アマゾンのアンディー・ジャシーCEO。
Reuters/Richard Brian
アマゾン(Amazon)の新しい出社義務化をめぐって、綱引きが勃発している。
2023年2月末、数百人のアマゾン社員が同社の出社義務化の新方針を支持する新しいSlackチャンネルに参加したことが判明した。アマゾンではこれに先立つ数日前、出社義務化に反対するSlackチャンネルに多くの従業員が参加していた。
この新しいSlackチャンネルについての説明文には、出社義務化に反対する「リモートアドボカシー(Remote Advocacy)」グループによって覆されるおそれのあるオフィス復帰の利点について、「広い視野で考える」ためのチャンネルだ、とある。2月27日の時点で、出社義務化を支持するチャンネルには750人あまりが参加していたのに対し、反対するチャンネルには2万8000人以上が参加していた。
Insiderが確認したSlackチャンネルのスクリーンショットによると、「リモートアドボカシーと呼ばれるチャンネルのせいで、出社義務化計画が覆されるおそれを感じ、我々はこのチャンネルで広い視野で考え、オフィス復帰の隠れた利点を詳しく説明したい」と書かれている。
アマゾンの新しいオフィス復帰方針は、2023年5月から大多数の従業員に週3回の出社を求めるもので、今後数カ月にわたって争点となりそうだ。Insiderの既報の通り、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOがこの方針を2月17日に発表した直後、数千人の従業員が「リモートアドボカシー」Slackチャンネルに参加し、新方針について批判した。彼らは、正式に拒否するために嘆願書をまとめている。
Insiderがアマゾンの広報担当者に問い合わせたところ、メールの回答の中で、オフィス復帰の新方針に関する以下のジャシーCEOの社内メッセージを示した。
「初めから完璧ではないことは分かっています。不動産と施設のチームが混乱を解消し、最終的には私たちが望む新しい働き方のためにオフィスがどうあるべきかという考えを進化させ続けることで、今後数カ月(そして数年)、オフィスの環境は着実に向上するでしょう」
オフィスに戻りたい理由
シアトルにあるアマゾン本社。
David Ryder/Getty Images
オフィス復帰を支持するSlackチャンネルにいち早く投稿されたメッセージでは、従業員がオフィスに戻りたいと思う理由を説明した2021年のハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)の記事へのリンクだった。
オフィスに戻って働くことにワクワクしていると投稿した社員もいる。出社を義務化することで「生産性の向上を図れるだろう」との書き込みもあり、この投稿主は「より厳しい」労働時間と引き換えに、週4日勤務にすることを求めていた。
別の社員は、パンデミック前後のアマゾンの株価上昇率を比較していた。リモートワークがなかったパンデミック以前の3年間の株価大幅率は約92%だったのに対し、ほとんどの人が在宅勤務をしていたパンデミック以後の直近3年間は上昇率が6%にとどまっていた。
「オフィスでもっとたくさんの同僚に会えることを楽しみにしている」と社員の一人は書いている。
それでも、それぞれのSlackチャンネルに参加している人数から判断するかぎり、アマゾン社員の多くはリモートワークを支持しているようだ。出社義務化に反対するチャンネルには2万8000人以上の従業員が参加しており、そのチャンネルにはジャシーの発表からわずか数時間で、新方針の唐突さと曖昧さに対する批判的なコメントがあふれ返った。そして、アマゾンの首脳陣が出社義務化計画をただちに中止し、永続的にリモートワークを認める新たな決定をするよう求める請願書に署名するように、多くの社員が呼びかけた。
一方、オフィス復帰を支持するSlackチャンネルに参加し、新方針について議論している社員もいる。
ある社員はこのチャンネルで、出社義務化の方針は「すべての人に単純に当てはめるべきではなく」、オフィスを好む人は、そこにいたくない人たちでさらに混雑するようなオフィスではなく、代わりに「より良いオフィス」を作ることに注力すべきだと投稿していた。
また別の社員は、オフィスで働くことの利点を証明する確かなデータがないため、これはもっと「微妙な状況」なのだと書いている。
このほか、在宅勤務のデメリットについて説得力のある議論がなされておらず、アマゾンは今や 「世界中にオフィスを持つバーチャル企業 」なのだからリモートワークの課題解決に取り組むべき、という声も上がっていた。
「私はただ、リモートで働くことでどんな害があったのか、分かりやすい形で知りたいだけです」