AIツールを駆使して履歴書を書くと採用率が8%アップ…採用側の人材プールを拡大する効果も

履歴書作成イメージ

Elena Katkova/Getty Images

  • 履歴書の作成にAIを使用すると、採用率が向上するという研究結果が発表された。
  • この研究では今話題のChatGPTが用いられているわけではないが、AIが求職者を助ける可能性を示唆している。
  • しかし、誰もがAIを使い始めたら、求職者が他より一歩抜きんでるのは簡単ではなくなるだろう。

AI(人工知能)ツールを使って履歴書を書けば、仕事を獲得しやくするなるかもしれないが、それができるのも長くは続かないだろう。全米経済研究所(NBER)は、2023年1月に発表したワーキングペーパー(論文)でそう報告した。

これは、2021年に約50万人の求職者を対象とした実験に基づいている。履歴書の作成を支援する「アルゴリズムによるライティング支援」によってスペル、文法、言葉遣いに関するフィードバックなどを受けた実験参加者は、このツールを使わなかった人よりも、企業に採用される確率が8%高いことが明らかになったのだ。

この論文の筆頭著者であるMITスローン経営大学院の博士候補生、エマ・ヴァン・インウェゲン(Emma van Inwegen)は「同じスキルセット、同じ経歴を持つ」2人のうち1人が「履歴書をうまく書けていれば、その方が採用される可能性が高くなる」とInsiderに語っている。つまり、雇用主は履歴書の書き方を「気にしている」のだという。

ヴァン・インウェゲンと共同執筆者であるザネル・T・マニクワ(Zanele T. Munyikwa)、ジョン・J・ホートン(John J. Horton)によると、AIによる支援は「スペル分布の底辺にいる」求職者、つまりスペルミスが多い人に特に有効だと述べている。

彼らは今話題のChatGPTを実験に用いたわけではないが、求職のプロセスにおけるAIの使用によって他の求職者よりも有利になる可能性があることを今回の研究結果が示唆している。

OpenAIが開発したChatGPTは2022年11月の公開以来、世界を席巻し、2023年1月末にはユーザーが1億人以上に達した。新たなAIテクノロジーに仕事が奪われるのではないかと苛立つ人がいる一方、それを用いて暮らしを楽にする方法を模索する人もいる。例えば履歴書やカバーレター(履歴書に添付する送付状で、志望動機などを伝える役割を果たす)の作成に利用するといったことだ。

しかし、ChatGPTのようなAIツールが普及し、誰もがそれを使って履歴書を作成し始めたら、求職者が他より一歩抜きんでるのは難しくなるだろう。

「誰もがカバーレターや履歴書にChatGPTを使い始めたら、あなたが履歴書を見る雇用主である場合、文章の質を見て求職者について何かを理解しようとすることができなくなるだろう」とヴァン・インウェゲンは述べ、この実験で用いたツールは「異なるレベルの文章力を持つ人々を平均化するような役割を果たしていた」とも指摘している。

「すべての履歴書は、ある種のアルゴリズムによるチェックを受けることになる。そして、カバーレターや履歴書の文章は、良くも悪くも均一化されることになるだろう」

AIの普及により、文章の質では求職者の評価ができなくなる

これらのAIツールの多くがまだ発展途上である間は、文章をうまく書ける求職者の優位性は保たれるだろう。しかし、こうしたテクノロジーが向上し、より多くの人が利用するようになれば、今回の実験に用いたような文章作成支援を行うAIツールは、最終的に求職者の仕事のパフォーマンスを測る「指標としての文章力を『台無し』にする」可能性があると研究者は述べている。つまり、企業が求職者を評価する際に、優れた文章力は重視されなくなるということだ。

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