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投資信託を「納得」して買うために、知っておきたい8つの用語

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用語を抑えておけば、おぼろげながらも全体感は見えてくる。

siro46/Shutterstock

新NISAが発表されて大きな話題となるなか、投資を始める人も増えている。投資初心者は「何はともあれ投資信託から」というのは定石だ。

投資信託は、値動きが激しくなりがちな個別銘柄と比べてずっと安定しているし、初めから分散されているためリスクも低い。そのため、1度購入したら基本は「ほったらかし」にしておくと良いとされている。

とはいえ、最初に購入するときはある程度しっかり知識を入れておいた方がいい。納得感のないまま投資してしまうと、5年後、10年後に後悔することになる場合もあるからだ。

本記事では、投資信託を選ぶ上で納得感を得るための指標となる8つの基礎用語を解説する。新NISAを機に投資信託デビューをする方は、参考にしてほしい。

1. 純資産総額:商品の人気度を示す指標

投資信託は下図のような仕組みとなっている。私たち投資家は販売会社を通じて投資信託を購入できるが、投資家から集めた資金をファンドとして管理しているのが信託銀行だ。

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アイコン:yoyoyai/Shutterstock、作図:Business Insider Japan編集部

信託銀行は運用会社の指図を受けて株や債券などに投資し、利益を得ようとする。得られた利益はファンドにプールされるか、分配金として投資家に戻される。この仕組みにおいてファンドに集められた資金の総額が「純資産総額」である。

出資する投資家が増える(オープン型)か、ファンドで運用される金融商品の価値が上昇することで純資産の総額は増える。反対に運用のパフォーマンスが低下するか、分配金が支払われることで純資産総額は減少してしまう。

つまり、その額が大きいほど、多くの投資資金が集まっているということだ。純資産総額は、商品の人気度を表す指標と言える。

2. 基準価額:1口あたりの価格

基準価額」は、個別株における「株価」に相当するもので、投資家が投資信託を購入する際に支払う1口当たりの価格を表す。これは純資産/総口数で算出される。

個別株の株価は投資家の期待や一時的なニュースで上下することもある。だが、投資信託では購入者が増えても純資産が増えるだけで基準価額には影響しない。

基準価額は、株価と違ってパフォーマンスを明確に反映しているといえよう。

3. 信託報酬:運用を担う3社の取り分

投資信託を担う3社、販売会社・信託銀行・運用会社の取り分となるのが「信託報酬」だ。信託報酬は純資産に対して、おおむね年率0.5~2.5%の範囲で設定されており、パフォーマンスに関係なく差し引かれる。投資信託を所有しているだけでも差し引かれるため、投資家にとってはやや厄介な存在だ。長期投資で選ぶならできるだけ報酬が低い商品を選んでおく方がベターだ。

ちなみに投資信託には、TOPIXやS&P500などのベンチマークとの連動を目指す「インデックス型」と、それを上回る利益を目指す「アクティブ型」がある。前者は人的リソースがあまりかからない一方、後者は運用会社のファンドマネージャーたちが積極的に市場調査や企業分析を実施する必要がある。こうした手間賃が加算されるため信託報酬は、アクティブ型の方が高めになりがちだ。

なお両者のシェアを見るとアクティブ型の方が多いものの、2023年の年明け以降、国内ではインデックス型の方が資金流入額は上回っているようである 。

4. 利回り:過去1年間の実績

利回り」は、その投資信託から得られる1年間の利益を表し、投資元本に対する利益率で算出される。分配金を含む過去1年間の実績を表したものだ。

利回り=(現在の基準価額-購入時の基準価額+分配金)/購入時の基準価額×100

過去の実績は将来の収入を保証するものではないが、長期投資用の商品を選ぶなら安定した利回りを出せているか確認しておきたいところだ。過去5年間の利回りを5で割って年平均利回りを出すだけでなく、年度ごとの利回りが安定しているかも見ておくとよいだろう。

