アメリカで増えるパートタイムの仕事をあえて選ぶ人… 33歳のミレニアル世代はこうして年収1300万円の仕事を捨てた

キキ

アメリカ、サンフランシスコのベイエリアで暮らすキキさん。

Kiki

  • アメリカ、サンフランシスコのベイエリアで暮らすミレニアル世代のキキさんは「ものすごいバーンアウト(燃え尽き症候群)」を経験した後、2021年にフルタイムの仕事を辞めた。
  • アメリカではパートタイムの仕事をあえて選ぶ人が増えていて、キキさんもその1人だ。
  • とはいえ、これは誰にでもできることではないし、必ずしも喜ばしい理由でそうしているとも限らない。

2021年11月、サンフランシスコのベイエリアで暮らすミレニアル世代のキキさん(33)はフルタイムで働くのを辞めなければならないと気付いた。

年金や健康保険を管理する会社で管理職として働いていたキキさんの年収はおよそ10万ドル(約1300万円)だったが、「完全なバーンアウト状態」に陥ったとInsiderに語った。

トラブルは2020年に始まった。キキさんの仕事が「必要不可欠」と見なされ、週に数日の出社を義務付けられたのだ。ただ、キキさん自身は出社に不安を感じていた。その後、会社は深刻な人手不足に陥り、「全員の仕事が増えた」という。

昼休みから戻ってくると、新規のメールが100通以上届いていることも日常だった。結婚で1週間半休んで戻ってきた時は、受信トレイに「何千通」と届いていたという。

「通勤中は車の中で泣いていました。いっぱいいっぱいで怖かった」とキキさんは当時を振り返った。

「ミスすることをものすごく恐れていたんです」

そして、キキさんは夫と相談し、心の健康を守るためにも仕事を辞めると決めた。

「入社以来ずっと必死に頑張ってきたのに、辞める時にはもうついていけなくなっていました。耐えられるものではありませんでした」

ただ、キキさんは会社を辞めてから半年以内 —— 2022年5月まで —— に別の仕事を見つけるつもりだった。家計のためには、2人で稼ぐことが必要だったからだ。夫婦で相談して、バーンアウトに再び陥らないためにも、パートタイムの仕事を探すことにした。

「フルタイムでまた働くことは考えないようにしています。ちょっとトラウマになっているんだと思います」

4月にキキさんは仕事を見つけた。週に15~20時間のフルリモートのカスタマーサービスの仕事で、いつ働くかは自分で決められるという。この地域の最低賃金である時給16.50ドル(約2200円)の仕事だ。

フルタイムで働いていた時に比べればその収入は「はるかに少ない」し、家計にとっては厳しいものの、キキさんのバーンアウトは「大幅に改善」していて、正しい選択をしたと考えているという。

「命拾いしました。1日8時間以上椅子に座りっぱなしの抜け殻のような感覚がなくなりました」

アメリカにはフルタイムの仕事がたくさんある。それでもキキさんのように、自分にはパートタイムの仕事の方が合っていると判断する人たちは少なくない。アメリカの労働省のデータによると、2023年1月の時点で2210万人が自ら進んでパートタイムの仕事に就いている。これはフルタイムの仕事がしたいけれどパートタイムで働いている人 —— 410万人 —— の6倍近い数だ。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、これは過去20年で最も大きい比率だ。

このデータはアメリカの労働市場の好調ぶりを物語っている面もあるが、必ずしも喜ばしいことではない。なぜなら、多くのアメリカ人にとってフルタイムの仕事に就く妨げになっているのは労働市場ではなく、健康問題育児、バーンアウトだからだ。デロイトが世界各地の5000人の女性を対象に実施した調査によると、2022年には女性の3人に1人がメンタルヘルスが原因で仕事を休んだという。

キキさんのように、働きたくないと思っていてもインフレや生活費高騰の中で家計を助けるために働きに出ている人もいる。

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