グーグル労組の20代女性が涙の抗議。退職勧奨は「育休、病気休業者がターゲットの可能性」

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グーグル合同本社での抗議活動に参加した、グーグルジャパンユニオンの組合員。

撮影:横山耕太郎

グーグルの日本支部である「グーグル合同会社」の社員らが結成した労働組合が2023年3月8日、渋谷のグーグル合同会社を訪問し、一部の社員に送られている退職の条件をまとめた「退職パッケージ」について抗議した。

労働組合は解雇についてなどの説明を求める団体交渉を申し入れており、組合によると、グーグル側は3月17日に団体交渉に応じる予定だという。

社長宛ての抗議文手渡す

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グーグル合同会社のエントランス前で抗議活動をするグーグルジャパンユニオンの組合員ら。

撮影:横山耕太郎

3月8日午前9時頃、グーグル合同会社のオフィスが入居する高層ビル「渋谷ストリーム」前の交差点に、グーグルジャパンユニオンに加入するグーグル社員たちが続々と集結した。

集まった約15人の組合員らは「For Google, not GOOG(資本家のためではなくグーグルのために)※」と書かれた横断幕や、ユニオンの本部がある「東京管理職ユニオン」の上り旗を持ち、ビル5階のエントラスを訪問した。

エントランスでは、東京管理職ユニオンの神部紅書記長が、一方的に退職パッケージを送っていることに対する抗議文を、担当者に手渡した。

※GOOGは、Googleの親会社・アルファベット株のうち、議決権のない株のこと。NASDAQのティッカーシンボルの文字列からとっている。

育休・産休対象者に退職パッケージ?

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グーグルのTシャツを着て参加したダンさん(中央)は、「今回のやり方は間違っているが、グーグルという会社が好きなんです」と話す。

撮影:横山耕太郎

東京管理職ユニオンによると、現在はグーグル合同会社と関連会社・グーグルクラウドジャパンの社員、計50人以上が参加している。

労働組合では、人員削減の合理性や、解雇回避義務などについて説明することを求める団体交渉を求めている。

東京管理職ユニオンによると、グーグル側の弁護士からは、

  • 3月17日に団体交渉に応じる
  • 組合員に対しては、個別の面談ではなく、労働組合を通じて交渉する

などを確認したという。

神部書記長は、次のように話す。

「組合員については退職パッケージによる退職勧奨は行わないという言質をとっている。会社を辞めたくない場合は、ユニオン加入することが有効な手段になっている」

「私は戦ったと胸を張って言いたい」

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グーグルで働くキャシーさんは、顔を出して組合に参加することに抵抗があったと話す。

撮影:横山耕太郎

アメリカ国籍の組合員キャシーさん(29)は「もし解雇となれば、転職が簡単でないケースもたくさんある。お金で簡単に解雇できるとは思って欲しくない」と話す。

グーグルジャパンユニオンでは、退職パッケージが送られた社員の把握を進めており、「病気のための休業中、産休・育休の従業員がターゲットになっている可能性がある」と分析している。

実際にキャシーさんの同僚にも退職パッケージが届いており、「出産したばかりの育休中で、転職がしにくい」という相談もあったという。

キャシーさんはアメリカの大学の在学中に、日本留学を経験。大学卒業後に来日し、日系企業で2年間働いたあと、グーグルに転職した。グーグル勤務は5年目だという。

グーグルには仕事時間の20%を、担当業務以外に使っていいという「20%ルール」があり、キャシーさんはその時間を利用して、AIとマシンラーニングを使って、視覚障害者を支援する活動などにも取り組んできた。

「もともと障害を持った社員も多く働いているのがグーグルという会社です。障害がある社員は、私よりももっと転職がしにくい可能性もあります。

今回のリストラで私よりも苦しむ人がいるなら、私がいま声を上げるしかないと思いました

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グーグル合同会社が入る「渋谷ストリーム」の最上部には、グーグルの看板が掲げられている。

撮影:横山耕太郎

ただ、メディアに顔を出し、会社側に意見を伝えることには抵抗もあったという。

正直怖かったし、顔を出して記者会見をした日は、不安で朝まで泣いていました。

将来どうなるのか? 別の仕事がみつけられるのか? そう考えると考えると、この1週間は本当に大きなストレスでした」

それでも労働組合に加わったのは、「将来、私の子供に対しても『私は戦った』と胸を張って言いたいから」と話す。

「今、グーグルのオフィスでは、次は私かもしれないという不安を多くの社員が感じており、退職パッケージが届いた仲間からは『どうやって家族を支えていけばいいのか』という相談もあります。

会社がきちんと説明しないのは間違っています。将来の不安は消えませんが、私たちには労働組合を作る権利がある。

私は労働組合を差別するような会社では、働きたくはありません」

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