City-Tech.Tokyoにオンラインで登壇したベン・ホロウィッツ氏(右)。左は聞き手の関美和さん。
撮影:伊藤有
世界30カ国から300社のスタートアップが集まったとされる「City-Tech.Tokyo(シティテック東京)」。2月28日には、アメリカを代表するベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ(略称a16z)の共同創業者ベン・ホロウィッツ氏がオンライン登壇。
日本で起業する際の壁となっている「法人税」「仕様へのこだわり」「文化」について苦言を呈した。
国は減税を、市民はリスク取る覚悟を
City-Tech.Tokyoにて。スタートアップ各社のブースが並ぶ。
撮影:竹下郁子
シティテック東京は、東京都が世界的な起業都市になることを目指して初開催したイベント。セッションはもちろん英語だ。目玉は、ベストセラー・ビジネス書『ハードシングス』の著者で、有名ベンチャーキャピタルの創業者ベン・ホロウィッツ氏のセッションだろう。
ホロウィッツ氏は日本で起業しずらい理由について、3つの課題をあげた。
一つ目は、
「法人税が高い」(ホロウィッツ氏)
2つ目はカルチャー。
「日本企業は政府によって保護されてきました。そのため大企業は保守的で、日本の優秀な人材が『会社員になって安定的な暮らしがしたい』『リスクは取りたくない』と考える文化が作り上げられてしまっているのが問題です。
それを変え、新興企業で働きたいと思わせる必要があります」(ホロウィッツ氏)
撮影:竹下郁子
三つ目はUI(ユーザーインターフェース)だ。
「日本は『ユーザーインターフェースは絶対こうじゃないといけない』というきらいがある。例えば、ビジネスビザひとつとっても、すごく分かりにくいですよね。
ユーザーインターフェースを、もっと分かりやすくしたほうがいい」(ホロウィッツ氏)
楽天・三木谷氏とも語った海外戦略
セッションは全て英語で行われ、会場は英語や韓国語など多言語が飛び交っていた。
撮影:竹下郁子
UI、つまり「仕様」の話は、アンドリーセン・ホロウィッツが日本企業に投資をしていない理由として以前、「事業規模の小ささ」や「起業家の野心の不足」を挙げていたことを聞き手に問われたホロウィッツ氏の返答だ。ソフトウェア事業を想定しての話だったが、ビジネス全般にも言えるだろう。
また話題は、「日本で成功してから世界を目指すべきか? それとも初めから世界を目指すべきか?」にも及んだ。このテーマで以前、楽天グループの三木谷浩史社長とも語り合ったというホロウィッツ氏は、
「危険な戦略ではありますが、実務的にはそうする(まずは日本で成功する)しかないという話だと思います。
日本はユニークな市場です。ある商品を韓国で売るのとアメリカで売るのはほとんど同じですが、日本は違う。アジアの中でも特殊ですから。
消費者の意思決定の仕方も他国とは違うと感じます」(ホロウィッツ氏)
と述べた。
スタートアップ活性化、何をすべきか?
撮影:竹下郁子
小池百合子東京都知事は、27日に開かれた同イベントの冒頭挨拶で、東京都が「今後5年間」でスタートアップに対し「10億ドル(約1300億円)以上」の支援に取り組むことを表明した。
岸田政権も「スタートアップ育成5カ年計画」を掲げ、起業家育成に注力する。
もし自身が日本政府の立場でスタートアップ活性化を図るとしたら何をやるか? と聞かれたホロウィッツ氏は、
「重要なのはゴール設定です。それは最も有能な人材に日本で起業してもらうことだと思います。もちろん日本人に限らず、です」
と指摘した上で、「税金対策や規制緩和」に加え、
「個別の企業ではなく『分野』に投資すると考えるべきです。たとえば日本のヘルスケアは世界でも優れたシステムだと言われていますよね」
と、ヘルスケアへの注力を促した。