5. 騰落率:基準価額の変動を示す指標

騰落率」は、単に基準価額がどの程度上下したかを表す指標だ。分配金については考慮されない。3カ月、6カ月、1年間など、各期間あたりの騰落率で表示されることが多く、短期での実績を見たり、商品のパフォーマンスを見たりしたい時に参考となる。

利回りが高くても分配金の依存度が高い場合は、純資産を切り崩してしまっている可能性がある。だが、騰落率がプラスの場合は良いパフォーマンスを残せているといえよう。

また、価格変動のボラティリティを把握するにも適した指標といえる。

6. シャープレシオ:運用効率を計る指標

シャープレシオ」は、無リスク資産に対して対象商品がどの程度利益を出しているかを表す指標だ。次の式で算出される。やや難しい式だが、証券会社のサイトに記載されているため自分で計算する必要はない。

シャープレシオ=(商品の利益率-無リスク資産の利益率)/標準偏差

無リスク資産の利益率には無担保コールレートが使われることが一般的だ。自分で計算する場合は預金の利率でも良いだろう。標準偏差は対象商品の利益率がどの程度大きく上下したかを表し、“リスク”を意味する。1年前と現在の基準価額が同じ2つの商品があった場合、値動きが激しい方が標準偏差は大きな値となる。

つまりシャープレシオは「パフォーマンスの良さ」を「リスク」で割った値であり、どれだけ少ないリスクで利益を出せたかを表す。

シャープレシオの数値が1以上の商品を選ぶべきという定説が聞かれるが、個別の値自体は重要ではない。シャープレシオは似たような商品を選ぶ際に指標となる数字であり、例えば新興国市場を対象とした2種類の投資信託がある場合、シャープレシオの高い方を選ぶと良いだろう。

7. 業種別・国別の資産構成:具体的な内容その1

上記の6項目で解説したのは、投資信託の価値や実績を表した数字であり、いわゆる“テクニカル”分析で必要となる部分だ。株式を対象とした投資信託を選ぶ際は、実際にどの国や業種で運用されているかといった、いわゆる”ファンダメンタルズ”の部分も見てほしい。こうした情報はリスクが高そうな国を避けたい場合や、将来性のある業種を選びたい場合に参考となるはずだ。

業種・国別の資産構成」は運用会社が発行する「交付目論見書」や「請求目論見書」もしくは証券会社の商品紹介ページに記載されている。例えば「ニッセイ日本株ファンド」の場合、業種別では電気機器(15.6%)がトップで次に情報・通信業(7.6%)が続く。

筆者は新NISA制度開始後に新たな投資信託を購入する予定だが、個人的に将来性が薄いと考えている銀行業・石油関連の比率が高い商品は避けるつもりだ。

8. 組入銘柄:具体的な内容その2

株式を対象とした投資信託の中には、分散されているとはいえ、1銘柄の構成比率が15%以上を占める商品もある。この場合は、個別株の動きに大きく影響されてしまう可能性も高い。

また、EVなど先端分野をうたっている投資信託であっても、既存メーカーが多く組み込まれている商品もある。商品の実態を把握するためにも「組入銘柄」の情報はかならず確認しておきたい。

組入銘柄も「交付目論見書」や「請求目論見書」の他、証券会社のサイトに記載されている。前記の「ニッセイ日本株ファンド」の場合、上から順にトヨタ自動車(3.1%)、キーエンス(2.8%)、信越化学工業(2.1%)と続き、国内の大企業銘柄によく分散されていることが分かる。

筆者は新興国の製造業に期待して、とある新興国株式の投資信託を購入しようと思ったが、上位を占めるのが銀行やIT企業であったため購入をやめたことがある。

まとめ

以上、投資信託を選ぶ場合に確認しておくべき8つの基礎用語を解説した。前半の6項目はテクニカル分析、最後の2項目はファンダメンタルズ分析の際に参考にしてほしい。

もちろん見るべきポイントは他にもあるが、ひとまずこの8項目を抑えておけば選ぶ際に迷うことはないだろう。

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