米ニューヨークのセールスフォース(Salesforce)オフィス前。2022会計年度の好業績を発表したばかりの同社で、従業員から強い不満の声が聞かれる。
REUTERS/Brendan McDermid
Insiderが独自に確認したメールやメッセージによれば、セールスフォース(Salesforce)が年次ボーナスの30%削減を決定したことについて、利幅が大幅改善、株価も大幅上昇している現状に合致していないと批判の声が上がっている。
セールスフォースは3月1日に2022会計年度通期の業績を発表。調整後営業利益率が「過去最高」の22.5%を記録し、さらに来期は27%を目指すことを明らかにした。
ところがその直後の3月3日、そうした収益性の改善もおよばず、2022会計年度については社内で事前設定した業績目標に到達しなかったとして、「慰労」の意味を含む年次ボーナスを30%削減すると、同社経営陣は従業員向けに通知した。
エイミー・ウィーバー最高財務責任者(CFO)とブレント・ハイダー最高人事責任者(CPO)は、Insiderが確認した従業員向けメールにこう記している。
「社内目標に到達しなかったことは残念ですが、グループ一丸となって(英語表現は「as One Salesforce」)より素晴らしい生産性・業績・社内改革を実現し、2024会計年度を迎えられるのを楽しみにしています」
セールスフォースの年次ボーナスは、業績への貢献に対する従業員の「やる気を引き出し、慰労する」インセンティブとしての位置づけで、以前はハワイ語で「助ける」を意味する「コクア」ボーナスと呼ばれていた。
米経済誌『フォーチュン(Fortune)』は3月3日時点でこのボーナス削減を報じている。
こうした経営陣の判断に対し、一部の従業員たちは社内のスラック(Slack)チャンネルで批判の声を上げている。
Insiderが確認した同チャンネルのスクリーンショットでは、ある従業員がこう率直な感覚を吐露する。
「どれだけやったらその目標を達成できるのか、理解に苦しむ。(直近の会計年度で)過去最高の利益、営業利益率を叩き出し、株価も急上昇。それでも『超激務に耐えてくれてありがとうございます、けれどもまだ十分じゃないんです、皆さんのボーナスを満額出すには原資が足りないんです』って言うのか?」
同じような文脈だが、別の従業員からはこんな投稿もあった。
「過去最高の利益率と3割減のボーナス。つらすぎる」
セールスフォースの置かれた現状
セールスフォースは同社株式を大量取得した複数のアクティビスト投資家、いわゆる「物言う株主」から営業利益率を引き上げるよう圧力を受けている。
Insiderが独自入手したセールスフォースの事業計画草案のコピーには、売上高成長率の向上とコスト削減を組み合わせることで「いますぐ」「30%台以上に」調整後営業利益率を引き上げる計画を達成する意向が記されていた。
セールスフォースが2022年10月開催の投資家サミット直前に示した2023会計年度の売上高成長率見通しは17%、調整後営業利益率見通しは20.4%だった。
また、同社は2023年1月時点で、従業員総数の10%(約7000人)のレイオフ(一次解雇)および保有する企業不動産の売却を含むリストラ計画を発表。その前の2022年11月にも営業部門を中心に数百人の従業員の削減を実施している。
件(くだん)の社内スラックチャンネルでは、「物言う株主」からの圧力とマーク・ベニオフ創業者CEOの対応についても、従業員からの投稿を確認できる。
「アクティビスト投資家に喧嘩を売ろうと思えばできないことはない。でもその場合、株主からの委任状争奪戦になるのは必至で、向こうは機関投資家(とその票)を味方につけて、最後には我々自身の力では復元不可能なほどの無茶な変化を突きつけてくるだろうね。
それが嫌だとすると、向こうがこちらを蹴飛ばすのも無理なくらい、キツく熱烈なハグをしてやる方法もある(訳注:要求を徹底的に受け入れることを指すと思われる)だろうけど……マーク(・ベニオフCEO)はどっちに決めたのかな?」
セールスフォースにコメントを求めたが、記事公開までに返答は得られなかった。