日立ソリューションズが、フェムテック分野に初参入する。
生理や妊娠など女性特有の健康課題について、従業員が専門家にオンライン相談できる企業向けのクラウドサービス「リシテア/女性活躍支援サービス」を3月22日から提供する。
3月9日、『人事労務管理システム「リシテア」フェムテック 新サービス発表会』を開き、フェムテック事業の概要を披露した。日立ソリューションズは、女性従業員が増加傾向にある業界の中堅規模以上の企業を主なターゲットに、2025年までに5億円の年間売り上げを目指している。
「リシテア/女性活躍支援サービス」の画面イメージ。
出典:日立ソリューションズ
職場で困った経験のある女性は「5割」という実態
経済産業省の「働く女性の健康推進に関する実態調査」によると、女性特有の健康課題などにより、職場で困った経験がある女性従業員の割合は5割に上る。
仕事の忙しさや、「病院に行くほどでもない」程度であることなどを理由に通院をためらう人も多いとされる中、新サービスではこうした女性従業員が気軽に悩みを相談できる環境を提供する。
新サービスを紹介する日立ソリューションズの平田文香さん。
写真提供:日立ソリューションズ
「(後述する)症状が月経前症候群であると気づくまでにも数年かかりました。もっと早く病院に行っていたら、もっと早く専門知識を持つ人と話していたら。辛い思いをする期間を短くできたのでは、と思っています」
発表会に登壇した同社スマートライフソリューション事業部の平田文香さんは、自身も長年、女性特有の健康課題に気づかないまま悩まされてきた実体験を話し、「女性の活躍推進のサポートに確実につながる」と強調した。
オンライン相談の様子。この画面で相談されていること自体が平田さんの悩みだったという。
出典:日立ソリューションズ
同サービスはオンライン相談事業も手掛ける名古屋市の医療法人「葵鐘会」(きしょうかい)と提携。葵鐘会の看護師や助産師が女性従業員からの相談に応じる。
従業員と医療従事者のやり取りを再現した映像では、従業員が「生理前になると涙が出てしまう。会社に行くのが憂鬱になる」と悩みを相談。看護師が「月経前症候群(PMS)の可能性があります」と答え、低用量ピルの服用などを改善策として紹介した。「朝食を抜いたり、甘いものを取りすぎていたりするとイライラしやすく良くない」とのアドバイスも示した。
葵鐘会は「婦人科に行くまででもないかなという段階で相談でき、忙しい女性にとってプラス。我々産婦人科にとっても、受診への敷居を下げられる意味で意義がある」と話す。
相談者のプライバシーの問題も気になるところだ。日立ソリューションズによると、導入企業が把握できる情報は相談者と相談回数のみ。相談内容は葵鐘会と従業員の間だけに留めるという。
他サービスとの連携で導入効果が見える
オンラインで専門家に相談できるサービスは他にもあるが、他社との違いは「リシテア」の各種サービスとの連携によって導入効果の測定ができる点だとする。日立ソリューションズは企業向けに、勤怠や給与、工数管理などの各サービスを「リシテア」ブランド名で提供している。将来的には男性特有の健康課題や介護に関連する相談への対応も検討する。
女性の健康を経営課題ととらえる企業は約3割
女性特有の健康課題の解決は、健康経営に力を入れる企業を中心に関心が高まっている。
日立ソリューションズでは、不妊治療のための休暇など妊娠、出産、育児への支援に取り組む。日本航空(JAL)は婦人科検診費用の全額補助やフェムテックの活用に力を入れている。
一方、企業向けフェムテックプラットフォームを提供するnanoniが450社を対象に実施した「フェムテック利用動向調査」によると、「月経や妊活、更年期などライフイベントに起因した女性の健康課題は経営・人事上の課題に挙がっている」と回答した企業は36.6%にとどまった。健康課題を認識している企業のうち、「具体的な検討に至らない」とした割合は22.4%に上り、理由は「何から手を付ければいいか全体像が描けていない」が最多の25.5%を占める。
日立ソリューションズは、まずは既に「リシテア」のサービスを利用している企業に向けて「リシテア/女性活躍支援サービス」を案内するとしている。