「City-Tech.Tokyo(シティテック東京)」で登壇する東京都政策企画局の藤崎哲朗氏(2023年2月27日)。
撮影:吉川慧
スタートアップ企業などを支援する初開催のグローバルイベント「City-Tech.Tokyo(シティテック東京)」が2月27日〜28日の2日間、東京国際フォーラムで開かれた。
イベントを主導する東京都もブースを設置し、都の担当者が登壇。スタートアップ企業との協業を念頭に、災害に強い都市づくりのため策定した政策目標や都の水道局・下水道局がもつ技術力を紹介するセッションが実施された。
出典:東京都
都では、いつ起きてもおかしくない5つの大規模災害(風水害、地震、火山噴火、電力・通信等の途絶、感染症)に備えるために、総事業予算15兆円規模の「TOKYO強靭化プロジェクト」(英語版)を策定。深刻化する気候変動による風水害や首都直下型地震などへの対応を進めている。
出典:東京都
プロジェクト策定担当した東京都政策企画局の藤崎哲朗氏は、AIを活用した河川の水位予測やデジタルツインで再現した都市空間を水害シュミレーションなど、テクノロジーとインフラ設備をかけ合わせた事例を紹介した。
出典:東京都
また、災害時に都民の生活を守るための新技術を求めているとし、スタートアップ企業とともに課題を解決しつつ、新たなビジネスの創出につながればと意欲を語った。
「激甚災害時でも、都庁の機能が停止することは絶対に避けなければならない。デジタルデータを全て移行できる“バーチャル都庁”を確立し、災害時も職員がスマートフォンでリモートで対応できるような形を目指したい」
「被害予想を可視化し、どのような被害が起こるか被害予想のシミュレーションも確立させたい。災害時、次にどうなるかをリアルタイムデータで活用し、被害最小化する技術開発も進めたい。また、災害時の状況把握と情報発信の自動化を目指している。ドローンやセンサーで被害状況を集め、リアルタイムで可視化・発信できるようにしたい」
すでに、東京都は「バーチャル都庁構想 構造改革推進チーム」を2020年に8月発足。リアル一極集中からリアルとデジタルの分散化へ、DXへの取り組みを進めている。
2月には、海外に向けて「TOKYO強靭化プロジェクト」を紹介する英語版のパンフレットを公開。世界的に激甚化する風水害対策を中心に東京の災害に対する取り組みを紹介している。
出典:東京都
東京都水道局の尾関元氏は、今後の課題として「貯水池ではコンクリート壁の劣化度合いを評価し、修繕している。メンテナンスをする際、排水をせずに施設を稼働しながらメンテナンスできるようにしたい。飲料水用の貯水池でも、水中ドローンなども活用できないかと考えている」と話す。
東京都は、2050年までにCO2の排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目標としている。そのために、都内の温室効果ガス排出量を2030年までに「50%削減(2000年比)」「再生可能エネルギーによる電力利用割合を50%程度」とする中間目標も掲げている。
東京都下水道局の佐々木宏章氏は、さらなるエネルギー温暖化対策や下水資源の活用が必要になるとして、このように語った。
「下水処理ではCO2(二酸化炭素)、N2O(亜酸化窒素)が排出されるが、現在は省エネルギー機器の導入などでカーボンハーフに取り組んでいる。汚泥の焼却にもエネルギー効率の高い焼却炉を用いている。2050年のゼロエミッション目標に向けて、さらなる技術革新、温室効果ガスの発生抑制や回収技術など、これまでにない技術を必要としている」
「下水資源の有効活用も課題だ。下水の持つ熱を利用した冷暖房、下水を高度処理した水を水洗トイレで再利用するなど。下水の汚泥からリンを回収し、農業の肥料としてさらに活用できる技術などがあれば非常に有効だ」