暗号資産交換業のメルコインは、メルカリ内の新機能を発表した。
撮影:小林優多郎
メルカリは3月9日、ビットコインの売買機能をメルカリアプリ内に実装した。最新版のアプリに対し、今後数週間にかけて展開される見込み。
同機能は、2021年4月に設立したメルカリの暗号資産交換業の認可を取得した子会社・メルコインによるもの。
メルコインは既にプロ野球の「パ・リーグ」と共同でNFT事業を展開しているが、メルカリ内で直接暗号資産(仮想通貨)を扱うようになるのは今回が初めてとなる。
メルカリの売上金・ポイントなどがビットコインになる
メルカリアプリ内のマイページに「ビットコイン」の欄が追加される。
撮影:小林優多郎
今回のビットコイン売買機能は非常にシンプルなものだ。現時点でできることは以下の通り。
- メルカリでの売上金・チャージ残高・ポイントで、ビットコインを1円単位で購入できる。
- メルカリ内で購入したビットコインを残高に戻せる(売却できる)。
ユーザーメリットとしては、手軽にビットコインを入手でき、場合によっては評価益を得られる点にある。
メルコインは、決済サービスのメルペイ等で実施してる本人確認等をしていれば、メルカリアプリから「最短30秒」で取引を開始できる「敷居の低さ」を強調している。
なお、取引時には1%のスプレッドが発生する。また、メルコインのヘルプページによると、一般的な仮想通貨取引所と同じく、保有だけでは税金は発生しないが、「売却して利益が生じた場合は、原則として、雑所得に区分され所得税の確定申告が必要」と案内。損益の計算にはアプリ内でダウンロードできる「取引報告書」で確認する必要がある。
「初心者向け」ゆえに使える機能は限定的
メルカリ内にあるビットコインの詳細画面。BTCの表記などは見当たらない。
撮影:小林優多郎
ターゲットが「仮想通貨に馴染みがない人」というのは、今回の機能に色濃く表れている。
例えば、他のウォレットでは所有しているビットコインの量は「0.00033135BTC」のように表示されるが、メルカリの場合は日本円表記(評価額)がデフォルトになっている。
ただし、以下のような制約も存在する。
- 取り扱い仮想通貨は現時点ではビットコイン(BTC)のみ。
- 購入したBTCの出庫(別のウォレットへの送付)、入庫(その逆)はできない。
- メルカリユーザー同士、メルカリ内の決済でも直接BTCは扱えない(送金も決済も1度、メルペイの残高に戻す必要がある)。
- スマホアプリ版のみ対応で、Web版での操作には非対応。
メルコイン CPOの中村奎太氏。
撮影:小林優多郎
同日の発表会で、メルコイン CPO(Chief Product Officer)の中村奎太氏は「まずはより多くの人に触れてもらいたいというところからスタートする」と、比較的“強め”の仕様になっている意図を説明した。
メルコインとしては、今後のユーザーの動向などを見つつ、他の仮想通貨の取り扱いや入出庫機能、決済機能などの開発を検討し、展開していきたい考えだ。
ユーザーメリットをどう生み出すか
メルコイン取締役、メルカリ執行役員VPの山本真人氏。
撮影:小林優多郎
同日に登壇したメルコイン取締役で、メルカリ執行役員VPでもある山本真人氏は、仮想通貨などのブロックチェーン技術全般に対し「多くの可能性を秘めている」「(他国に比べて、日本では仮想通貨の認知が低いことは)テクノロジーの可能性を信じているメルカリにとっても大きな課題」と述べた。
そんな状況下で、「まずは仮想通貨に触れてもらう」というタッチポイントを作る戦略は、理にかなっているとは思える。
ただ、現状の機能では「仮想通貨に投機する」という目的しか生み出せておらず、ユーザーが積極的にメルカリ内で機能を有効化する理由は乏しいとも言える。
山本氏は具体的なユーザー獲得の目標数や時期などを「非開示」としたが、「(獲得のための)キャンペーン実施も見据えている」「フリマに加えて(暗号資産交換業を)補完的な柱として並び育てていきたい」と、意気込みを語った。