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在宅勤務の浸透によって、都心部と郊外の複数に拠点を持って生活する多拠点居住に関心が高まっている。ただ、一口に多拠点居住者と言っても、目的によって異なる志向や特性を持っていることが、パーソル総合研究所の「就業者の多拠点居住に関する定量調査」で分かってきた。
パーソルが分類した多拠点居住者の5つのタイプとその割合。
出典:パーソル総合研究所「多拠点居住に関する定量調査」
調査では、多拠点居住者を目的別に5種類に分類。生活満足度や地域との関わり方の違いを見ていこう。
パーソル総合研究所 「就業者の多拠点居住に関する定量調査」
調査対象者:東京23区、政令指定都市に住む20~69歳の就業者
対象人数:2500人(多拠点居住者:1498人、多拠点居住計画者:216人、多拠点居住意向者:786人)
調査手法:インターネット調査
実査期間:2022年11月9日~11月14日
地域への貢献度が高い「多拠点生活志向タイプ」は30~40代男性が中心。幸福度も高い傾向に
多拠点生活志向タイプの特徴
出典:パーソル総合研究所「多拠点居住に関する定量調査」
5タイプのうち最も多い29.6%を占めたのは、さまざまな目的から多拠点生活を選択している「多拠点生活志向タイプ」。
地域活動へのモチベーションが高く、サブ拠点で副業などの仕事を持っている割合が高いのが特徴だ。地方企業に副業で参画する「ふるさと兼業」や住居のサブスクリプションサービス「ADDress」などの利用割合も高く、新しいサービスを活用しながら多拠点生活を楽しんでいるようだ。
サブ拠点での月額支出額は11.2万円で最多。「消費」と「労働」の両側面で地域への貢献度が高いタイプと言える。
多拠点生活志向タイプは地域への貢献度が高い
出典:パーソル総合研究所「多拠点居住に関する定量調査」
このタイプは30代~40代の男性が最も多く、47.5%を占めた。幸福度は6.4ポイントで、日本の平均値6.04ポイントを上回る。
多拠点居住開始時に副業を始めた割合が34.3%(全体平均20.8%)で最も高く、「マイペースで自発的に仕事に取り組めており、成長につながっている状態」や「地域の仲間とつながりを感じ、認めてもらえている状態」が主観的幸福感を高めているとみられるという。
一方で「はたらく不幸せ実感」も高く、「その地域の協働意識が強い」「交流する人達とのお付き合いがつらい」といった地域で交流する人達との関わりに悩んでいる特徴がみられた。
調査では、このタイプと地域住民側の持つ意識のギャップを埋めることが重要だとしている。
介護などが目的の「家庭支援タイプ」は女性の割合が高め
家族支援タイプの特徴
出典:パーソル総合研究所「多拠点居住に関する定量調査」
多拠点生活志向タイプと対照的なのが「家庭支援タイプ」だ。
このタイプは、近親者の介護や実家などの物件管理を目的とし、受動的に多拠点居住を選択している。他タイプと比較して女性の割合が高く、20~40代の女性が20.9%を占めた。平均世帯年収は823.9万円で他のタイプと比べて最も低かったが、サブ拠点での月額支出額は5タイプ中2番目に多い8.1万円に上る。
また、1回の訪問での滞在日数が少なく、地域を行き来することや移動コストに悩んでいる人が多かった。
幸福度は5.68ポイントで日本平均(6.04ポイント)を下回り、地域生活や働くことへの幸福実感も低い傾向がある。調査では「特に移動や交通に関するサポートが肝要」としている。
多拠点生活で幸せになっているのは「能動的な人」
その他のタイプは、自身の気分転換や地域の魅力を堪能する「地域愛着タイプ」、趣味を楽しむ「趣味満喫タイプ」、その地域に仕事があることを理由に拠点居住を送る「受動的ワークタイプ」の三つ。
地域愛着タイプはサブ拠点における仕事や地域活動に積極的で、労働力面で貢献度が高い一方、月間支出額は平均6.6万円と最も低かった。趣味満喫タイプと受動的ワークタイプは労働力、消費のいずれにおいても他タイプと比較して低かった。
また調査では、能動的に多拠点居住を選択していると考えられる「多拠点生活志向」「地域愛着」「趣味満喫」のタイプほど、ウェルビーイングの指数が高い結果となった。
多拠点居住者の5タイプ
出典:パーソル総合研究所「多拠点居住に関する定量調査」
能動的な多拠点居住者ほど、ウェルビーイングが高い
出典:パーソル総合研究所「多拠点居住に関する定量調査」