ChatGPTはプログラマーに取って代わるものではない。それどころか、コーダーは自分たちの仕事をより速く、より簡単にするためにこの技術を受け入れている。
Robyn Phelps/Insider
- ChatGPTとAIが徐々に強力になり、労働者を置き換えるようになると、自分の仕事が奪われるのではないかと心配する人もいるだろう。
- しかし、プログラマーはChatGPTが自分たちの業界にとって良いものだと考えている。
- 彼らはAIが仕事をより速くできるようにして、新たな仕事の機会を開くと述べている。
オートメーションの脅威は、多くの労働者にとって暗闇に潜む幽霊のようなものだ。ChatGPTで何ができるのかが明らかになった今、AIに仕事を奪われるのではないかと多くの労働者が新たな恐怖に苛まれている。
AIは児童書を書いたり、銀行の一部の業務を引き継いだりすることができ、あなたの職場でも誰かの代わりにAIが働くようになるかもしれない。実際、仕事を失いたくないのであれば、AIに精通していなければならないことは、ますます明白になっている。
とはいえ、すべての人がそう思っているわけではない。
ChatGPTなどのAI搭載アプリが、仕事に何を(あるいは「誰」を)もたらしてくれるのか、期待を寄せる技術者もいる。プログラマーだ。
彼らは、オートメーションの進歩でより効率的に、よりよいコードを書けるようになった。さらに、ChatGPTやGitHub Copilotのようなツールは、そもそもコードを学ぶことの苦痛を取り除き、より多くの人がコーディングという有利なキャリアを築けるようにするものだと業界関係者は述べている。このことは、テック業界が抱える恒常的な人材不足への対処になるという利点もある。
「開発者、DevOpsエンジニア、プラットフォームエンジニアは、単調な作業をできるだけ多く自動化し、より高度な思考ができるようにしたいと考えている」と、ソフトウェア導入スタートアップArmoryの製品担当上級バイスプレジデントのアダム・フランク(Adam Frank)は述べている。
「AIは、そのような作業の多くを自動化するのに役立つだろう」
AIがプログラマーへの参入障壁を取り除く
プログラマーは、経験レベルにかかわらず、1人で作業することはほとんどない。プログラミング技術に関するナレッジコミュニティであるStack Overflowといったサイトでは、プログラマー同士を結びつけて問題解決を支援している。業界のジョークとして「コードを学ぶことの大部分はコピー&ペーストをマスターすることだ」ということが言われている。
ChatGPTの台頭は、まさにその延長線上にあり、必要なコードをその場で生成してくれる(時には、それが悪用されることもある)。
初心者のコーダーにとって、これは参入への大きな障壁の1つを取り除くものだ。問題を解決する手助けをしてもらうことで、経験豊富なコーダーと歩調を合わせられるようになる。
「人間のプログラマーが活躍できる場はまだある」とフランクは言う。AIはコーダーが必要とするすべての部品を与えてくれるが、それらを意味が通るようにまとめるのはプログラマーの役目だ。
「人間が持つ創造性や感情をAIが経験するようになるとしても、それはまだずっと先のことだ」とフランクは言う。
「そのような創造性、感情、そして人間への理解があってこそ、我々人間は、製品を使う人間のために特別な体験を構築することができる」
これは、熟練した開発者にとってはむしろエキサイティングな機会だとフランクは言う。面倒な作業を自動化することで、よりクリエイティブな作業に取り組めるようになり、競合他社とは一線を画す存在になれるだ。
新しい仕事が待っている
OpenAIでChatGPTの形ができる前から、コンピュータ・エンジニアやソフトウェア開発者は人気の職業だった。しかし、最近ではテック系企業で大規模なレイオフが行われるようになり、プログラマーであることがそれほどもてはやされるようなものではないかもしれないという考え方も出てきている。
ChatGPTがコードを生成するようになったことで、人間のプログラマーは役割を終えたと考える人もいる。だがそうではないと専門家は言う。いまなおテック産業は変化の途上にあるのだ。
「これまでテック系の知識に疎かった企業も、AIのおかげでテクノロジーがかなり身近なものになった。そして導入が進むにつれて、テクノロジーを維持するためにそのシステムを理解して運用できる開発者がますます必要になる」と、Amplaのエンジニアリング担当バイスプレジデントのサーガー・パテル(Sagar Patel)は述べている。
同時に、開発者の仕事も中長期的に変化していきそうだ。ChatGPTなどのAIツールは日に日に賢くなり、コードを書くのがうまくなっている。つまり、細かな作業をするエンジニアの必要性は減っていくかもしれない。しかしその一方で、コードの監視やメンテナンス、組み立てを行い、機能的な製品に仕上げるプロフェッショナルが必要とされ、そのスキルは今後も価値を失わないはずだ。
今のAIの流行を作り出す手助けをしたのももちろんプログラマーだが、彼らが自らを失業に追い込んだと考えるのは間違っている。むしろ、プログラマーのスキルはこれまで以上に求められるようになっただけなのだ。