AI株の恩恵にあやかりたい投資家はウォール街でも増えている。
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市場で最も華やかなAIスタートアップの中には、今後も存在感を示し続ける企業が出てくるだろう、とウェドブッシュ(Wedbush)のハイテク株アナリストであるダン・アイブス(Dan Ives)は語る。
2023年3月3日にアイブスは、AIソフトウェア会社であるC3.AIの目標株価を1株当たり13ドル(約1740円、1ドル=134円換算)から24ドル(約3200円)に引き上げた。同社の時価総額は32億ドル(約4290億円)で、株価は年初来146%の上昇を示した。
「さまざまな産業に幅広く応用できるC3のAIソリューションの需要は拡大し続けており、それがマーケットにとって追い風になっています。一連の革新的なエンタープライズ向けAIソリューションで、重要なビジネスチャンス作りに弾みがついています」とアイブスは書いている。
C3は自社の収益化戦略でキャッシュフローがプラスになり、(調整後の指標に基づき)利益を生むという目標を達成することにより、これまで注目されてきた成功を今後も維持できることを示さなければならない、とアイブスは語る。
「成功への青写真はできていると思います。しかし2023年にウォール街から信頼を取り戻すためには、実行に移すことがすべてなのです」とアイブスは言う。彼はC3の株の評価を引き続き「ニュートラル」とした。
AI株の上昇
AIは目新しいものではないが、特にChatGPTのような大規模言語モデルやDALL-Eのような画像生成プログラムの出現により、ここ数カ月で投資家はAIの可能性に夢中になっている。新世代のAIがヘルスケア、コーディング、データ分析、カスタマーサービスといった数多くの産業を変革するという期待から、AI関連銘柄には2023年に入って投資が集まり、株価を劇的に押し上げた。
このこと一つとっても、AIを長期的なテクノロジー投資の主軸に据える根拠になる、とUBSウェルス・マネジメントの最高投資責任者であるマーク・へーフェル(Mark Haefele)は言う。
へーフェルは最近のクライアント向けのレポートにこう書いている。
「AI、ビッグデータ(B)、サイバーセキュリティ(C)は、合わせてABCテクノロジーと呼ばれています。これら3つの主要な基盤的技術は変曲点にあると見ています。企業や政府が注目して投資を増やすなか、今後数年間にわたり、これらの分野が急速に普及していくと考えています」
テクノロジーは「新しいイノベーションサイクル」の只中にあり、アーリーステージの投資を専門とするプライベートエクイティ企業にとっては魅力的な機会となるだろう、とへーフェルは言う。投資資格のある投資家も、これらの機会から恩恵を受ける可能性がある。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)の最近のレポートも、AIは2030年に全世界のGDPに対し15.7兆ドル(約2100兆円)を生み出す可能性があるというプライスウォーターハウスクーパースによる予測を引用し、へーフェルと同様に強気の見方を示している。
このレポートをまとめたチームの構成メンバーは、ヨーロッパ・中東・アフリカ株式調査(Europe-Middle East-Africa Equity Research)のトップであるエリック・ロペス(Eric Lopez)、株式ストラテジストのハイム・イスラエル(Haim Israel)、フェリックス・トラン(Felix Tran)、マーティン・ブリグス(Martyn Briggs )らだ。
彼らは技術革新から利益を得る可能性がある20の株式を挙げている。その中の最有力候補は、検索エンジンやチャットボットプロジェクトを持つアルファベット(Alphabet)やマイクロソフト(Microsoft)といった巨大企業だ。また、検索とデータに関するアルファベットとのライセンス契約から利益を得続け、新たな資金調達も視野に入れているアップル(Apple)、大規模言語モデルLLaMAを持つメタ(Meta)も含まれている。
他の有力候補としては「AIの筋肉」と言われるエヌビディア(Nvidia)やTSMC等のチップメーカー、そして知名度はそれほど高くないものの、日本企業のHOYA、AIチップ・テクノロジーズ(AlChip Technologies)、アドバンテスト(Advantest)、奇安信科技(Qi An Xin Technology)なども含まれている。