上がり続ける

過去の利益を理由に、株式市場を信じすぎるのは危険だ。投資界隈で「以前の結果と将来のリターンは関係ない」とよく言われるのはそのためだ。かつて注目を集めたキャシー・ウッド氏が率いるARKイノベーションETF(ARKK)の投資家たちも、この事実を身をもって学んだ。

2020年、同ファンドは150%を超える利益を上げた。ところが2021年はおよそ32%を失った。株式市場は損失よりも利益のほうが頻繁であるというのは事実だ。しかし、だからといっていつも上向きなわけではない。特に、短期的に見た場合は下落に転じることも多い。シュワブ金融研究センター(Schwab Center for Financial Researchによると、2000年から2019年の20年間のうち11年で相場の反発が生じた。総時間の55%だ。

注:市場の反発とは株価の10%以上20%未満の下落のことを指し、20%を超える場合は下げ相場と呼ばれる。

誤解5:投資はギャンブルみたいなもの

投資は、金銭的利益を得るために資産を投じる行為と定義できる。投資もギャンブルも、ある程度のリスクが伴い、確実な利益は保証されていないという意味で、表面的には同じに見えるかもしれない。しかし、詳しく見てみると、両者のあいだにはいくつかの大きな違いがある。

投資は、投資家と企業の両方に利となるように設計されている。会社は公開市場を利用して事業を成長させ、その成長が投資家の富を増やすからだ。会社がうまくやれば、投資家にも恩恵がある。ギャンブルはその反対で、一方が勝ち、他方が負けるようになっている。ギャンブラーが負けるとカジノが儲かり、ギャンブラーが勝つとカジノは損をする。

まとめ

経験則は、正しい方向へ進む際に役に立つシンプルで効果的なツールだと言えるが、どの状況でも有効なわけではない。経済的な疑問に対して、自分の状況にあった答えを必要としているなら、専門家に相談してみよう。

ペニントン氏はこう締めくくった。「お金持ちでなくても専門的なアドバイスが得られるという事実を、みんなに知ってもらいたいと思う。時間給として手数料だけを求めるプランナーを見つければ、何かを売りつけられることを心配せずに、疑問に対する答えが手に入るだろう」。

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