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グーグルクラウド(Google Cloud)のトーマス・クリアン(Thomas Kurian)CEOは2月に行われた全社集会の中で、「最高性能」のAIを構築すると約束し、競合他社から取り組みを批判されても全力で開発に取り組むよう、従業員らに檄を飛ばした。
グーグルクラウドのトーマス・クリアンCEO
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クリアンは集会の中で、競合他社がグーグルのAI開発に対して侮辱的な発言を繰り返していると述べた。これは、ChatGPTの開発元OpenAIなどの企業を指すものと思われる。OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOはグーグルを、「やる気のない検索独占企業」などと呼んでいた。
クリアンは、AI競争はまだ始まったばかりだと言い、これはより幅広いテック業界にとってターニングポイントになる可能性があるため、チーム一丸となって取り組むよう従業員らに呼びかけた。
以下は、Insiderが入手した全体集会の録音音源と書き起こしに基づく、クリアンの発言内容である。
世間がグーグルを見て「この時期にどんな業績を上げてきたのか」と口にする、そんな瞬間を皆さんは生きています。
グーグルは市場参入に遅れたと言って、われわれを狙い撃ちにする企業もあります。グーグルは確かにAIの船に乗り遅れました。当社にない新しいプロダクトを、他社は持っています。
私が言いたいのは、これは新しいゲームの開始1分にすぎず、この1分で勝負が決まるものではないということです。このゲームが決まるのは、終わる瞬間です。われわれは、これらの市場で最高性能のプロダクトを提供することに組織として全力で取り組んでいくのです。
私は約束します。当社のエンジニアたちが、お客様にAIの驚きの技術を届けるだろうということを。
クリアンはこのように述べ、今の時代を「歴史の中間点」と呼んで、「前に進み、チーム一丸となって理路整然と働き、お客様と共に成功する」よう、従業員らに求めた。
クリアンの発言は、グーグルがチャットボットに取り組む中での危機感を表している。ChatGPTの急速な台頭によってグーグルの立場が揺らぐ一方、マイクロソフト(Microsoft)はOpenAIの技術を利用して、自社の検索エンジン「Bing」を強化してきた。グーグルの経営陣は、ChatGPTの台頭に対して「コード・レッド(非常事態)」を発令したと、ニューヨーク・タイムズは12月に報じた。
マイクロソフトは1月にOpenAIに対する大規模な投資を発表し、2月にはChatGPTの技術をBingに組み込んだ。
その間、グーグルも2月に自社のチャットボット「Bard(バード)」を公開したが、マイクロソフトとOpenAIが話題をさらった時ほどの興奮を引き起こすには至らなかった。
グーグルのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEOは従業員に対し、勤務中の2~4時間、Bardのトレーニングに協力するよう要請した。これもまた、グーグルが危機感をもって動いている証しだ。
だがInsiderの既報の通り、グーグルの従業員の中にはBardの発表を社内でばかにする者や、AIチャットボットのトレーニングで仕事が増えたことに不満を漏らす者もいる。
なお、Insiderはグーグルの広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。