一般的に言えば、現金が必要になったときに備えて資産の一部を流動資産として所有しておくのがよいだろう。
レイチェル・メンデルソン/Insider
- 流動資産とは、簡単に現金に換えられる資産である。
- 流動資産には、現金、債券、譲渡性預金(CD)などがある。
- 不動産や収集品などは、取引や売却に時間と労力がかかるため、流動性の低い資産となる。
ポートフォリオや資産に関する話の中で、「流動性」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。流動性とは、資産をどれだけ早く現金に換えられるかを意味する。つまり、流動性の高い資産は簡単に売却や取引ができるということだ。
流動性は、個人や企業がどれほどたやすく現金を手に入れられるかを示す指標になる。それが投資資産であれ、収集品であれ、どこかの金庫に保管されている貴金属であれ、その価値を「流動化」、つまり現金化できることが容易であればあるほど流動性は高くなる。
「流動資産とは、それで来月の家賃を払えるようなものだ」と、公認ファイナンシャルプランナーで、金融教育プログラムのマニー・ヴィークル(Money Vehicle)を運営する金融教育者ジェディディア・コリンズ氏は言う。「もっとシンプルに言えば、すぐに現金化できるものといえる」
流動性の高さは資産の種類によって異なるが、銀行口座の預金、譲渡性預金(CD)、特定の種類の米国債などが流動資産に区分されることが多い。
流動資産の特徴
資産が流動資産として扱われるためには、以下の条件を満たす必要がある。
- 既存の安定した市場に存在するか、そこで取引されている。つまり、その資産の買い手と売り手が存在し、常に(あるいはほとんど常に)一定の価格での需要がある。常に買い手がいれば売却や取引が容易なので流動性が高くなる。
- すぐに現金化できる。売却が難しく時間がかかる資産ほど流動性が低く、「非流動」資産とも呼ばれる。非流動資産とは現金化するために少なくともいくらかの手間を要するものだと、コリンズ氏は言う。「非流動資産とは、自分で買い手を見つける必要があるものだ。どこにでも買ってくれる人がいるわけでない資産のことを指す」
- 売却や取引のプロセスが安全かつシンプルであることも、真の意味での流動性においては不可欠だ。例えば、銀行口座に預けている現金について考えてみよう。その現金はATMに行くだけで簡単に引き出せるので流動資産とみなされる。そして、銀行にはあなたの資金を安全に保管する責任があるので、その預金は保護されてもいる。株式や上場投資信託(ETF)なども同様だ。株式は常に買おうとする人がいるので、簡単に取引して現金化できる。
最後に、流動資産の大半は投資家が最も一般的に所有する種類の資産だとも言える。つまり、株式や国債などの売却しやすい有価証券だ。もちろん、誰もがいつでも使える現金も流動資産に当てはまる。
アナリストが企業や組織の流動性を調べるときには、支払い能力比率と流動性比率をもとに短期および長期の債務履行能力を判断する。これが投資や支出に関する意思決定の指針となる。
そこで使用される比率はいくつもあるが、最も一般的なのは当座比率と流動比率の2つだ。
- 当座比率は、企業が所有するうち最も流動性の高い資産を考慮して短期的な(1年以内)支払い能力を計算する指標である。
- 流動比率も企業の短期的な支払い能力を判断するための指標だが、こちらの方がより多くの変数を計算に組み込む。流動資産が負債を上回っているかどうかを計算するという点では当座比率と同じだ。
これらの比率についてだけでも、本来知るべきことはまだたくさんある。しかし、通常これらは企業に対して使われるものであり、必ずしも個人の資産の流動性を計算するものではない。
流動資産の例
資産にはさまざまな種類があり、流動性はそれぞれで幅広く異なる。さらに、同じ種類の資産でも流動性は同じでない。例えば、ある不動産は他の不動産より流動性が高いかもしれない。
Yuqing Liu/Business Insider
以下に流動資産の種類をいくつか紹介する。
- 現金および現金同等物:現金ほど流動性の高いものはない。現金はあらゆるものの購入に利用でき、「流動化」するための取引は不要だ。CDなどの現金同等物もこのカテゴリーに入るが、現金化には手数料がかかる場合もある。
- 米国財務省短期証券および長期証券:これらは米国政府が発行する国債である。常に市場に買い手がいるため、最も流動性が高い種類の債券だ。
- 株式:すでに述べたとおり、株式はほぼいつでもすぐに現金で売買できるので流動性が高い。もちろん、現金が口座に入るまでいくらか時間はかかり、売却損が出ることもある。それでも、現金化の速さと容易さゆえ株式もこのリストに入る。
- 債券:株式など他の有価証券と同様、市場が開いている限りいつでも売却して現金化できる。
- 投資信託:投資信託は1日に1度市場が閉まるときにしか取引されないので他の有価証券ほど流動的ではないが、現金化は比較的速く簡単だ。
- ETF:さまざまな株式をセット売りする投資商品のバスケットと表現するのが最も適切かもしれないETFも、他の有価証券と同じように取引所で売買される。簡単に取引できることから流動性は高い。
- 外貨:外貨も現金なので流動性は高い。円に交換する手間はかかるが、流動性という面では保有できる資産のうち最も流動的なものの1つである。
- 貴金属:金、銀、プラチナなどの貴金属は売却により現金化しやすいので流動性が高い。「市場」にアクセスするためには地元の質屋などに行く必要があるかもしれないが、流動性においては条件を満たすものが多い。
非流動資産の例
逆に、非流動的な資産とは簡単に現金化できない資産を意味する。売却に時間がかかったり、買い手の多い活気ある市場がなかったりする資産だ。つまり、以下の資産をすぐに売って現金を手に入れるというのは難しいのだ。
- 不動産:不動産の価値は大きいが、売却には時間がかかるし簡単でもない。アメリカで一戸建てを売却するのには平均でおよそ2カ月かかることからも、不動産は非流動資産となる。
- 収集品:野球カードから絵画まで、ほぼどんなものでも収集品になりうる。これらの資産にも価値はあるかもしれないが、特定の市場に依存するものは買い手を見つけづらく、価値の評価が難しい場合もある。この理由から収集品は非流動的とみなされる。
- ストックオプション:このリストの他の項目と同様、ストックオプションにも価値はあるが、譲渡や現金化は簡単ではない。
- プライベートエクイティ:あなたは企業や組織の未公開株を持っているだろうか。これは「エクイティ(自己資本)」と呼ばれるものに属し、いくらかの価値はあるだろうが、その価値を実際に利用するのは容易ではない。
- 無形資産:実態が存在しないその性質上、無形資産は定義が難しいが、知的財産などがここに含まれる。その特殊性や、すぐに現金に換えられる市場がないことから、無形資産は非流動的だと考えらる。
まとめ
流動資産は素早く容易に現金を手に入れる手段となる。これらは売却が簡単で、その価値に応じた現金にすぐ換えられるが、対して非流動資産は売却や取引に時間と労力がかかる。一般的に言えば、現金が必要になったときに備えて資産の一部を流動資産として所有しておくのがよいだろう。
具体的にどれくらいの流動資産を持つべきか? 所有している流動資産を売却した場合に生活を維持しながらすべての借金を返していける期間を考えて、3年分の資金に値する分を持っておくことを目標にしよう。「大事なのは流動資産がポートフォリオに占める割合ではない。目的はあなたの生活を守ることだ」とコリンズ氏は言う。