国際的ピッチイベント、1位に京大発・核融合ベンチャー。都などが初開催「シティテック東京」

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ピッチコンテストの優勝者には賞金1000万円が贈られる。

撮影:横山耕太郎

東京都が主導するグローバル規模のスタートアップイベント「City-Tech.Tokyo」が2月27日、28日の2日間、東京国際フォーラムで初開催された。

28日には持続可能な社会の実現に向けた最先端の技術を披露する世界的なピッチコンテストと銘打つ「City-Tech Challenge」の最終審査があった。

ピッチコンテストには、35の国・地域の338社が応募。審査を突破した20社がセミファイナルに参加し、勝ち抜いた7社がファイナルに進出。

最優秀賞の賞金が1000万円ということもあり、ファイナルの舞台では、制限時間5分で熱いプレゼンが披露された。

世界で活躍するファイナリスト7社とはどんな企業なのか? そして1000万円を獲得したのはどの企業だったのか?

衛星データで災害リスク低減へ

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Synspectiveのビジネスストラテジーオフィサー佐伯玲奈氏。

撮影:横山耕太郎

最初に登場したのは、2018年に設立され、合成開口レーダ(SAR)衛星を活用したサービスを提供する日本発ベンチャーのSynspective。

SAR衛星のデータを活用することでミリ単位で地盤変動をモニターできるという。実際のユースケースとして、グアテマラの山岳エリアで、地滑りや地盤沈下などの災害リスクを把握できたという。

同社のビジネスストラテジーオフィサーの佐伯玲奈氏は、「コストをかけずに災害対策ができる。国内外で災害へのソリューションを提供していきたい」とした。

自動運転をより正確に

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BlueSpaces.aiのCo-Founder Christine Moon氏。

撮影:横山耕太郎

2番目に登場したのは、数学と物理に基づきリアルタイムの自動運転最適化アプローチを提供するBlueSpaces.ai(アメリカ)。

例えば、運転中に前のトラックから荷物が落ちるなど、予想外の事態が発生したとしても、さまざまなセンサーを駆使して、自律的に事故を避けられるようになると説明した。

災害時、AIを活用し住宅被害を判断

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TractableのCustomer Success(APAC) Andrea Lee氏。

撮影:横山耕太郎

次に登場したのはロンドン発のAI企業・Tractable。

同社のサービスは災害などで住宅が被害にあったとき、AIによって被害を判断することで、保険の決済を迅速化するというもの。

APACカスタマーサクセス・Andrea Lee氏は「スマートフォンで写真を撮って被害を受けた項目などをチェックするとすぐに評価できる。日本では導入が進んでおり、今後はさらに世界展開を進めたい」とした。

電子証明書を世界に

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Turing ChainのCEO Jeff Hu氏。

撮影:横山耕太郎

4番目に登壇したのはTuring Chain(台湾)のJeff Hu・CEO。

同社はブロックチェーンを活用した電子証明書システムを構築している。すでにハーバード大学や国際機関、政府機関での実績もあるという。

Jeff Hu氏は「紙資源だけでなく時間のコストも削減できる。マーケットはまだまだ大きい」と語った。

ビール醸造カスから脱プラスチック

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AlterpacksのCEO Karen Cheah氏。

撮影:横山耕太郎

環境汚染につながるプラスチックではなく、捨てられてしまう食品をアップサイクルした素材を作るAlterpacks。

同社はシンガポールを拠点とするスタートアップで、ビールの醸造カスなどを利用した環境に優しい素材を開発した。

CEOのKaren Cheah氏は「冷凍も電子レンジでも使え、家庭で堆肥化もできる。次の世代のためにも、プラスチックではなく、これまで捨ててきたもので作り変えていきたい」とした。

美味しさを保ちつつ健康維持

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Alchemy FoodteckのCEO Alan Phua氏。

撮影:横山耕太郎

パンやクッキー、ラーメンなどの味や食感は損なうことなく、食後の血糖値の上昇を抑えることができる。そんな製品を開発しているのがシンガポールに拠点を置くAlchemy Foodteckだ。

同社ではトウモロコシなど、複数の植物の繊維をブレンド。小麦粉や砂糖の使用量を減らしても美味しさを維持する技術を開発している。

CEOのAlan Phua氏は「シンガポールではサブウェイも導入している。日本の消費者に関心を持ってもらえる商品だ」と話した。

核融合でクリーンなエネルギー提供

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京都フュージョニアリングマーケティング本部長 世古圭氏。

撮影:横山耕太郎

最後に登場したのは、京都大学発のスタートアップとして2019年に設立された京都フュージョニアリング。同社は核融合プラントの基盤技術において世界有数の技術力をもち、世界のさまざまな研究機関や核融合関連の企業を顧客としている。

登壇した同社事業・マーケティング本部長の世古圭氏は「今一番大きな問題はエネルギーです。炭素を減らさないといけない時に核融合という無尽蔵でクリーンで安全なエネルギーが求められている」とした。 

賞金1000万円を獲得したのは……

審査の結果、最優秀賞に選ばれたのは、最後にプレゼンした京都フュージョニアリングだった。

世古氏には、小池百合子・東京都知事からトロフィーと賞金1000万円の目録が手渡された。

世古氏は今回のピッチコンテストについて、Business Insider Japanの取材に対し「日本から世界に羽ばたいてほしいと、後押ししてもらえたと思う」と話した。

「東京都が主体となって、海外で活躍する企業や著名人、技術や考え方を集め、イノベーションに繋げようとしていることを心強く感じた。

シリコンバレーやヨーロッパの都市をただ真似するだけではなくて、日本として咀嚼して新しい取り組みにつなげてほしいと思っていますし、そのポテンシャルを感じています」(世古氏)

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