アマゾンの「オートロック付き物件の置き配」の対応を拡大する。
撮影:小林優多郎
アマゾンジャパンは3月2日、三井不動産レジデンシャルリースと協業を発表した。
協業により、三井不動産レジデンシャルリースが運営・管理する賃貸マンションにおいて、共有玄関などにオートロック設備がある場合でも「置き配指定」が可能になる。
三井不動産レジデンシャルリースが管理する物件数は約7万8000戸で、そのうちすでに10棟約400戸には展開済み。今後もマンション管理団体や所有者の承諾を得て、対応物件を拡大していく方針だ。
ドライバーには「1回限り」の解錠権限が付与
ドライバーはドライバー用アプリで解錠する。
撮影:小林優多郎
「オートロック付き物件の置き配対応」の仕組みは、アマゾンが2021年3月から展開している「Key for Business」を採用している。
Key for Businessでは、マンション設備にアマゾンのデバイスを設置。ドライバーが対象の荷物を持ってきた際、ドライバー向けアプリのボタンを押すだけで、オートロックのドアが開く仕組みだ。
アプリで解錠できるのは1回だけ。番号等を伝えて開ける仕組みではない(あくまでドライバーがすることは到着時にアプリのボタンを押すだけ)ため、置き配完了後はマンションの中に入ることはできない。
三井不動産レジデンシャルリース 経営企画部長の中村誠氏。
撮影:小林優多郎
三井不動産レジデンシャルリース側の担当者・中村誠氏によると「いつ、誰(どのドライバー)が入館したか確認を取れる」ことなど、同社が求める一定のセキュリティー要件が担保されていることが、導入のきっかけになったという。
中村氏は「宅配物を受け取る機会は増えている。その中でも、再配達は慢性的な課題」と課題感を挙げ、居住者の生活体験向上に寄与することを期待している。
なお、デバイスの購入費・設置はアマゾンの負担となるが、電気代などのランニングコストは管理費等の所有者負担となる。
大手不動産管理会社の導入は初めて
Key for Businessは日本では2021年3月からスタートしていたが、大手事業者との提携は初めて。
撮影:小林優多郎
Key for Businessは従来アマゾンの営業担当者などが物件ごとに導入を進めてきた。ただし、今回のように、不動産の運営管理会社と提携し、導入していくのは初めてだ。
3月2日の記者会見に登壇したアマゾンジャパン アマゾンロジスティクス事業本部 部長のAwanish Narain Singh(アヴァニシュ・ナライン・シング)氏は、Key for Businessについて「現時点で5000棟が導入」「導入後は導入前と比べて再配達の80%削減に成功している」と、その導入効果に自信を見せる。
Key for Businesをすでに導入しているマンションでの効果。
撮影:小林優多郎
またシング氏は、働き方改革関連法によって、トラックの運転手の労働時間に制限のかかるいわゆる「2024年問題」や、2023年4月に国土交通省と経済産業省の実施する「再配達削減PR月間」に触れ、「(Key for Businessは)お客様の利便性向上はもちろん、政府の実施するキャンペーンにも資する」と、今後も同様の取り組みを拡大していく姿勢を見せた。
なお、Key for Businessは現時点では
- アマゾン以外のECサービスで購入した商品の受け取り
- アマゾンが契約する配送事業者以外(日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便)の配送荷物
には非対応となる。
シング氏は「ヤマトも日本郵便、佐川も大切なパートナー」とし、自社配送網以外でのオートロック付きマンションの置き配対応を検討していく方針を示した。
アマゾンは2023年中に追加で2500棟への導入を目指している。