ギザの大ピラミッド(左)内部の今まで知られていなかった通路(右)が、「スキャン・ピラミッド」プロジェクトの研究者らによって発見された。
AP Photo/Hassan Ammar, File / The Egyptian Ministry of Antiquities/Handout via REUTERS
- エジプトにあるギザの大ピラミッド内にある隠し通路が 「ミューオン」 と呼ばれる宇宙を飛び交う素粒子を利用して発見された。
- この隠し通路は長さ30フィート(約9メートル)で、4500年前にできたピラミッドの入口付近にある。
- 古代世界の七不思議の新たな発見につながるかもしれないと研究者らは話している。
国際的な考古学者のチームが、エジプト・ギザの大ピラミッド内にこれまで知られていなかった通路を発見したと2023年3月1日に発表した。
ロイター通信の報道によると、奥行き30フィート(約9メートル)の通路は4500年前に作られたとされるクフ王のピラミッドの北面にあり、さらなる内部構造の発見につながる可能性があるという。
「これは21世紀で最も重要な発見だと私は考えている」と、エジプトの元考古相で考古学者のザヒ・ハワス(Zahi Hawass)はアメリカNBCの情報番組「トゥデイ(Today)」で語っている。
考古学者たちはこのアーチ型の通路は巨大な遺跡の重量を分散させるために設計されたと考えている。
今回発見された隠し通路の3Dスキャン画像。
Egypt Ministry of Tourism and Antiquities
「この通路はその下にある物を保護したり、上部からの圧力を下げたりする役目がある。その下にあるのは部屋かもしれないし、他の何かかもしれない」とエジプトの考古最高評議会のムスタファ・ワジリ(Mostafa Waziri)事務局長は話している。
ワジリは、隠し通路の目的が「すぐに」明らかになることを望んでいると述べた。
ロイター通信によると、「我々は今後もスキャンを続けていく。隠し通路の下に何があるのか、またはこの通路の先に何があるのかと見極める」とワジリ事務局長は記者団に話したという。
今回の発見は2015年に開始されたプロジェクト「スキャン・ピラミッド(Scan Pyramids)」によるものだ。このプロジェクトでは、宇宙から降り注ぐ「ミューオン」と呼ばれる素粒子の量から物質の質量を計測する技術を用いて、破壊することなくピラミッド内を調査している。
この技術はピラミッドを通り抜けてくるミューオンの量を解析するものだ。科学者らはピラミッドの周囲に設置された検出器に到達したミューオンの量の違いを読み取ることで、遺跡の内部の構造を透視が可能になると週刊科学雑誌のニュー・サイエンティスト(New Scientist)は伝えている。
ファイバースコープを入れたピラミッドの場所を示す画像(左)と、ピラミッド北側の斜面から中央部に伸びる通路のような形の空間(赤色部分)を示す画像(右)。
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この空間は2016年に初めて発見された。初期のスキャン調査で開口部の背後にまだ知られていない空間があることが示唆されていたのだ。上部にある空間の入り口は、ピラミッドの覆いの下に隠されていた可能性が高い。
ミューオンのおかげで科学者たちは通路がピラミッドの表面に近いことが分かり、ファイバースコープをその通路まで到達させ撮影することができた。わずかな隙間からファイバースコープを刺し込んで撮影し、その空間が閉ざされてから初めて内部を見ることができたのだ。
ファイバースコープを使って撮影された空間内部。
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これにより通路の存在が確認されたが、この空間はやや上り勾配があると考えられている。
この研究成果は、2023年3月2日、査読付き学術雑誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。
「空間があることは知っていたが、もちろん、それを見るのとはまったく違う」と、この研究の著者であるフランスのパリ=サクレー大学(University of Paris-Saclay)のセバスチャン・プロキュール( Sébastien Procureur)はニュー・サイエンティストに語っている。
「我々はこの空間を見たときに不思議な気持ちになった」
これは「魅力的な発見だ」と、ワルシャワ・ミイラ・プロジェクト(Warsaw Mummy Project)のエジプト学者で、この研究には携わっていないヴォイチェフ・エジスモンド(Wojciech Ejsmond)はInsiderに送ったメールに記している。
「科学者たちはピラミッドに隠されている部屋や空間がある可能性を何十年も前から推測していた。最近、我々はピラミッドのどこを探せばいいのかいくつかの示唆を得ていた。通路がピラミッドの入口のすぐそばで発見されたことは、とても有名な場所であるだけに非常に驚いている」とエジスモンドは述べている
今回発見された通路から、これまで知られていなかった部屋が発見される可能性がある。今のところ、下の図にあるように4つの空間(地下室、女王の部屋、大回廊、王の部屋)が発見されている。
2017年に描かれたピラミッドの断面図。ピラミッドの各部屋と入口の位置を示している。地下室(a)、女王の間(b)、大回廊(c)、王の間(d)、通路(e)(f)(g)、今回新たに発見された通路につながる入口(h)。
Procureur, S., et al, Nat Commun 14, 1144 (2023) doi.org/10.1038/s41467-023-36351-0
ギザの大ピラミッドは、紀元前2560年、クフ王の時代に最初に建設されたとされている。
高さ450フィート(約137メートル)の埋葬記念碑であるピラミッドは、1889年にエッフェル塔が建設されるまで、地球上で最も高い人工建築物だった。